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2020年4月 6日 (月)

映画「ベニスに死す」と我が国のコロナ不況対策の評価と、政府内のピークアウト予想 2020・4・5 (第1006回)

映画「ベニスに死す」と我が国のコロナ不況対策の評価と、政府内のピークアウト予想 2020・4・5 (第1006回)

 

ドイツのノーベル賞作家トーマス・マンが1912年発表した中編を、イタリアの巨匠ルキノ・ビスコンティが1971年に映画化した。主演は英国人ダーク・ボガード。名作の評価が高く。ベンジャミン・ブリテンが1973年にオペラ化している。

 

映画のスタートにグスタフ・マーラーの交響曲第5番の第四楽章アダージェットをビスコンティは使った。マーラー人気が巻き起こったことでも有名な映画だ。

 

主人公は小説では作家だが、映画では作曲家となっている。

 

ストーリーは単純と言えば単純。静養のためベニスを訪れた老作曲家アッシェンバッハが、ポーランド貴族の美少年に恋する。老作曲家は理想の美を見出し、後を付け回すようになる。

 

 折も折、ベニスでコレラが迫っていて、滞在客たちが逃げ出す。しかし主人公は美少年から離れたくなく、この地から離れられない。少年の一家がベニスを離れるその日、コレラで主人公は死ぬ。

 

美少年のためにベニスを離れずに死んだ主人公のように、今回のコロナ不況対策で安倍政権がとろうとしている措置は、財務省の重石から離れられない、と見られている。外国人には評判が悪い。

 

  報道によると、経済対策は50兆円を超える。しかしGDPに影響を与える「真水」ベースでは20兆円を少しこえる程度で、GDPの4%。米国の10%強と比較にならない。

 

 「真水」について、高橋洋一さんの解説を引用しよう。

 

 「経済対策には、大別すれば➀公共事業②減税、給付金③融資、保証がある。「真水」とは➀のうち用地買収量を除いた部分(2割程度)②は全額③は含めず、➀と②は全額③は含めず、➀と②を足した部分(つまりGDPに直接影響する部分)である。

 

 この少なさについては米国からクレームがついているらしい。

 

 恐らく同規模のコロナ不況第二次対策を打ち出すに違いないが、やはり後手後手。手遅れになる公算大。その分不況の打撃が大きくなる。

 

 マイナス成長、失業、倒産、そして株式市場では巨大企業の赤字転落。これが恐らく7月に発生する、これが外人機関投資家の運用担当者の主流の見方だ。

 

 「政府(アベ)に加えて日銀(クロダ)もダメ」というファンドマネジャーは多い。マイナス金利の深堀りは、民間金融機関特に地銀の収益力に致命的な打撃を与える。何もできないうちに、米FRB、欧ECB、英イングランド銀行に後れを取れば、円高、株安が加速する。そこで「円買い、日本株売り」を繰り返しているのが、外人、特にヘッジファンドだ。

 

 ただし、これはあくまでも外国人、特にヘッジファンドの見方。私は8割は肯定するが、少々見方は違う。理由は次の通り。

 

 第一に、ある情報通から入手した政権内部の今回のコロナ肺炎についての情報だ。ピークアウト(感染者数の増加傾向の後の天井形成)の時期を4月末から5月はじめと予想。  

 (これをウラ読みすると、4月いっぱいは連日の感染者急増で、阿鼻叫喚する日が続くということ。恐らく隠れ感染者の検出で何万人かになる二ではないか)

 

 第二はG7の折に、対コロナウィルス・ワクチンが、超法規的措置で、極めて速く投与されることが決まったこと。これは大材料だ

 

 最近TVで「1年半」と予想している医師がいた。しかし中国が協力するので、極めて多数の臨床治療(つまり誤解を恐れず言えば人体実験)により十分な安全性が保障される。早期に世界一斉にワクチン供与が開始されるのが、早ければ89月と見込めること。これでみとうしが付く。

 

 第三に大不況の波が信用不安につながる。この不安が、ありとあらゆる投資対象まで価格の一斉急落を巻き起こした。しかしまずトランプ大統領の仲介で「サウジがロシアとの対立による減産拒否を止める。これで米シェール企業の連鎖倒産が回避された。もちろん原油価格も反騰した(実は、これも大きい材料だ)。

 

 結論。ここ34週間、大騒ぎになりそうな破滅論には、絶対に私は同意しない。誰もがこの騒ぎを見ると「底が見えない」「長期化する」という。しかし、TVが一斉に特集し、日経新聞がトップで絶望的な見出しを付けたら、そこが底だ。

 

安倍首相に申し上げたい。

今が超長期の建設国債を発行し、日銀が引き受ける。これしかこの難局を日本が脱出できる方法はありません。万難を排して勇断していただきたい。

 

 映画のセリフから。主人公が言う。「私の父の部屋には砂時計があった。砂は初めは少しも動かない。しかし時間が経過するとじわじわと動き始め、いつの間にか移動が済んでいる。」いいセリフだ、と私は思う。読者の皆様、どう思いますか?

 

2020年3月30日 (月)

映画「史上最大の作戦」と不況対策によるトランプ人気回復、それに日経平均暴落時でも株高になった我が国の銘柄12 2020・3・29(第1005回)

映画「史上最大の作戦」と不況対策によるトランプ人気回復、それに日経平均暴落時でも株高になった我が国の銘柄12 2020・3・29(第1005回)

 ご存知の戦争映画の代表作。当時の製作費43億円は普通の作品なら7,8本作れる巨費。エキストラの兵隊15万人、使用された地雷4万個、現実に使われた地雷40万個の十分の一。ノルマンディー上院作戦を描くには、これほどまでの物量投入が必要だったのだろう。

 

 原題は「いちばん長い日」。これは独の名将ロンメル元帥の名セリフだ。

 

 「上陸作戦の勝敗は24時間で決まる。わが軍にとっても連合軍にとっても、いちばん長い日になるだろう。」この名セリフを我が国の昭和20年8月15日の玉音放送に絡んでまとめたのが半藤一利さんの「日本のいちばん長い日」。2回も映画化されたので、ご存じの方も多いに違いない。

 

 歴史の示す通り、この作戦は成功した。しかし➀連合軍が上陸したノルマンディーをドイツ側は予想していなかった②切り札になる機甲師団はヒトラーがクスリを飲んで熟睡していたので誰も起こせず、投入出来なかった、などの失策であったことも、この映画は指摘している。そこいらが単なる戦争映画と一味、違うところだ。

 

 今回のコロナ・ショック対策を観ていて、この物量作戦を私は思い出した。

 

 3月26日米国上下両院が可決、成立したコロナウィルスに対処するための法案は2兆ドルとGDPの10%弱。

 

 2008年の金融危機後の対策が7000億ドル、2009年のオバマ政権時は8000億ドル。二つ合わせた対策費より多い。

 

 単に予算の大きさだけではない。3月23日、FRBは実質的に無制限に米国国債を買うことを表明。同日パウエル議長は「我々の弾丸はまだ十分にある」と述べた。

 

 それでも不十分、という声さえあるのは、今回のコロナ不況の深刻さを物語る。セントルイス連銀のプラード総裁によると「4~6月に失われる2兆5000億ドルの所得を穴埋めする強力な財政対策が必要」とした。これでもまだ、追加対策が必要とみていることになる。

 

 株式市場の方は、とりあえず、この対策を好感。下値からの戻りが20%を超え「弱気相場から過去最短で抜け出した。(WSJ3月27日)」。

 

 この日に発表された失業保険申請件数は328万件と過去最大の5倍近く。それでも株式市場は対策を好感した。

 

 これでトランプ大統領が11月の大統領選に点を稼いだのは、言うまでもない。

 

 最新のギャラップ調査によると、トランプ支持は49%、コロナウィルス対応に関しての支持は60%、調査時点では株価反発はまだ大したことがなく、メルトダウン状態にあった。それでもこの結果だ。米国エスタブリッシュメントによるバイデン候補支持は、一歩後退の感は否めない。

 

 アレレと思ったのは、リアル・クリア・ポリティクスによる調査。バイデン支持を行う中道派へ意見を持つ有権者。バイデン支持を行う中道派へ反発する有権者は実に45%、民主党支持でも36%と高い。これにトランプ支持固定層を含めると、米有権者の過半が再選支持となる。少なくともコロナ危機をトランプ氏は巧みに利用したことになる。もちろん、エスタブリッシュメントへの反感だけでは、投票へは結び付かないが。

 

 では、我が国はどうだろうか。3月28日、安倍首相は記者会見で「かつてない規模の経済対策を策定」すると述べた。

 

 従って現時点ではお手並み拝見、ということになるのだが、「目玉」となる個人、中小企業への給付金でも、リーマン当時のやり方を参考にすると、まあだめだ。

 

現金給付は、早くて5月末。地方自治体から申請書を国民に送付し、それに応じた人の本人確認を地方自治体が行い、銀行口座に振り込む。なんて煩雑な方法だろう。また、先行きについて、国民が自信をもてるような内容がない。

 

 やはり私が先週主張した通り、超長期国債(60年もの、建設又は投資国債)の日銀引き受けが必要だ。

 

 安倍首相はG7の電話会議で「思い切った経済対策」を主張した。財務官僚のケチおやじどもに付き合って、この国を大不況に導くことだけは、お止め頂きたい。

 

 株式市場の動向で、私を力づけた事実がある。あの大幅下落の3月中旬でも上昇した銘柄が12もあったことだ。以下銘柄を列記する。

 

 NTTドコモ(9437)、菱洋エレクトロ(8268)、アルフレッサホールデイング(2784)、クリエイトSDホールディングス(3148)、クスリのアオキホールデイングス(3549)、アイカ工業(4206)、あすか製薬(4514)、中外製薬(4519)、日本ペイントホールディングス84612)、ライオン(4912)、小林製薬(4967)、丸和運送機関(9090)。

 

 映画のセリフから。ノルマンディーに向かう艦内で上官が部下に言う「よく覚えておけ。百年先まで語り継がれる作戦に我々は参加しているんだ。怖いことに変わりはないが。」3月11,12,16、18の大幅下落時でも、勇気を奮って投資した人もいたんです。

 

 (ついでに。私は3月14日の講演会で「13日の1万7000円近辺でほぼ底が入った。3月下旬には乱高下するが、一部でいわれている1万4000円とかの安値は考える必要ない」と述べた。これが的中したことは、歴史が証明する。また私は戻りの目標として日経平均2万2000円と述べた。作戦としては、大幅に下落した中国関連などの突っ込み込み買い、とくに日経平均のブルETF。最後に技術革新が目立つある銘柄を注目した。)

2020年3月16日 (月)

映画「八十日間世界一周」とコロナショックによって引き起こされたバイデン大統領の可能性 2020・3・15(第1003回)

映画「八十日間世界一周」とコロナショックによって引き起こされたバイデン大統領の可能性 2020・3・15(第1003回)

 

 ジュール・ヴェルヌの代表作。私は小説を読んでいたので、1958年におこなわれた映画化は大いに楽しんで観た。お話が単純なので、カメオ出演で当時の大スターが続々と登場した。今でも名のあるスターはフランク・シナトラ、マレーネ・ディートリッヒくらいかな。

 

 舞台は1872年のロンドン。主人公フォッグ氏(デヴィッド・ニヴン)は80日で世界一周できるかどうかを賭けて下男のメキシコ人を連れて旅に出る。

 

 結末はどんでん返し。80日目に到着できず、落胆していた主人公に下男が新聞を買ったら、実は、間に合っていた。東に向けて世界旅行を出発していたので太陽に先立って進んでいた。経度をひとつ超えるごとに4分づつ時間が短縮していった。地球の周囲には経度が360あるから、4分を360倍すると24時間、つまり一日儲けたわけである。

 

 東と西でいうと時差が東の方が早い。これは実はコロナ肺炎も同じ。発生元の中国、お隣韓国、日本はすでに連日、とは言わないが新規の感染者数は回復者を含めると減少ペース。しかし西のイタリアなど欧州と米国はただいま急増中。また今回安倍首相の推進中のコロナ肺炎対策は、トランプ大統領が始めようとしている政策の先行。どうも東進西遅だ。

 

 ところで、自慢に聞こえたら本意ではないが、ここ何回か、私の予想が的中していることに注目して頂きたい。

 

  「何でもあり」の予想通り、トランプ政権は所得税減税(文字通りなら何10兆円分!)まで持出した。

 

今回のテーマはバイデン大統領出現の可能性である。前回私はこう書いた。

 

 「(私の推測だが)2月中旬にトランプ大統領は全米での防疫体制への必要性を進言されていたにもかかわらず、「米国は安全だ」というヘンな自信をもとに進言を退けて、防疫体制を敷かなかった。この失策を重視した米国の真の指導者層が決意し、中道派のバイデン氏を次のトップにするべく動き、それが゛スーパー・チューズデーにつながる。」(3月1日記)

 

 この予想通りに現状では展開している。

 

 リアル・クリア・ポリティックスの資料によればバイデン氏の支持率は2月18日16・5%、3月3日に27・3%、3月9日に51・3%と最高水準。

 

 プティエッジ氏、クロプチャー氏、オルーク氏、ブルームバーグ氏など予備選からの撤退者は(恐らく前記した真の米国の指導者層の指示と思うが)バイデン支持で一本化した。3月8日には穏健左派だったマラ・ハリス氏もバイデン支持。

 

 最新号のニューズウイーク3月17日号によると、3月3日のスーパー・チューズデー前までは確かにサンダース候補に追い風が吹いていた。

 

 しかし、サウスカロライナ選出の民主党大物ジェームズ・クライバーン下院議員

が、直前になってバイデン支持を表明。黒人有権者から絶大な支持を持つ同議員の指示で、勢いはバイデン氏に向かう。

 

 またCBSの番組でのインタビューでサンダース氏は失言を繰り返し、有権者たちから見限られた。バイデン氏が民主党の候補になる可能性は、いまや80%とされている。

 

 3月10日の6州の予備選では、さらにバイデン氏が有利になっている。ミシガン、ミシシッピ、ミズーリなど4州で勝利し、獲得した代議員数は152人増の787人。これに対しサンダース氏は89人増の647人で、短期間で差は拡大している。

 

 35日のスーパーチューズデー直後はバイデン氏53人に対し、サンダース氏506人で大きな差ではなかったが、やはり前記した米国の真の支配者層の意図があるのだろう。

 

 では、トランプ大統領の方はどうだろうか。

 

 主要な世論調査結果を集約しているファイブ・サーティエィトによると、36日時点でトランプ大統領の支持率は42・8%で、不支持率は53・0%。同調査による歴代大統領の騰落から割り出した再選に必要な支持率49%を大きく下回る。

 

 トランプ大統領の望みはサンダース候補がバイデン支持を行う可能性が現状では少ないことだ。つまり、民主党は一本化できない。

 

 サンダース氏は米国政治学でいう「PURIST候補」、つまり、イデオロギーに忠実は原理主義者。したがって、トランプ一本の共和党に対し分裂した民主党候補は勝てない。これが、トランプ有利の論拠だった。

 

 ただ、今回は違うようだ。テキサス州やカリフォルニア州の調査では、「大統領を打ち負かせる候補」を「自分と同じ見方の候補」より上位に置く有権者が57%に上った。現実主義の有権者をサンダース氏も無視できないかもしれない。

 

 しかも、今回のコロナ肺炎問題が大統領選の攪乱要因になった。前記したように、新型ウイルスの感染力を過少評価し「民主党の陰謀」としていたトランプ大統領の発言が、今となっては市民の不安と怒りと助長。そのターゲットは、もちろん大統領に向く。特に12日のコロナ対策で、欧州(除く英国)との旅客締め出しなど、幼稚な対策で不安を招いた。

 

 34日には、米国でも豪華客船が、サンフランシスコで寄港を拒否され立ち往生する事態が発生した。2月に日本のクルーズ船対応を冷笑していた米国世論だが、トランプ政権の対コロナ防疫体制が後半後手に回っている、との見方が拡大しつつあるようだ。

 先週このブログで「何でもあり」だと強調したが、やはり巨額減税で株高を狙っている。(実現性は低いが)

 

 日本の方はアメリカのようにはゆかない。それはFRBと日銀の差、米国政府と日本政府の景気刺激策への余力の差(逆に言うと米・日の財務省の景気下支え意欲への差)があるので、なかなか上昇には向かわないだろう。

 

 忘れるところだった。6月の最高裁判決もトランプ氏にとっては重荷なことは変わりない。本当にシロなら、この情勢では自発的に財務申告して苦境を脱出する。出来なければ、やはり判決次第で、トランプ→ペンスの政変があるに違いない。バイデン大統領の可能性は、一段と高まる。

 

 さて、結論に入る。フィナンシャル・タイムズ310日付で、著名投資家のレイ・ダリオ氏が「コロナ問題は天災であり、もてる手段総動員を」と述べている。世界中で資金繰り支給や税制、援助などあらゆる手段を駆使して、世界大不況突入を防ぐだろう。

 

 2年も3年も、という超悲観説が横行しているが、モデルモ社のコロナウイルスワクチンが4月から臨床実験。次に数千人の参加者に2番目の治療を開始。6ないし8か月後に米国、中国で行う(ウォール・ストリート・ジャーナル225日付)

 

 となれば年内いっぱいで見通しが決まる。全世界注視の4月の臨床実験の情報は必死になってマスコミが追及するだろうからモデルモ社(MRNA)の株価を見ていれば、感染の拡大防止のメドが立ち、そこからリバウンド相場が始まる。

 

 もちろん不況対策が実施されているだろうから、むしろバブルを心配しなくてはならない事態になるかもしれないくらいだ。

 

 NYでダウ平均が大幅に下落しているのに10年物米国国債の金利が上昇している。機関投資家は、リスクオフを次第に回避し始めている可能性がある。

 

 映画の終わり。フォッグ氏がメキシコ人の下男と、インドで救出した姫(シャーリー・マクレーン)の三人で、ロンドンの伝統あるクラブにかけの勝利を告げに行く。もちろん女人禁制、下男なんて飛んでもない。そこで会員の一人が言う。「これで世界は終わりだ!」。コロナウィルス新型肺炎で世の中が終わりになるわけではない。やはり何回もわたくしが主張している通り、「災害に売りなし」だ。

 

(この騒動のさなかにドイツ銀行がcoco債のデフォルトを決めた。メルケル首相が任期の関係で、この問題に決着をつけることを決意したのかもしれない。ただ、13日のドイツをふくむ欧州株が堅調だったのは、準備が十分だったことを暗示する。噂で売り、事実で買う、のかもしれない。)

2020年3月 9日 (月)

映画「コンティジョン」と乱高下するNYダウの意味と日本株 2020・3・8 (第1002回)

映画「コンティジョン」と乱高下するNYダウの意味と日本株2020・3・8 (第1002回)

 

 「コンティジョン」とは接触感染のこと。連日TVはまあ、あきもせずコロナ肺炎がらみのニュースを報じている。しかし、TV番組の報道は不公平、片手落ちだ。

 最近は、連日、感染者数は減少し、回復者数は増大、ついに日によっては実質的な感染者数は減少に転じた。これを報じない。

 

 まず国外。感染者数は3月5日現在9万2100人、前日比2204人、増加回復者数は2955人増加。つまり751人、感染者数は減少している。

 

 次は国内。まずTVでダイヤモンド・プリンセス号の感染者をプラスしてやれ1000人になったなどと、アホみたいなことを言っている。海外では「その他」として705人は日本から除外しているのに。

 

 まあ余談は別として3月7日現在、感染者数は420人。前日比71人増。回復者数は69人だから2人増加。その前日は1人減少だった。増加ペースは明らかに落ちている。

 

 ここらで不満は置いておこう。しかしついでだから、お隣の韓国の報道を紹介しよう。

 

 朝鮮日報は「3月2日600人 3月3日516人 3月4日438人 3月5日322人、3月6日274人」(5日のみ聯合ニュース)。6767人の感染者はいるが、一日当たりの感染者数は明瞭に減少、しかもキチンと報道している。(ただし欧州と米国、アフリカは今後の問題と考えるので、現実にはこれから騒ぎは拡大する可能性は大きいが。)

 

 映画の紹介に入る。香港に立ち寄った女性経営者が食事の後、中国人のコックと握手。その中国人がつい5分前にコウモリを料理して手を洗わずに握手。そこから、この伝染病の世界的流行(パンデミック)が始まる。パニックによる買い占め、ワクチン割り当ての争奪戦、それにフェイクニュースを流して一儲けをたくらむ不届き者も現れた。

 

 今回はセリフは省くが「恐怖はウィルスより早く伝播する」という宣伝キャッチコピーがテーマを良く示している。

 

では今回のコロナ騒動をどう評価したらいいのか。

 

 あのビル・ケイツ氏が「100年に一度」と表現しパンデミックは「すでに発生している」とまで述べた。

 

 一方、経済面ではどうか。債券王ジェフリー・ガンドラック氏が「2週間のうちにさらにFRBは政策金利の目標を0・5%引き下げるべき」とした。それほど実体経済への悪影響が大きいと予測しているのだろう。

 

現に、10年物米国国債の金利は史上最低の0・7%台まで達した。市場はパンデミックを織り込みかけているように見える。

 

 弱気の方の見通しが正しいのかもしれない。ただいま欧州を巡回中のパルナンス・インベストメントの宮島忠直ストラテジストはこう報告している。(スイス大手年金幹部が、コロナウィルス検体ツールで最大のロシュ社から入手している情報。これだけ高度な情報を入手している人が第4位とは何事!と思う)。

 

 イタリアの防疫体制は脆弱。米国はすでに感染者数がエボラを上回っている。一日にダウ平均は1000ドル規模で乱高下する市場は空前の事態。値幅制限やカラ売り規制もありうる。

 対日では入国制限や、カリフォルニア州の工場地帯での都市封鎖があれば打撃は大きい。

 

 (ここからは私の推測だが、)2月中旬に大統領に全米での貿易体制の必要性が進言されていたにかかわらず、トランプは「米国は安全だ」とのヘンな自信をもとに進言を退けた。この失策を重視した米国の真の指導者層が、そこで決意し、中道派のバイデンを次のトップにするべく動き、それがスーパーチューズディの結果につながったのではないか。

 

 勿論、バーニー・サンダースの社会主義への反発もあっただろうが。

 

 さて、この事態にあたって、現状をどう把握すべきか。

 

 SMBC日興証券の株式調査部チーフエコノミスト牧野潤一さんが実にいいタイミングで、ケーススタディを行っている。

 

 牧野さんは二つのケースを想定している。

  1. 感染拡大の期間が2月から4月の三か月間で、GDPは0・9%ダウンし、企業収益は14・9%減益。
  2. 感染期間が2月から7月の6か月間でオリンピック中止(私は延期とみるが、目先の結果は同じ)。GDPは1・4%減少し、企業収益は24・4%減益。

 

牧野さんは日経平均の最近の高値の1月20日から16・8%下落し、前記のケース①を織り込んだ、と見ておられる。問題は②が発生するか、どうか、だろう。

 

 私が「災害に売りなし」として、ケース①を見ていることはご存じと思う。簡単に方針転換しないつもりだったが、実は米国の著名シンクタンクのブルッキングス研究所が3月2日に発表した「COVID-19がマクロ経済に与える影響―七つのシナリオ」を見て、やや自信喪失したのが正直なところだ。

 

この報告の七つのシナリオのうち、最も楽観的なもの(最善)でも世界のGDPは2・4兆ドル、最悪で9兆ドル失われる。

 

 死者の方の予測も、最善で1500万人(!),最悪で6800万人死亡。米国は23万6000人、最悪で106万人。日本は最善12万7000人、最悪で57万人。私の予想とはケタが三つ違うので、びっくりした。

 

 恐らくこの報告は1918年から19年に発生した「スペイン風邪」の再発を予想しているのだろう。当時世界が人口は20億人弱だったが、その大半が感染し、3000万人以上が死亡した。

 

 2008年、世界銀行は「スペイン風邪並みのパンデミックが発生した場合」を予想した。

 経済損失は3兆ドルを超え、世界のGDPは4・8%低下する、という結論。リーマンショックの折は世界のGDPの成長率低下は0・6%だったから、このブルッキングス 研の予想通りだったら、やはり大変なことになる。

 

 まあ金融危機が絡んだリーマン・ショックは別格として、一応下落率、下落幅をまとめてみた。(日経平均。三井住友アセット市川雅浩氏)

  1. リーマン・ ショック。2008年6月6日から2009年3月10日、下落率51・3%、下落幅7434円。
  2. チャイナ・ショック 2015年6月24日から2016年2月12日 27・3% 5114円
  3. ギリシャ危機(欧州債務危機) 2010年4月5日から2010年8月31日 22・2% 2515円

 

今回のコロナショックはどうだろう。

 前記したが1月20日の2万4083円から3月6日まで、16・0%、3334円。三つの前例よりは、小さい。それだけに世界中がパンデミック化する危険性は、私には日本株式市場がまだ完全には織り込んでいないと考える。

 

 中国、韓国、日本は実質感染者数が減少しても、やはり米国の感染者が今後急増するだろう。そこでWHOから「パンデミック宣言」が出るのは時間の問題(経済産業研究所上席研究員藤和彦氏)が出るに違いない。市場はやはりヘッジファンド主導による政策催促で下げ相場を演じて見せるだろう。

 

 もちろんFRBはガンドラック氏が主張する通り利下げするだろう。ECBもラガルド体制下で金融緩和。トランプ政権は減税を発表し、株価テコ入れを図れるに違いない。

  

 問題は日銀と安倍政権だろう。マイナス金利の深堀で済むかどうか。私は政府とアコードを結んで、長期建設国債(投資国債)の日銀引き受けがベストと私は考える。出来なければ減税だろう。これを採用しなれば、大不況。東京五輪は1年延期(経済的には2020~2021年前半は中止も延期も変わりない)も打撃になる。

 

 結論を出そう。まずNYダウは、コンピュータ運用もあり、高値波乱。やはりリスクオフの姿勢から見て、上にはゆくまい。

 

 日本の方はNYにつれ安して、すでにほぼ底値、せいぜいダメ押しで瞬間的に2万円を割るくらいか。NYの方は83億ドルもコロナ対策に出資するので、米国内での感染者数増加との綱引きとなるだろう。下値が出ればまたトランプ政権は市場が好感しそうな材料を出して、当面の下値を限定的なものにするだろう。先週も申し上げたが、要するに、何でもあり、の世界である。

 

 投資作戦としては、コロナ騒動に関係の少ない5G,テレワーク関連がいいと考える。本格的な買い作戦にはほど遠い。   

2020年3月 2日 (月)

映画「駅馬車」とセリング・クライマックスの接近と、コロナウィルス ワクチン 2020・3・1(第1001回)

映画「駅馬車」とセリング・クライマックスの接近と、コロナウィルス ワクチン 2020・3・1(第1001回)

 

 ここ数週間、私は家の中に閉じ込められ、新作を見ることは不可能。幸い自宅にはヤマほど好きな古典作品があるので、ブログのテーマをあれこれ考えながら、DVDを選ぶのは楽しい。

 

 久しぶりにこの西部劇を観たが、新鮮な驚きと快感は変わらない。

荒野を疾走する駅馬車。追うインディアン。乗り合わせた乗客たちの織り成す人間模様。最後には1対3の決闘シーンへ。ドラマとしてもエンターティンメントとしても上乗の出来栄え。

 

 私は確か11歳の時見たが、救援の騎馬隊が、弾丸を打ち尽くして絶体絶命の駅馬車を助けに来るとき、嵐のように映画館の中で拍手が巻き起こった。70年以上たった今でも、あれは忘れられない。

 

 コロナウィルス・ショックで朝から晩まで身動きが取れず、投資家は株を売って債券を買うリスクオフ。世界の株式時価総額は1兆8000億ドルも減少した。

 

 当然、テクニカル指標は悪化する。宮田直彦さんが期待していた12か月と24か月の移動平均のゴールデンクロスは消滅。トレンド分析でも三井住友アセットの市川雅浩さんによると、2012年からの上昇トレンドは「下抜けした」。中期的には、さもありなん。次のトレンドまで時間がかかるだろう。

 

 しかし、ごく目先は、底入れから反発に入りかけている。

 

 大和の木野内栄治さんは、NYダウの連続下落記録は8日間で、歴史的に見て6回しかないという。すでに2月28日で7連日下落。月曜で下げれば終わり、だそうだ。なるほど。

 

 木野内さんはこのほか、騰落レシオが50%台で経験的にも底値圏だし、先物売りにもセリング・クライマックスの兆しあり、と指摘している。

 

 私もそう思う。ヘッジファンドの運用担当者たちの下値目標だった日経平均2万1000円近辺に達したこともあり、今週月曜が安ければ、火曜日の前場でも買いは報いられると見る。

 

 もちろん、あくまでも急落の後のリバウンドであり、下げの半分も戻せばまあ万歳だろう。それは次の三大難問が控えているからだ。

 

 第一は言うまでもナム新型コロナウイルス肺炎のパンデミック化不安。世界不況につながる。

 

 第二は米国大統領選。バーニー・サンダースの社会主義政策への不安。それに私がこのコラムに指摘しているトランプ大統領の納税申告の公表問題。

 

 第三は日本。オリンピックが開催できるのか、どうか。ダメなら年後半にかけ、先ごろの消費税増税のツケ回しもあり、大不況突入必至となる。

 

 どれも答えの難しい、文字通り、先行き不透明のムードを掻き立てる不安材料ばかり。

 

 ただし、実は三つとも、意外な解決策がありそうだ。少なくとも、二つは。

 

 説明しよう。

 

 このところ米ナスダック市場で急騰を続けているモデルナ(チッカーMRNA)である。コロナウイルス向けワクチンの開発を(通常1年以上)成功。全米国立衛生研に納入した。

 

 一方、日本では富山大・富士フィルムのフアビビラビル、中国ではレムデシビル。ただこれらは患者の免疫を補完するもので、ワクチンの効果にはかなわない。やはりモデルナがコロナ関連銘柄ではNO・1だろう。(この項はスフィンクス藻谷俊介さんのコメント)。先行きはまず、大丈夫。

 

 第二の方はわからない。最近になってトランプ大統領は第1000回でも書いたルース・ギンスバーグ最高裁判事を含めた二人のリベラル派最高裁判事への批判を始めた。自信がないのかなあ。

 

 もうひとつ。バーニー・サンダース上院議員人気も心配だ。18歳から26歳までの若い投票者たちが政治に目覚め始めたのか。2018年の中間選挙では14年の20%から36%に急伸。全体の42%→53%への40年ぶりの高水準を支えた。この層が大統領選にどう影響するか。

 

 第三の東京五輪。IOCの内々の依頼で盛夏から開催時期の後ずらし(9月または10月)を検討していた。これを私はさっそくこのブログにも書いたし、一部には電話までした。

 

 しかし、残念だが、結局はダメだった。五輪の大スポンサーの米国TV局がOKしなかった。勿論ロンドン説はIOCがダメとみているからいいが、あとは1年ずらし、しかない。恐らく、これだろう。

 

 それでも消費税の打撃もあり、2021年に東京五輪があっても本年後半と明年前半はどうなるのか。ここぞとばかり、大不況を言う向きが出ることは目に見えている。

 

 しかし、そうならないと、私は、確信する。

 

 理由は次の通り。

 

 まず、コロナウィルス肺炎が1年も2年も続くはずがない。前記のモデルナ社のワクチンを想起してほしい。

 

 世界不況も、まず起こらない。どの国の為政者も同じだが、谷底に向かって走る自動車をそのまま放置するバカはいない。金融緩和、財政出動、何でもあり、の世界である。特に中国はなりふり構わずやるだろう。

 

 また、いったん止めた旅行なども、安心となれば手元に資金がある向きは再開するし、街中に出なかった人々は、鬱屈を晴らすだろう。SARSの時には、世界のGDP成長率はこのウさ晴らし需要で0・6%上乗せしたことをお忘れなく。

 

 前々も申し上げたが、やはり「災害に売りなし」なのである。

 

 映画のセリフから。アパッチ襲撃の危険のある地帯へ駅馬車を進めるべきかどうかの議論の中でトマス・ミッチェル演じる酔いどれ医師が言う。

 

 「わしは哲学者であり、運命論者でもある。危険と死はどこにもある。矢に当たらなくてもどうせ酒で死ぬさ」。私もそう思う。信長じゃないが、死ぬるは一定。生きることを充実させるのが第一だ。

 

 セリング・クライマックスの後、一定期間の調整期を経て再び上昇トレンドが始まるだろう。その時期、主題、妨害因子などを考えると、ワクワクしてしまう。私はそうした予想が好きでこの商売を選び、84歳まで生きている。前回はジム・オニールのメールに助けられたが、今回はどうだろうか。楽しみ、楽しみ。

 

2020年2月25日 (火)

映画「ビリーブ 未来への大逆転」とトランプ再選への大リスク 2020・2・3(第1000回)

映画「ビリーブ 未来への大逆転」とトランプ再選への大リスク 2020・2・3(第1000回)

 

 おかげさまでこのブログも1000回を迎えました。皆様のご支援に感謝いたします。また今回のコロナ肺炎流行で被害にかかられた方々に、お見舞い申し上げます。

 

 今回あまり有名でもない作品を取り上げたのは、現在も活躍する主人公が務めている米国最高裁が、3月に入ると二つ、重要な裁判の口頭弁論を開始するからだ。

 

 6月末に判決が下るが、市の内容によってはトランプ→ペンスの政変か、民主党への政権交代になりかねないほどの裁判だ。

歴史的な事件になるかもしれない。

 

 しかも判決の決定権は最高裁長官が握っているという。まあスリル満点の裁判になること必至の事態である。

 

 詳細は後記するので、映画の紹介に入ろう。

 

 米国連邦最高裁で88歳でも活躍している高名な女性判事ルース・ベイダー・ギンズパークが主人公の作品。

 

 ルースはブルックリン生まれのユダヤ人。ハーバード、コロンビア大学で極めて優秀な成績を残したが、裁判所も法律事務所も女性であることを理由に採用してもらえない。ロー・クラークつまり事務職員になる。

 

 その後ラトガース大で教員の職を得、その実績を買われてコロンビア大で女性初の常勤教員となる。同時に自由人権協会で法廷闘争を多く手掛け、性差別と戦う法律家として全国的な名声を得る。1993年、60歳でクリントン大統領によって最高裁判事に任命される。

 

 映画は1970年代のルースの扱った案件を描く。その案件はある母親を介護しながら働く男性。当時の法律では未婚の男性は介護費用の所得控除が認められない。

 

 そこでルースは「高等裁判所の判事は男性ばかりだから、男性の性差別をなくす判例を作れば、女性差別をなくす有力な事例になる」と考えた。

 

 あとはもうお分かりだろう。裁判でのルースの活躍で勝訴し、時代は大きく転回する。

 

 さて、問題のトランプ大統領の政治生命の足を引っ張りかねない裁判二つを説明する。(この情報はワシントンの私の情報源である「ワシントン・ウォッチ」の編集人山崎一民さんにお願いした。)

 第一は正副大統領を選ぶ選挙人ルール。ワシントン州とコロラド州で生じたルール違反訴訟を一括で審理する。

 

 全米の選挙人は538人.この過半数をどう獲得するかが勝負だ。しかしワシントン州ではクリントン候補への投票を契約した選挙人14人のうち4人が別の人物に投票。コロラド州も9人の選挙人のうち一人が別の人物に投票した。

 

 「FAITHLESS ELECTOR」と呼ばれる。ワシントン州では、州法に従い、一人千ドルの罰金を徴収したが、言論の自由を奪うとして選挙人が逆に州を提訴した。

 

 一方コロラド州は州法に基き、このFATHLESS ELECTORを辞めさせ余人に置き控えた。そこで連邦最高裁に持ち込まれた。

 

 最高裁判決がトランプ再選への懸念材料になっている理由は何か。現在の選挙人が誓約した候補に投票すべきという現状維持ならよいのだが、「制約にとらわず、自由投票できる」と判決した場合が問題である。

 

 2016年にトランプ氏はヒラリー・クリントン氏に対し得票数で286836票、2・1%差で負けたが、選挙人は304人で勝利した。それだけに最高裁判決はトランプ再選に影響を与えるとみられる。

 

 第二はトランプ大統領の納税記録公開をめぐる訴訟である。勿論こちらの方が重大だ。

 

 二つ訴訟がある。第一は米国下院の監視委員会で、記録提出を召喚したのをトランプ側が拒否したため。第二はマンハッタン地検がトランプ氏不倫口止め料疑惑捜査の一環で納税記録提出を求めたが、これも拒否され訴訟になった。

 

 これまで下院、マンハッタン地検ともにホワイトハウス側は敗訴している。判決で公開せよ、になれば、当然記録公開。最高裁がこの案件で取り上げないことを決めても記録公開になる。

 

 昨年12月13日、二つ一括して審理を決めた。選挙人、納税記録ともに3月口頭審理、6月に判決が出る。

 

 前述したが、後者の方が重大に決まっている。これまで叩けばホコリが出るとみられて来たが、実際の脱税が明らかになれば、再選はおぼつかなくなる。

 

 トランプ大統領は昨年11月21日に「大統領選挙以前に納税記録を公表する」「私は潔白だ」(公開すれば)私が金持ちだということが分かる。それ以外何もない。」

 

 その通りなら何も問題はない。しかし「トランプ・ウオッチャー」の多くは「策略」とみている。それはツイッターと、米国最高裁に上告したタイミングである。自ら納税記録を公表すれば、米国最高裁の審理はむようになることを狙った策略というストーリーだ。

 

 たしかに、ツイッターでいうくらいなら、その時点で公表すればよい。やはり延ばし延ばし、しているのは、「何か後ろ暗いところがあるのではないか」とカングリたくなる。それに、ツイッターで、トランプ氏がよくうそをつくのも有名だ。

 

 そのせいかホワイトハウス全体が、トランプ援護のリップサービスを最近開始した。

  1. 2月14日。クドロー米国家経済会議(NEC)委員長は「9月に追加減税を発表する。一部の減税措置の恒久化、中間層は対する10%減税も」と述べた。
  2. CNBCは「収入20万ドル以下の国民対象に最大1万ドルの株式投資への税制控除を検討」と報道。
  3. ピーター・ナヴァロ補佐官は、前大統領首席補佐官がホストをつとめるポッドキャストは昨年年末に出演。FRBの金利引き下げが条件にダウ3万2000ドル、ナスダックの方が上昇率の方が高いだろう」。米国個人投資家には夢のような発言だろう。

一方、民主党の方は混戦で、トランプ打倒にはカネ不足だし、候補の政策も広範囲の国民の支持に至るまい。従ってトランプ再選の可能性は(最高裁の判決次第だが)本来なら極めて高いはずだ。

 

 ところが、最高裁判事9人の構成を見ると楽観しにくい。

 

 判事は9人。親トランプとみられる判事は5人、反トランプは4人で、一見アンチ・トランプの判決が出るはずがない。しかし親トランプのはずの最高裁の長官ジョン・ロバーツ氏をトランプ氏はオバマ裁判官か」とツイッターで述べたのに長官は反発。また、理屈にあった判決をするのが有名な人。このロバーツ長官次第なので、判決の行方はわからない、というほかない。(忘れる所だった。88歳のルースはアンチ・、トランプだ)

 

 イマイ先生、いつだか、トランプ→ペンスの政権交代を言っていたじゃないですか、と言われそうだ。

 

 1984年から9回の大統領選の予想を的中させたアメリカン大学のアラン・リットマン教授が、当初トランプと言っていたが、11月になって急にペンスと言い始めた。大当たりしている人の発言だから、これを重視するのは当然だろう。

 

 最近の情勢は違うようだ。前記した「ワシントン・ウォッチ」の編集人山崎一民さんに私が質問したところ、次のよう会回答をいただいた。

 

 「リットマンのペンス大統領予測は、共和党指導層が、トランプは予測不可能で、コントロールも不能。議会運営ができないと、同党幹部が考える。そこで民主党のトランプ弾劾に動けばそれに乗り、制御しやすいペンスを担ぐ、という筋立てであった。

 

 現実にはトランプ氏を切り捨てる空気はない。例えばミッチ・マコーネル上院院内総務の対トランプの姿勢から見て、共和党議員は続々親トランプになっている。」

 

 そこで山崎さんは「リットマン説は話のタネにもなっていない」と回答してきた。

 

 結論を出そう。

 

 税務申告問題で、トランプ大統領が「シロ」なら11月の選挙で再選される。圧勝と思う。しかし、6月の判決で脱税が明らかになれば、米国憲法修正第25条第4節の規定により副大統領ペンス氏の大統領に就任する。トランプ氏は自発的に辞任、恐らく司法取引で訴追は免れる。

 

 ではその可能性はどうか。3月の口頭審問が始まって、資料が公開されれば、一挙にトランプ氏の足を引っ張る材料がなくなる。勿論、株は上昇するだろう。やはり3万2000ドルは必至だろう。それ以上かも。その楽しみなシナリオの可能性は、その反対のダメシナリオと七分三分だろう。

 

 従って私は、3月の裁判の進行をできるだけ収集したい。状況はできるだけ報告してゆくつもりだ。

 

 なおオマケ。パルナソス・インベストメントの宮島忠直ストラテジストはいま海外にいるが、重要なコロナ肺炎と東京五輪、総選挙の情報を送ってくれている。(来週でもいいと思ったが、コトの緊急性を考えてオマケした)

 

 東京五輪は9月または10月にする。IOC側から持ち込まれたアイデア、とのことだ。(実現性は高そうだ)。

 

30度を超える盛夏にはコロナウイルスは死滅するし、マラソンも東京でやれる。

 

 安倍内閣としては4月末感染終息が目標。検査体制の拡大充実、ワクチンの早期開発(エイズ治療薬の転用を含む)を大車輪で進め、五輪後の総選挙、というシナリオだ。これなら外国人投資家も、日本株を買うだろう。

 

それに富士フイルムの子会社の富士フイルム富山化学のアビガン(一般名ファピラビル)がコロナ肺炎に有効、という情報も入った。

 

災害に売りなし、である。連日TVを見ていると、悲観に陥りやすいが、それはダメ。

誰かが言っていたが、楽観は努力の産物、です。

 

 

 

 

 

2020年2月17日 (月)

カミユ「ペスト」とFRB頼りのNYダウの最高値更新と日本2020・2・16 (第999回)

カミユ「ペスト」とFRB頼りのNYダウの最高値更新と日本 2020・2・16 (第999回)

 フランスのノーベル賞作家アルベール・カミユの代表作で「異邦人」と並ぶ。フランツ・カフカの「変身」とともに代表的な不条理文学として位置づけられている名作だ。

 

 物語はフランスの植民地であるアルジェリアのオラン市。医師のリウーが死んだネズミに階段でつまづいた時から始まる。やがて死者が出始め、ペストと分かる。新聞やラジオが報じ、町はパニックに。当初楽観的だった市当局も慌て始め、やがて市は外部と完全に遮断される。(まるで武漢ですな)

 

 脱出不可能の状況で、あるものは密輸業者に頼んでパリに行く計画を持ち、ある神父は人々の罪のせいなので悔い改めよと説教。リウーは必死に患者の治療に努める。登場人物それぞれが様々な行動を行うが、ペストという生存を脅かす不条理に対し最後は全員で助け合いながら立ち向かう。

 

 現在の日本はパニックの初期だろう。最初の死亡者が発生、朝から晩までTVが手の洗い方とか、やれマスクは1回ごとに更新しろとか。

 

 中国の方が大変だ。湖北省張湾区では「戦時統制命令」が発令。中国史上初めて、だそうな。また広州市と深圳市では個人資産強制収容の緊急立法があった。また武漢の病院の方もベッドが並んでいるだけ。あれでは入院即死亡宣告だろう。

 

 当然、中国の成長率は急速にダウン。1~3月は前年同期比マイナス。どのくらいコロナウィルス肺炎の影響があるか、にかかる。

 

 米国の疫病予防管理センター(CDC)の専門家の予測では①感染速度は低下するが、ピークは4月上旬②ワクチン大量配布で感染者減少開始は5月中旬以降)。とすると、どう見ても中国経済の減速は4~6月期まで継続する。と前年同期比はマイナス。実質成長率は2020年前半4%かそれ以下。

 

(余談だが、この状況なら習近平主席の来日は延期するべきだ)。

 

 日本の方も容易でない。観光産業の規模は今や自動車を抜いて第一位。もともとIMFの予想によると2020年は0・5%成長の国なのだから、恐らくマイナス成長に転落するだろう。東京五輪の方も、欧米からの来日観光客が来ない可能性だって、ないとは言い切れない。その場合の打撃は、考えるだけでも恐ろしい。

 

 にもかかわらず、2020年12月の投資家信頼指数は国により明暗二層。米国(前月比プラス4・4%)、ラテンアメリカ(プラス2・6),東欧(プラス0・1)。

 

一方日本のマイナス0・4、ユーロ圏マイナマイナス2・4。アジア(除く日本)はマイナス11・3。つれてグローバル総合ではマイナス4・0、要するに世界は不況、しかし米国はいいのだ。

 

 こう見てくると、FRBの実質的な量的金融緩和(QE4)が、NYダウの歴史的高値更新を支えていることがわかる。勿論実体経済ではシェールガス革命の成果で、エネルギー輸出国に転じたことが大きいのだが。それにトランプ減税。

 

 これも余談だが、今の日本の株価を支えている円安ドル高は、実は常識外れの理由によっていることも指摘しておこう。それは、円ドルレートは今や米国の株高の恩恵を被っているという事実である。

 

 10年物国債の日米金利差は現在昨年8月以来の小幅なもので、1・6%。本来なら円高だが、現実には対ドル109円台。昨年8月の102円台と大違いだ。

 

 三菱UFJモルガンスタンレー証券の宮田直彦さんによると「過去7か月間、S&Pと円レートの相関係数は0・82」。米国株高ならリスクオンでドル高、円安という説明だ。なるほど。

 

 ではNY株の方はどうか。ホワイトハウスの幹部のピーター・ナバロ氏によると「NYダウは、3万2000ドル」。これにトランプ大統領も賛意をした、とか。ほんとかなあ。

 

 疑い深い向きはパウエルFRB議長が「7月から貨幣供給量の増加ベースを落とす」と議会証言したことを心配するかもしれない。

 

 しかし心配は不要だろう。すぐにカプラン・ダラス連銀総裁を通じてマスコミには「今後1,2か月の展開次第では本格的なQEも」と言わせている。

 

 中国も必死だから金融緩和、ECBもやる。また米国はインフラ投資1兆ドル。恐らくサウジでG20が2月22,23両日開催されるが、そこでも世界不況回避のための金融緩和と可能な国の財政出動が結論になるに違いない。要するに何でもあり、の世界である。

 

 日本ではどうか。岸田政調会長のポスト安倍政策の目玉になっている「国土強靭化庁」の新設と、恐らく建設国債の大量発行で、景気見通しのテコ入れが行われるに違いない。日本株?6月まではずうっと上昇。(理由は来週に)

 

 私が前から好きだったカミユの名言を次に。

 

 「すべては使い果たされたのか?よろしい。これからは生き始めよう」。

 

 「希望とは一般に信じられていることとは反対で、あきらめにも等しいものである。そして生きることは、あきらめないことである」。

 

 なんだか、肩が凝りましたか?では、「ペスト」の中から。

 

 「この年になると、いやでも本当のことを言っちまいますよ。嘘をつくなんて、とても面倒くさくて」。

 

 

2020年2月10日 (月)

映画「リチャード・ジュエル」と株価の先見性とポスト安倍銘柄2020・2・9 (第998回)

映画「リチャード・ジュエル」と株価の先見性とポスト安倍銘柄2020・2・9 (第998回)

 

 90歳になったクリント・イーストウッド監督の40本目の作品。自身が出演していないせいか、興行的にはイマイチらしいが、テーマが今日的なので取り上げた。

 

 というのは最近の武漢在住の34歳の医師の李文亮さんの死亡ニュースだ。コロナウイルスの発生をいち早く当局に進言したが、逆に武漢市から危険人物扱いされてしまった。その後ご存じのコロナ肺炎患者の急拡大で一挙に李さんの名誉は回復したが、ご本人はその病気で亡くなってしまう。

 

 犯罪の第一発見者が、当初は英雄扱いされるが、次に犯人扱いされて、捜査当局やマスメディアからリンチされてしまう。日本でも松本サリン事件の河野さんが記憶に新しい。冤罪の恐怖とともに。

 

 以上申し上げてきたところで、ストーリーはもうお分かりだろう。実話にもとずいた作品だ。1966年のアトランタ五輪当時、記念公園のベンチの下に不審物を見つけた民間警備員リチャードが主人公。爆発して100人がケガし、二人死亡したが、不審な袋から逃げさせたので、被害は最小限にとどまった。

 

 もちろん主人公は英雄として扱われる。しかしある女性記者が地元紙に「自作自演」説でFRBがリチャードに嫌疑をかけているとのフェイクを書いてから、空気は一変。証拠もないのに連日、報道は過熱し、24時間、主人公の家にはマスコミの監視で一挙足一投足さえままならない。

 

 幸い主人公には同居している母と、旧知の弁護士がいる。反撃に転じる。FBIとメディアによって日常生活が破壊されていると記者会見。その場で母親はテレビを通じて大統領に「犯人ではない、と世界に発信してほしい」と嘆願。これが効いてFBIは文書でリチャードに対し「捜査対象外になった」と通告。勝利した。

 

 コロナ肺炎が始まってまだ患者は拡大中だが、パルナソス・インベストメントのストラテジスト宮島忠直さんによると「125日の李克強首相の新型肺炎対策チーム責任者就任で流れが変わった」。李首相は1988年河南省のエイズ、2009年新型インフルエンザ大流行の折にも指揮をとり、短期間で収束させた実績を持つ。今回も巨大病院を10日で仕上げて目を見張らせた。勿論直ちにこの騒ぎが終息するわけではないが。

 

 それでも米国CDC(疾病予防管理センター)によると①感染者数ピークは4月はじめ②ワクチンの大量配布により患者が減少し始めるのは5月以降。

 宮島さんは「感染者減少が6月以降になった場合、東京五輪への欧米客キャンセルは避けられない」と懸念しておられる。

 

 私の方は実は、ポスト安倍の有力候補岸田自民党政調会長が一段と有力化し、国土強靭化庁新設が確実化されたように見えることに、大いに注目している。

 

 宏池会内部で岸田氏を推すのに反対していた元自民党幹事長古賀誠さんが「応援団長になる」と宣言して、これで障害がなくなった。

 

 この二つの予想をまとめると、建設などの国土強靭化関連の買い、旅行代理店、ホテルやエアライン売り。

 

 では、全体の相場はどうか。

 

 やはりNYダウの新値更新があるのが最大の支援材料だろう。その背景の第一がFRBのQE4、第二が所得税からの還付金が2月から投資家の手元に3000億ドル。コロナ肺炎で世界が中国の減速中心に世界同時不況突入に備えて、昨年末には50%だった年内のFRBの金利引き下げ予想が86・2%に急上昇。これが第三。このブログで指摘したが、ホワイトハウスの高官が3万2000ドルを公言していることお忘れなく。

 

オバマ時代に激増していたフードスタンプ(無料の食品購入券)をもらっていた極貧所帯が700万減った。黒人、ヒスパニック、アジア、女性。みな失業者は激減し最低。アメリカは実体経済もいいのだ。

 

 

 

 私は世界同時不況予想は外れるとみている。理由は次の通り。

  1. e―コマースで必要品を購入する結果、消費は落ちない。ガラガラの店舗を見てびっくりする必要はない。
  2. 旅行のキャンセルは手元に資金のあるはずなので、いずれ消費される。
  3. 生産工場停止も、私は楽観的だ。部品供給が再開され、カネ余りの影響や米中関税戦争の一時休戦で、世界消費が急減することは考えられない。多少の増産を年央以降にやれば十分。

何よりもわたくしは、過剰流動性が長期化している結果、インフレ→金利上昇(債券価格下落)→株安という、まあ私にとっては何回もおなじみのシーンへの懸念が出ている。まあ2021,2年の話だと思っているが。問題は中国。しかし、この国の成長率が1%落ちても世界経済は0・2%落ちるだけ。大不況説は当たらない。

 

 市場はどうか。2月末の日本株価の水準次第だが、強い今後の上昇を示唆していることを指摘しているのは、三菱UFJモルガン・スタンレー証券のシニアテクニカルアナリストの宮田直彦さんだ。

 宮田さんが注目しているのは、12か月の移動平均線(MA)と24か月のMAのゴールデンクロスだ。

 2月末の引け値が2万2069円以上だったら、アベノミクスの発足以来三度目のゴールデンクロスだ。

 

 第一回は2013年1月。この時の日経平均月末値は1万1138円。これが2016年5月のザラ場高値2万0952円まで2年半88%の株高。

 

 第2回は2017年6月。月末引け値は2万0033円から2018年10月まで1年4ヶ月で22%の株高。

 今回はどうだろうか。宮田さんは「日経平均3万円シナリオ」が現実味を帯びてくると予想している。わたくしも賛成だ。来年以降と思うが。

 

 映画のエンディングがいい。主人公のリチャード・ジュエル氏は1977年に念願の警察官になり、弁護士がその職場にやってくる。「制服がよく似合うよ」と言った後「真犯人が捕まった」と告げる。画面では心臓発作で2007年8月に44歳で死去と出た。一方弁護士の方も秘書と結婚し男の子二人に恵まれ、リチャードの母親が二人の面倒を毎週末に見ている、という画面でエンド。気持ちよく映画館を出た。

2020年2月 3日 (月)

映画「アウトブレイク」とコロナ肺炎を材料としたヘッジファンド売りの終息期とここで儲かる投資作戦 2020・2・2 (第997回)

映画「アウトブレイク」とコロナ肺炎を材料としたヘッジファンド売りの終息期とここで儲かる投資作戦 2020・2・2 (第997回)

 

ダスティン・ホフマン主演の1995年のこの作品は、ウィルス・伝染病・映画の三項目で調べると、必ず出てくるパニックもの秀作。今回の新型肺炎の流行と共通点が結構あるので取り上げる。

 

「アウトブレイク」とは「病気の感染が爆発的に拡がること」。よくいわれる「バンデミック」とは「致死性の高い感染症の世界的な発生」で、アウトブレイクの一段階上の、より深刻な状況を指す。

 

今回のコロナウィルスも、その源は武漢バィオセィフティー研究所らしい。同研究所開発中の病原体と、いわゆる新コロナウィルスの遺伝子配列を比べると96%%一致。

宮島忠直さん(パルナソス・インベストメントのチーフストラテジスト)の資料によると前記の96%一致のほかに

 

  1. SARSと同様、実験用サルが病原体とともに逃走。感染源となった可能性。
  2. 中国政府は、情報開示は遅れたうえ、外国ヘの軍事機密をできる限り隠ぺいしようとしている。
  3. この結果、ワクチン生成には世界各国の研究機関が協力して三か月、かかる。しかし中国が自国の研究所の関与を認めないため、国際協力が遅れる可能性がある。

 

この現状は、全く映画と同じ。

1977年にザィールの部落で原因不明の出血が出、多数の死者を出す。現地を訪れたアメリカ陸軍の感染者の血液を採血した後、燃料気化爆弾を投下して、地上から抹殺する。

 

 時は流れ、ふたたび同じ地域で、未知のウィルスによる出血熱が発生。研究チームのサム・ダニエルズ大佐(ダスティン・ホフマン)が現地を訪れるが、時すでに遅く村は全員死亡。警戒通達を要請するが却下。実はすでに陸軍は秘密裏に、このウイルスを使った生物兵器の完成途上だった。

 

 一方、アフリカから一匹のサルが密輸入され、密売人がカリフォルニア州沿岸の田舎町のペットショップに売りつけようとするか失敗。サルを森に放してしまう。この密売人から始まって、次から次へと飛沫感染によって「アウトブレイク」してしまう。

 

 ここから隠ぺいしようとする陸軍上層部とサムの対立。ついには77年に使った気化爆弾の再使用を阻止しようとするサムが、爆撃機の操縦士を説得。ついには中間管理職の准将が立ち上って、悪の権化の少将を逮捕。一方サムが見つけたサルから血清をとって、病人たちは回復してゆく。

 

 事実の隠ぺいは今回の中国も同じ。違うのは習体制への反発が押さえつけられていることだけ。

 

 問題は映画では全く語られなかった経済と、株価へのインパクトだろう。

 

 野村総研の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは訪日観光客数から「GDPは24750億円、045%押し下げられる」と述べている。

 

 木内さんの前提をまとめる。①2003年のSARSと数字を合わせる②同程度の影響が今後1年続く。

 

 2003年当時、訪日中国観光客はマイナス130%、訪日観光客全体では154%であった。

 

 ただしSARSの場合、数か月程度で比較的短期間だった。わたくしは1年かという前提は永すぎると考えると、木内さんも同じらしい。前期の数字の半分か、それ以下ではないか。

 

 日本だけでなく、世界ではどうか。ソシエテ・ゼネラルは「世界の株価は10%下落」というシナリオを発表している。

 

 また米国誌「ビジネス・インサイダー」の記事によると、昨年秋のモデル分析でジョンズ・ホプキンス健康安全センターのエリック・トナー氏は、コロナウィルス関与による世界経済への影響を予測している。

 

 それによると、感染開始から1年後6500万人が死亡。株式市場は20%から40%下落、世界のGDPは11%急落する。

 

 いくら何でも少々オーバーじゃないか、と私でも思う。しかし、大和総研主席研究員の斎藤尚登さんによると、SARS時の体験は次の通り。

 

「(2003年当時)筆者は北京に駐在していたが、レストランには閑古鳥が鳴き、5月の連休中のある高級ホテルの稼働率は一ケタに落ち込んでいた。」

 

 しかし、斎藤さんは、こうした打撃は一時的で、V字型回復があったことを指摘している。「20035月に前年比43%増に落ち込んだ小売売上は6月には83%増に回復。また中国の200346月の実質成長率は91%と、13月期の111%から落ち込んだが、7^~月期、1012月期ともに100%成長で景気への影響は一時的だった。

 

 なるほど。昔から言われている「災害に売りなし」だ。

 

しかし現在は朝から晩まで、やれ手洗いやうがい、ヒト前に出るな、マスクをしろ、年寄りは特に注意しろ―、恐怖をアオる番組ばかりやっているテレビと、ヘッジファンドの先物売りで下落している株価を見ると、やはり恐怖が先に立つ。ヘッジファンドもそこいらを狙って、エアライン、鉄道、インバウンド関連の化粧品、ホテルと狙い打ちしている。

 

 しかし、彼らの運用成績評価時期と、貸し株返済を考えると、せいぜい3月、それも中旬までだろう。そこいらが精いっぱい。機関投資家は3月末の水準を気にするが、まあご心配なく。従来の私の主張通り、6月まで高い。

 

 映画のセリフから、サムが部下に言う。「恐怖を恥ずかしがってはいけないよ。恐怖を感じないヤツとは仕事をしたくない」。

 

最後に一仕事。宮島忠直さんの、前記のレポートによると、次の4銘柄が「救命銘柄」

として挙げられている。

  1. ホギメディカル(3593)サージカル手袋世界一
  2. 米国ダナバー(DHR)
  3. 日本光電工業(6819)生体情報モニターで世界一
  4. ドイツ・プレゼニウス・メディカル・ケア

 

勿論、売り込まれた銘柄の反発狙いが、最良の作戦。 タイミングは私のボイスメッセージ「今井澂の相場ウラ読み」をお聞きください。

2020年1月27日 (月)

映画「キャッツ」と、6月に最高裁によってクビになる(?)トランプ大統領 2020・1・26 (996回)

映画「キャッツ」と、6月に最高裁によってクビになる(?)トランプ大統領 2020・1・26 (996回)

 

 ミュージカル「キャッツ」はロンドン、NYで各1回、東京でも1回。名曲「メモリー」の美しさにただただホレた。音楽だけでなく、演出も。

 ところが今回の映画は、海外では酷評のオンパレード。「2019年ダントツのワースト」「猫にとって最悪の出来事は犬の登場とこの『キャッツ』だ」。日本も同じ。失敗の原因?私はコスチュームにあると思う。妙にリアルで、俳優が全裸に見える。確かに一部の批評家が言うように、まるでポルノだ。舞台の衣装の方が毛皮をうまく使ってリアリティがあったのに。

 

 もうひとつ。昇天する権利を与えられる老娼婦(猫?)の役を結構若い黒人にしたこと。それでみじめな老猫の一生が、最後に救われる感動がなくなってしまった。

 せっかくのミュージカルの傑作がこんな風に終わるのは何とも残念。

 

 しかし、私は何でこうした失敗が起こったのかを想像すると、やはり興行成績を上げるための浅知恵を寄せ集めたのが背景にあると考える。ジュディ・デンチの起用もおかしいし、悪の化身役の猫キャビティを演じたドリス・エルバも良かったが、本来はもっともっとセクシィだった筈。また手品師の方も成功までに時間がかかりすぎた。これは恐らく、委員会によるプロデュースの失敗だろう。

 

 さて、マーケットの方に話をつなげよう。実は25日にテクニカルアナリストが三人、それに一流ジャーナリストの司会で「200のマーケット予測」セミナーがあった。

 

 実は少々がっかりした。まず、昨年10月からの「QE4」について取り上げた人がいなかったこと。また弱気がすぎて、買戻しが相場のこれからの上昇に追い込まれる投資家が多い。一昨年末の下げでおびえた投資委員会がウリの方針を示して、その後動きが取れなかったに違いない。

 

 それなのにこの事実を指摘したのは、三菱UFJモルガンスタンレー証券のチーフテクニカルアナリスト宮田直彦さんだけだった。

 

 ウォール・ストリートの方でも、この23年、1300億ドルも現金を抱えたまま、大きな動きを示さなかったウォーレン・バフェット氏に批判がある。逆にレイ・ダリオ氏の「動き出した馬でも飛び乗れ」という助言が、ますます珍重されているが。

 

 「弱気、慎重さが上昇相場を作る」という名言をもっとかみしめるべきではないか。

 

 ただ、この買戻しの上げも恐らく6月に終わると考える。理由?米国民主党ペロシ下院議員の恐るべき深謀遠慮にある。

 

 現在下院ではウクライナ疑惑に絡んで大統領弾劾の審議が行われている。下院は民主党多数なので可決。しかし上院はご存じの通り共和党によって否決されて、ジ・エンド。

 

こんな分かり切った、タマゴを壁にぶつけるようなことを、何でペロシ議長は推進したのか。

 

3月3日の「スーパーチューズディ」があり、弾劾騒ぎはそこらに合わせる。そして、3月には連邦最高裁のトランプ陣営の「ファイナンシャル・ネゴシエーションズ」つまり納税申告を含む財務諸表の公開をめぐっての口頭弁論が開始される。

 

弾劾の後に、これまで三州でホワイトハウス側が敗訴した納税申告書公開の弁論がある。

 

続けて2件もトランプ大統領にとって頭の痛い騒ぎが半年、続く。判決は最高裁の1年の終わりの6月になるためだ。

 

もともと、叩けばホコリが出るから秘密にしたかったのだろうから、公開せよとの判決が出れば、もうダメ。仮に控訴を取り上げない、と連邦最高裁が決定しても、これまでの控訴審判決が適用されるから、やはり結果は同じ。

 

最高裁判事な9人。5人は親トランプといわれるから、本来は大丈夫のはずだが、事件をトランプ側から起こしてしまっている。「オバマ裁判官」と批判したトランプ大統領は、名指しされたジョー・ロバーツ最高裁判官が、冗談じゃない、と反発している。

 

したがって私はこれまでの米国憲法修正第25条第4節による大統領解任、副大統領昇格」説を撤回する。三権分立による司法の裁きで行政の長である大統領が(恐らく)自発的に退任。検察側と司法取り引きして訴追を免れる。後継のペンス副大統領が勝てるか、どうか。

 

となると民主党のバイデン前副大統領か、社会主義者のバーニー・サンダースかエリザベス・ウォーレン上院議員。又はその二人の連合。どちらにしても米中覇権戦争は、習近平の勝ち、だろう。国賓として呼んでおいて良かった、ということになるのではないか。

 

ただし、日本の政界の方も問題が多い、かつて盤石だった内閣と官僚の間に軋みが見える。この方はいずれまた。

 

ミュージカルなのでせりふの代わりに歌詞を、もちろん「メモリー」からだ

「月の光よ 私は朝日が昇るのを待つわ 新しい命に想いをはせるの

私は屈したりしない」「夜明けが来れば 今夜もまた 楽しい思い出になる」

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