村上春樹「街とその不確かな壁」と金価格2倍増の理由。 2023・4・23 (第1169回)
村上春樹「街とその不確かな壁」と金価格2倍増の理由。 2023・4・23 (第1169回)
6年ぶりの新作で、1200枚の長編。3部編成で、私はほとんど徹夜して読んでしまった。「何て面白い小説なんだろう!」と久しぶりに読書の楽しみを味わった。ストーリーは省略する。主人公の17歳から47歳までの物語とだけ言っておこう。
第2部に、死んだ図書館長の幽霊が、ベレー帽を被り、スカートをはいて出てくる。姓は「子易」、何となく千利休を思わせる名だが、実にいい人物で、実に魅力的だ。
主人公は現実にない「ある街」と現実の間を往来し、子易さんも死後の世界とこの世とを往来する。
「金」が装飾品として始まり、次第に通貨あるいはそのウラ付けとして使われてきたように、2つの世界を行き来する。
金価格はオンス2030ドルを中心とした取引。ウクライナ侵攻直後の2022年3月の高値2078.80ドル、さらにはコロナショックの混乱時の2020年8月の2089.20ドルも夢ではない。予想の的中率の高い若林栄四さんが「2029〜2030年にオンス3855ドル」を予想していることは、このコラムでも紹介した。現在の1.8倍。
最近紹介した仏マクロン大統領は「ドルの治外法権の離脱」を帰国途中の機内で仏記者からの質問に答えて主張した。
ドルの治外法権とは、米ドルが世界中で国際取引や金融市場で広く取引されていることを指す。時に米国のドルをあえて「武器化」して敵対国を貶める。
1990年代半導体戦争に勝利し、80%近いシェアを誇っていたわが国を、円高ドル安で敗北させた。「円高→デフレ→また円高→デフレ」という悪循環に貶める。
現在の中国は、金を外貨準備の中に繰り入れることにより、「脱ドル」を目指している。
中国人民銀行は4月7日、3月末時点の金準備保有高が2068.3トンと、5ヶ月連続でプラス購入した。累計では1200トン。
それでも外貨準備に占める比重は、米国側の想定によると、4.1%程度であり、買い余地は大きい。
追従して___ではないが、1月からシンガポール中央銀行は金の購入を再開した。1〜2月で51.4トン購入は史上最高。2022年には1135.7トンで、2023年も購入方針は固い、とみられている。
やはり若林さんの予想する通り、少し遠い未来ではあるが、オンス3855ドルの予想は的中する確率は大きいと私は考える。
それよりも何よりも、ウォーレン・バフェット氏の来日で一挙に盛り上がった海外機関投資家の日本株式評価だが、この他の人も数多い。
①ブラックストーンのCEOスティーブン・シュワルツマン氏が岸田首相を訪問
②KKRのヘンリー・クラビス氏が日立製作所を訪問。
さらに話題になったのが、ATカーニーの2023年の「海外投資信頼度ランキング」で米カナダに次ぐ第3位になった。安倍首相登場直前の2012年にはなんと21位だった。また前々年の2021年は、中国、インド、ブラジル、米国、ドイツだった。
結論。
「金」は遺産の3%から5%。やはりここ2、3年のうちにに史上最高値をうかがう。