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2023年4月27日 (木)

村上春樹「街とその不確かな壁」と金価格2倍増の理由。 2023・4・23 (第1169回)

村上春樹「街とその不確かな壁」と金価格2倍増の理由。 2023・4・23 (第1169回)

 

6年ぶりの新作で、1200枚の長編。3部編成で、私はほとんど徹夜して読んでしまった。「何て面白い小説なんだろう!」と久しぶりに読書の楽しみを味わった。ストーリーは省略する。主人公の17歳から47歳までの物語とだけ言っておこう。

 

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第2部に、死んだ図書館長の幽霊が、ベレー帽を被り、スカートをはいて出てくる。姓は「子易」、何となく千利休を思わせる名だが、実にいい人物で、実に魅力的だ。

 

主人公は現実にない「ある街」と現実の間を往来し、子易さんも死後の世界とこの世とを往来する。

「金」が装飾品として始まり、次第に通貨あるいはそのウラ付けとして使われてきたように、2つの世界を行き来する。

 

金価格はオンス2030ドルを中心とした取引。ウクライナ侵攻直後の2022年3月の高値2078.80ドル、さらにはコロナショックの混乱時の2020年8月の2089.20ドルも夢ではない。予想の的中率の高い若林栄四さんが「2029〜2030年にオンス3855ドル」を予想していることは、このコラムでも紹介した。現在の1.8倍。

 

最近紹介した仏マクロン大統領は「ドルの治外法権の離脱」を帰国途中の機内で仏記者からの質問に答えて主張した。

 

ドルの治外法権とは、米ドルが世界中で国際取引や金融市場で広く取引されていることを指す。時に米国のドルをあえて「武器化」して敵対国を貶める。

1990年代半導体戦争に勝利し、80%近いシェアを誇っていたわが国を、円高ドル安で敗北させた。「円高→デフレ→また円高→デフレ」という悪循環に貶める。

 

現在の中国は、金を外貨準備の中に繰り入れることにより、「脱ドル」を目指している。

 

中国人民銀行は4月7日、3月末時点の金準備保有高が2068.3トンと、5ヶ月連続でプラス購入した。累計では1200トン。

それでも外貨準備に占める比重は、米国側の想定によると、4.1%程度であり、買い余地は大きい。

 

追従して___ではないが、1月からシンガポール中央銀行は金の購入を再開した。1〜2月で51.4トン購入は史上最高。2022年には1135.7トンで、2023年も購入方針は固い、とみられている。

 

やはり若林さんの予想する通り、少し遠い未来ではあるが、オンス3855ドルの予想は的中する確率は大きいと私は考える。

 

それよりも何よりも、ウォーレン・バフェット氏の来日で一挙に盛り上がった海外機関投資家の日本株式評価だが、この他の人も数多い。

①ブラックストーンのCEOスティーブン・シュワルツマン氏が岸田首相を訪問

②KKRのヘンリー・クラビス氏が日立製作所を訪問。

 

さらに話題になったのが、ATカーニーの2023年の「海外投資信頼度ランキング」で米カナダに次ぐ第3位になった。安倍首相登場直前の2012年にはなんと21位だった。また前々年の2021年は、中国、インド、ブラジル、米国、ドイツだった。

 

結論。

「金」は遺産の3%から5%。やはりここ2、3年のうちにに史上最高値をうかがう。

 

 

2023年4月17日 (月)

映画「用心棒」と迫り来るインフレ。オンス3855ドル目標の金価格。それにW・バフェットの新しい動き 2023・4・17 (第1168回)

映画「用心棒」と迫り来るインフレ。オンス3855ドル目標の金価格。それにW・バフェットの新しい動き 2023・4・17 (第1168回)

 

「用心棒にもいろいろあるさ。雇った方で、用心しなきゃなんねえ用心棒だってある。」

ご存知三十郎の迷セリフ。場内がワッと大笑いしたのが記憶に残る。対立する2組のヤクザを互いに戦わせて、自滅させるというストーリーは有名だから、ご存知だろう。

 

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黒澤明という天才の功績は偉大だ。この「用心棒」が「マカロニ・ウエスタン」という分野を生み、クリント・イーストウッドという俳優をTV「ローハイド」の脇役から、名監督を生んだ。

 

米国のFRBパウエル議長などは、相反する要求にどう答えるか、悩んでいるに違いない。

 

インフレを抑え込むには、金利を引き上げ、マネーの供給を絞らなければならない。しかし、経営がおかしくなった銀行には金融緩和が必要になる、信用不安は大敵だからだ。

 

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チャートは日経新聞4月2日付からとった。

「影の金利」とは耳なれない用語だが、総合的な引き締め度合いを示すもの。バーナンキFRB議長の分析手法を利用して算出される。現在1.7%。現実の政策金利4.75%〜5%に比べて低く、インフレが再加速する危険性をはらんでいる。

 

私が8月下旬の「ドカ」を予想する理由は、ここにある。

6月末の中間決算時に、依然引き締め(政策金利上昇)が続いている公算は小さい。

しかし、インフレが再燃し、債券価格は暴落(金利急上昇)が、私は相当な確率で発生すると考えている。

 

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インフレといえば「金」。永い間お預けになっていたオンス2000ドルの壁を4月に入っていとも簡単に抜いた。

 

先日若村栄四さんのセミナーに出たが「2029〜30年に3855ドル」という目標値を言っておられた。

 

では、「ドカ」の底値は?

あくまでも推測だが、NYダウは3万ドル。日経平均は2万7000円。

 

これが明年春にはどうなるか。NYダウは3万7000ドル、日経平均は3万4000円。

 

材料はウクライナ侵攻の停戦又は休戦。

理由は、5つある。

 

第1はウォール街の新しい動き。JPモルガンは200億ドルから300億ドルの「ウクライナ復興ファンド」をローンチ。またブラックロックはゼレンスキー大統領の個人資産の運用の顧問契約を結んだ。

 

こうした和平を読んだ動きは、経験的に9ヶ月くらいで実現する。

 

第2はジョージ・ソロスが春の戦車投入でウクライナ戦況が目覚ましく好転する。

この人は軍事専門家ではないが、米国指導者層の動きから予言し、的中率は高い。

 

第3。米国は性能が旧式化したいわばスクラップするしかない兵器を、戦争を起こして消費し終わると休戦。

これを一定の間隔を置いてやっている。今回も明年2月までに、消費し終える。

 

第4。プーチン、習近平ともにメンツのたつ休戦を望んでいるが、米国のバイデン政権が阻止している。ロシアは大統領選がある。

 

第5。明年の米国大統領選で、ウクライナを援助し続けることは、共和党が半分、民主党が3分の1の反対がある。朝鮮半島型の休戦または停戦が採用されるだろう。

 

すでにこうした動きを読んで、投資の神様ウォーレン・バフェットが動き出した。日本の総合商社の株を7.4%まで買い増している。動き出して2年。すでにドルベースで2.5倍。我々も「ウクライナ復興の狙い目」を狙いたい。いかが?

 

最後に三十郎の終わりのセリフでシメる。

「さて、これでこの宿場も静かになるぜ。」

そこで縛られたままの権爺さんの縄を切って…

「あばよ」

 

 

 

2023年4月10日 (月)

映画「生きる LIVING」とトランプ再選の可能性。米企業収益悪化が抱く日米「ドカ」。 2023・4・9 (第1167回)

映画「生きる LIVING」とトランプ再選の可能性。米企業収益悪化が抱く日米「ドカ」。 2023・4・9 (第1167回)

 

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あの黒澤明の名作をノーベル賞作家のカズオ・イシグロがリメイクした。こう聞くと「さぞかし感動するだろう」と誰しも思う。

しかし、現実は___。まったく盛り上がりのない作品で、 私は少しも感動しなかった。

 

ストーリーはご存知の通り。役所の市民課に勤め、妻に先立たれ、あだ名は「ミスター・ゾンビ」。それが癌で余命半年を宣告される。

 

かつての部下の若い女性と時間を共にするうちに、彼女のバイタリティに感化され、役所でたらい回しにされていた小さな公園づくりに全力をあげる。公園のブランコで歌いながら死ぬ。

 

人生いろいろ。今回は私への問い合わせが数多いものを集めた。

 

まず第1がトランプ前大統領への起訴問題。

米国共和党が一元化して、仮に有罪判決が出ても、大統領になる可能性は残る。特に民主党側が支持率が低い。バイデン36%カマラハリス16%。これに対しトランプ50%。

 

しかし、今回の提訴を軽視できないのは、今回の検事が「確かな証拠でないと起訴しない」完璧主義者だからである。

 

NYマンハッタン地区検察官(DA)アルビン・ブラッグ氏。ハリウッドの大物プロデューサーのワインステイン氏の起訴で名を挙げた。

 

ブラッグDAは就任早々、トランプオーガナイゼイションの経営記録改ざんケースの起訴を担当したが、「証拠不十分」で打ち切った。

 

今回の起訴は、「十分な物的証拠」がある。軽視できない。

 

さて、第2。

日経平均は私の予想2万8000円台の上の方を裏切って、先週下落している。

 

犯人は、米国企業の1〜3月期の決算が、かなり悪そうなこと。

 

S&P500種の一株あたり利益予想は、2023年3月期はマイナス5.3%の昨年12月時点ではプラス0.7%だったから、6.2%の減益。3、4半期つまり9ヶ月の減益。

 

加えて、ご存知の通り、米国の景気が悪いにもかかわらず、FRBは利上げを続けている。

 

その結果、1959年以来、2023年1月にはM2つまり現金プラス預金は前年からマイナスになっている。

 

FRBは最近でも消費者物価は前年同月比6%なので、利上げは止めるに止められない。

 

では、日経平均はどこで下げ止まるか。

2万7000円、と読む。

すでにTOPIXのPERは予想ペースで13倍と底値水準。

 

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一方、NYダウは少なくとも目先は3万ドルの大台は割らないと見る。あと数%。

 

私はこの際、年内3万円は無理と思う。

 

日銀は口先はともかく、現実は量的金融緩和どころか、マネタリーベース、M2ともに伸び率はゼロ又はマイナス。これじゃあ、ねえ。(チャートはBdフルーレット提供)

 

ただし、中長期でも私が米国経済について強気であるわけではない。

 

ウォール街の債券担当に聞くと、現在の米国経済の潜在成長率(1.8%)は政策金利が5%以上の状況になれば米国経済は崩壊する、としている。

 

2008年のリーマンショック当時は公的債務は10兆ドル、現在31.4兆ドルに達している。

確かに利払い費は大変な負担になる。

 

さて、結論というか、注目銘柄探し。

 

長期(2、3年)で、ダイキン工業(6367)、東京製鐵(5423)。

代金は自社の規格をワールドワイドにした高技術と最高益。増配。

東京製鐵は低PER(5.6倍!)と増配(80円→85円)

 

(ナイショ話だが、某お役所の高官が注目してますよ!)

 

来週、オンス2000ドルを突破した金について書きます。

乞うご期待!

 

2023年4月 3日 (月)

禅語「白馬蘆花に入る」とリーマン危機と今回の比較。そして8月下旬の「ドカ」 2023・4・2 (第1166回)

禅語「白馬蘆花に入る」とリーマン危機と今回の比較。そして8月下旬の「ドカ」 2023・4・2 (第1166回)

 

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言葉で云い現せない禅の体験を、苦心して云い現わそうとする言句のことを「禅語」という。

 

表題に使った「白馬蘆花に入る」は「蘆」(アシ又はヨシ)で、白い小さな花を咲かせる。そこに白い馬が入ると見分けがつかない。そのココロは、1つの道に黙々と徹する姿は実に美しい、というもの。

 

しかし私は、2008年のリーマン・ショックと今回の金融危機は、同じ「色」であり、これから起きる危機もまた同じ。

 

日本で1990年代に起きた銀行危機も同じ、と考える。

 

私の考えの基本はこうだ。

リーマン以降の大量な金融緩和がもたらした起低利時代。その時代に購入した長期債の含み損が、規模の大小を問わず全ての金融機関に発生しているはず、というものだ。

 

では、イマイさん、弱気なの?と聞かれそうだが、私の強気は変わらない。

少なくともここ4、5ヶ月は。

 

というのは、米国のシリコンバレーバンク(SVB)は、最もリスクの少ない資産、つまり米国国債やMBS(不動産損保証券)で運用されていた。リーマン当時のサブプライムローンとは全く違う。

当時は格付け会社がそうしたローンに最上位の格付けを乱発している。

 

野村総研のリチャード・クーさんは、こう説明している。

「本来満期まで持てば安全な債券ばかり。価格変動のリスクは、SVB側は想定していなかった。しかし、一部の預金者が、同行は危ないと気づき、資産を引き揚げた。オンライン化で、巨額の資産がSVB から一瞬のうちに流出した。」

 

これに対し当局は、ペイオフで対処しようとしたが、すぐに預金金融保護に切り替えた。ペイオフでは25万ドルの預金までしか、保護されないので、賢明な措置だったとクーさんは云う。

 

問題は次の通り。

米FRBのパウエル議長以下首脳部が金融引き締めを行なっている。一方でこうした問題金融機関への貸し出し増は金融緩和にほかならない。

 

結論を急ごう。

 

私は「インフレがおさまって金利が下らないと、銀行問題は解決しない」とするクーさんの意見を全面的に支持する。

 

私の信頼する箱田啓一さんは今回の「ドカ」を当てた当たり屋だが、8月下旬に「ドカ」又は「ドカン」があると予想している。私もそう思う。

 

私はFRBがその頃すでに、金融引き締めを終えている。そこに何らかの要因でインフレが再燃したら、金利は急騰、債券価格は大暴落。

 

かつての邦銀のように、「貸し渋り」が起きる。リーマン当時は米国の銀行は、銀行同士の不信感から金利資金をインターバンク市場に放出せず、決済ができない銀行はFRBから借り入れた。通常2億ドル程度のFRB貸し出しは実に7000億ドルまで急増した。

 

今回はどうか。クーさんのチャートをお借りすると、リーマン時代よりも多い。しかもFRBは簡単に利上げをやめられない。この矛盾。解決には大変な時間がかかるし、痛みも大きい。

 

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第一生命経済研究所首席エコノミストの熊野英生さんは「隠れた部分にリスクがある」として、「ファンドなどが運用する欧米のレバレッジドローンという低格付けの社債への投資」を例として挙げている。

 

結論。

やはり、8月下旬ごろに「ドカ」かつ「ドカン」があると考えた方が良さそうだ。外れたら?その時はゴメンナサイというしかない。

 

 

 

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