映画「ナバロンの要塞」と主要国が総力を挙げて取り組むコロナ大不況 2020・3・21 (第1004回)
映画「ナバロンの要塞」と主要国が総力を挙げて取り組むコロナ大不況 2020・3・21 (第1004回)
冒険映画のランキングを付けたらナンバーワンの傑作。スリルと娯楽性が同居したアリステア・マクリーンの原作を、リー・J・トンプスン監督がグレゴリー・ペック始めオールスターで映画化した。
第二次大戦中の秘話。エーゲ海の島にドイツ軍の要塞があり、巨大な2門の大砲が設置されている。この破壊のため派遣される決死隊6人の物語だ。
この作戦の立案者の将軍が言う。
「戦争には奇跡がつきものだ。狂気の中では人間は異常な能力を示すことがある。平和な時にそれを発揮できないのは残念だ」。
現在の世界はコロナ肺炎への全面戦争と言っていいだろう。信用不安と不況突入ヘ、かなり対策は打たれている。しかし問題はこの病気の伝播範囲と期間なので、一般には不安感、恐怖感の方が強くなってしまう。
ニューヨーク・タイムズ(3月13日)は、米疾病対策センター(CDC)による感染拡大の予測を発表。「最悪のケース」として、米国で1億6000万~2億1400万人が感染、うち20~170万人が死亡。しかも入院を必要とする感染者は240万~2100万人と予測。病床は92万5000床しかなく、地域社会で散発的に感染が発生する場合、1年以上こうした状況が続く、と予測した。
世界ではどうだろうか。ハーバード大学公衆衛生大学院の研究チームが3月4日発表した報告書によると世界人口の2割から6割、14億から43億人が感染する可能性があると言っている。
株式市場では、マスク、抗菌製品、検査キットなどの供給不足で関連企業群を物色する動きが活発だ。しかしマスク不足は明白だが、WHOが効果については解疑的な指摘したこともあり、メーカーは(一部を除いて)増産にはしり込みしているのが実情といわれる。前回の新型インフルエンザ流行時に増産したが、その後大量返品で苦しんだ体験からだろう。
マスクよりも開発の時間や経費のかかる治療薬の方がもっと大変に違いない。ほかの病気の治療薬が転用されるケースが多くなる。また根本的な治療薬であるワクチンはなお販売に至る前の手続きなど、手間も時間もかかる。やはり完全に落ち着くには、1年以上、と見るのが常識だろう。
なぜこんな分かり切ったくどくどと書いているか。それは新型ウィルスの感染が当初よりも、長期化し、大型化することが、次第に「見えて」きたことによる。全力を挙げての対策が必要だ。
私の主張をまとめてみると、次の通りだ。
- ウイルスの完全封じ込めは1,2年かかる公算が、大きい。
- 日本でも世界でもコロナ不況により企業と家計の収入が激減しており、恐らく瞬間風速でGDPの成長率は大幅なダウンが必至。業界によっては数10%も売り上げが落ちている。大不況だ。
- 日本の場合、補正予算を使った通常の景気対策と現金給付で何とかしようとしている。しかしこれに加えて実質無利子、無担保融資を数十兆円規模で準備し、早急に企業や家計に支援するべきである。
- 日銀はイールド・カーブコントロール政策の採用で、資金供給が年80兆円ベースから、半分になっている。これを早急に原状復帰させないと、企業は内部留保を取り崩して、金融環境がタイトになり「悪い金利上昇」が発生する懸念がある。
- 財源が常に問題になる。財務省の悪宣伝のためである。IMFが2018年10月に発表した報告書「財政モニター」によると、公的バランスに関する指標では、日本はわずかながらマイナス。つまり「先進国中最大の借金額」というのはウソ。
- 真の解決策は、建設(投資)国債の超長期国債を発行する。日銀と政府とのアコードが必要だが、日銀が全額引き受ける。
以上が固まれば、我が国はコロナ肺炎に断固とした財政政策を示したとみられる。特に近年の大型台風への対策が不十分だったことは、著しく外国人機関投資家の対日投資の足を引っ張った。
世界がデフレに突入しかけ出ている折も折。日本が、少子化、老齢化などの先進国として、財源を確保することはよき先例となるだろう。米国も超長期債発行を検討していると聞く。チャンスではないか。
戦前の高橋財政の例から不安を言う向きもあろう。しかし、戦前の軍部のような圧力団体は、我が国では現在どこにも存在しない。従って、私の主張は3年かせいぜい5年の期間限定の措置にすれば良い。国土強靭化計画に合わせれば、名目として十分だ。
映画のセリフから。主役のマロリー大尉は目的が見事に達成された時に言う。「実はこんなうまく行くとは思っていなかった」。断行するには勇気が必要。勇断を望みたい。