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2025年5月26日 (月)

映画「ミッション・インポッシブル/ファイナル・レコニング」とムーディーズの米国債格付け低下。なぜ株価の方は暴落しなかったのか 2025・5・25 (第1274回)

映画「ミッション・インポッシブル/ファイナル・レコニング」とムーディーズの米国債格付け低下。なぜ株価の方は暴落しなかったのか 2025・5・25 (第1274回)

 

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<映画公式ホームページより>

 

いやー、面白いの何の。ストーリーはこみ入っているので省くが、トム・クルーズの体を張った見せ場が多い。ハラハラドキドキの3時間であった。一見をおすすめする。

 

5月16日のムーディーズの米国国債信用格付けの切下げ。最上位のAaaからAa1へワンノッチ引き下げた。

 

アレレと思ったのは、市場に大きなマイナスが起きかかったこと。S&P500でいうと寄り付き5891.25と下げで始まったが、すぐに上昇に転じ、5983.59で引けた。

 

過去の例をひくと、二つある。2010年8月2日のS&Pによる格下げの時には大幅に下げた。8月5日から下げ始め同年10月に底入れした。回復は年末ころだった。もう1社の大手フィッチも同じような推移をたどっている。

 

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小菅努のコモディティ分析より>

 

ムーディーズを過去の2社と比較すると、いくつかの相違点がある。わがビジネスパートナーの大井幸子SAIL社長によると、次の3点ある。

 

① 景気:
景気後退は過去の格下げ時には見られない。現時点ではリセッションリスクはやや低下したものの、景気は弱含んでいる。

② 金利:
2011年8月は米国も低金利状態だった。2022年3月に始まった利上げは23年7月まで続き、その後1年間にわたり5.50%の高い政策金利が据え置きとなった。FRBは2024年9月になって0.5%の大幅利下げを実施し、その後11月、12月と0.25%ずつ利下げをした。しかし2025年に入ってからは利下げが見送られているものの、景気後退リスクが広がれば、今年後半の利下げ期待が高まっている。米国債格下げで株価が下落すれば利下げ期待はさらに高まりそうだ。

③ 日銀とリパトリ:
2011年8月の格下げ時期には、3・11大震災後の猛烈なリパトリがあった。2023年8月時には日銀の政策転換が予想されていた。日本は海外で最大の米国債保有国であり、植田総裁はFRBと歩調を合わせて米国への持続的な流動性提供に努めている。今後も日銀の利上げのタイミングの動きに注目。

 

以上、景気の弱含み、利下げ期待、日銀による特徴的な協力体制から見て、ムーディーズによる格下げの影響は、株価利確の調整局面程度で大きなマイナス影響はないと予想。
<ヘッジファンド(HF)ニュースレターより>

 

一方、商品アナリストの小管努さんは、格下げの理由を次のように述べている。また専門の金先物取引との関係についても。

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小菅努のコモディティ分析より>

 

では、日本はどうか。野村の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは、次のように現状と見通しをまとめている。
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<木内登英のGlobal Economy & Policy Insightより>

 

まあ私は高橋洋一嘉悦大学教授の「IMFによると日本はカナダに次いで世界第2位の健全性を持つ」という方を信じたいが、いまは政治のゴリ押しの季節。理クツに合った交渉が出来るかどうか。「100年割引債」を押しつけられる公算はないではない(このことは、このコラムでもとり上げた)。

 

ただひとつ。トランプ2.0治世は、関税を大幅に引き下げるように、バカがやっているのではない、ということである。

 

ごく最近のウォールストリートジャーナルは「ABUSA」というトレンドを紹介した。Anywhere But USA(米国以外でならどこでも)という考えだ。永くなったので、これは来週にしよう。

 

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