今井澂プロフィール

講演・出演など

お問合せ

週刊ボイスメッセージサービス『今井澂の相場ウラ読み』

広告


時事総合研究所委託編集 コメントライナー

« 2022年11月 | トップページ | 2023年1月 »

2022年12月26日 (月)

宮本武蔵「一乗寺の決闘」と日銀のサプライズ政策。そして2023年の見通し 2022・12・25  (第1151回)

宮本武蔵「一乗寺の決闘」と日銀のサプライズ政策。そして2023年の見通し 2022・12・25  (第1151回)

 

20221226_01

 

12月20日の日銀の決定は、サプライズとして受け取られた。金融政策は、黒田総裁の退位以降と考えられていただけに、予想していた向きは皆無だった。

 

具体的には0.25%から0.5%への長期金利変動幅の拡大。

そして量的にはQEを7.3兆円から9兆円と拡大した。

 

サプライズという意味では、宮本武蔵が吉岡一門との決闘で、若い子供の代表を切り捨てたのと似ている。

 

しかし、武者陵司さんによれば、「サプライズで市場を畏怖」させたのは理由がある。

 

  1. 日銀がフリーハンドであることを示し、市場を畏怖させた。為替市場で円暴落の懸念がない。
  2. 金利上昇のトレンドを示唆し、投資家のアクション変更、リスクテイクを促した。現に円レートは137円から130円の円高に止まった。その後132〜3円で止まっている。12月の短期によると、想定ドルレートは132.31円なので妥当な水準である。GDPを0.3%に押し下げることを考慮すると、長期的には円安の妥因である。

 

いや、利上げの一種ではないか、と言われるだろう。しかし「国債の利上げ幅は0.25%だろう。1年平均は0.025%にすぎない」と黒田さんなら言っただろう。

 

私は新総裁に対する配慮のように見える。重要な政策変更を新総裁が行うと、一種のレッテルを貼られる可能性が強い。例えば「タカ派」だと。

 

20221226_02

 

SAIL代表の大井幸子さんは日米、それぞれ理由があるとした。

 

まず日本。すでに10月、JGB入札は不調。国債市場は仮死状態に入る不安があった。

 

次に米国。ねじれ議会のため、債務上限門題(デッド・シーリング)問題が起こりうる。

しかもこの時期に、米国国債3000億ドル以上の新規発行が予定されている。米国側としては、買い支えが必要。円高に移行してくれれば、米国国債への買いも期待できる。

 

20221226_03

20221226_04

 

以上。今回の日銀クロダ・サプライズへの簡単な分析を行なった。

私としては、設備投資が増加しかけている折、促進材料になるのを歓迎する。

 

株価の方は?

ショックの残る期間は3万円どころか2万8、9000円も怪しい。北京のコロナの惨状を見ると、4万円説も怪しくなっているのが現状である。

 

20221226_05

20221226_06

 

たまたまOECDの11月の見通しが発表された。中国の5%未満の歴史的に見て極めて低水準。従前から指摘してきた不動産バブルの破裂もあり、これ以下に止まる可能性すら、ないではない。

 

しかし、2023年。1.8%はいい数字だし、米国とユーロ圏の0.5%、ドイツのマイナス0.3%、英国のマイナス0.4%に比べると、差は際立っている。

 

岸田首相の増税発言には呆れ果てたが、ウクライナ戦争の明年中の停戦→休戦に希望を持つ。なぜかというと2024年初めにロシアの大統領選挙がある。秋にはカタが付くのではないか。

 

最後に宮本武蔵の格言を。

「我、ことに於いて後悔せず」 

 

2022年12月19日 (月)

映画「ラーゲリより愛を込めて」と2024年米国大統領は誰になるのか。そしてNYと日本の株式市場の行方 2022・12・18 (第1150回)

映画「ラーゲリより愛を込めて」と2024年米国大統領は誰になるのか。そしてNYと日本の株式市場の行方 2022・12・18 (第1150回)

 

主演の二宮和也がいいので、早速観た。

シベリア抑留そのものだ。昔のことになってしまったので、席の隣の若い女性が

「こんなことがあったのね」「私は知らなかったわ」

と云う会話が胸に沁みた。

 

20221219_01

 

87歳の私でさえ、収容所数が2000カ所を超えたこと、68万人が抑留されたことは耳新しかった。

 

主人公の山本幡男という人物は、まことに類まれな、いつも希望を抱きながらシベリアで死んだ男である。帰国できた友人3人が遺言を記憶して家族に話すシーンでは、誰もがジーンと来るに違いない。(ソ連は書いたものを持つことを禁じたため)

 

それでも遺言の中の言葉は心を打つ。

「最後に勝つのは道義であり、誠であり、まごころである」

 

さて、今回のテーマの2024年の米国大統領選挙である。

材料は中間選挙の統計。それに私のワシントンの情報ソースからとった。

 

まず「トランプ離れ」。

出口調査では、58%がトランプを嫌い。その回答者の77%が民主党に投票している。

 

20221219_02

 

私のソースはトランプ嫌いで、「トランプがリーダーだった2016年以降、共和党は2018年中間選挙、2020年の大統領・議会選挙、そして2022年の中間選挙の3回敗北している。責任を問う声は、穏健派の共和党議員や大口献金家から挙がっている。」

 

20221219_03

 

事実、3人の大口献金者が献金を止めたが、現実には小口献金(年9万円弱)が90%もファンドの比重を持つ。

トランプへの打撃は少ない。また今でも共和党有権者の35%はトランプを支持している。

 

共和党内では、早速2024年選挙への世論調査が行われた。

 

アイオワ州/デサンティス 48% トランプ37%

ニューハンプシャー州/デサンティス 52%  トランプ37%

 

これに対し、バイデン民主党は早速手を打っている。

ホワイトハウス内に「トランプ・プロジェクト」という特別班が設けられた。ここがトランプへの刑事捜査の特別捜査官(ジャック・スミス)と連携する。

 

しかし、バイデンに不利な条件も見受けられる。

80歳という高齢、40%台という低い支持率。しかし民主党内にまだ他の有力候補がいない。そこでバイデン再出馬、となるのだが、公の場での失言、勘違いが続出。これも共和党側の人気を回復させる。

 

そこで民主党側は予備選の開催州を一新する作戦に出た。

 

1972年以来、アイオワ州がトップに予備選は始まったが、今回、同州はトップ5にも入らない。

 

2月3日のサウスカロライナ州が手始め、2月6日にネバダ州とニューハンプシャー州、その2週間後にミシガン州になる。

 

この作戦は黒人、マイノリティが高い州から予備選をはじめ、民主党人気を高める、というもの。

 

アイオワ州は州民の86%が白人で、ヒスパニック6%、黒人5%、アジア系2%。一方サウスカロライナ州は、黒人中心のマイノリティ人口が40%を占める。まだ有力な民主党候補はいないが、ここで勝てば一挙に全米の人気を高めうる。バイデンの再選につながる。

 

NY株。以前から申し上げているように利上げの間は下げ相場。上がるときは空売りの買戻し。ただ、サンタクロース相場は期待していい。

 

 

一方、日本株。

いちよし証券の高橋幸洋さん作成の空売り比率のチャートをご覧いただきたい。

 

20221219_04

 

12月12日現在41.15%。10月以降空売りは儲かっていない。買い戻しを5ヶ月とすると、明年2月から3月。恐らく2回ついた3万円トビ台の節目を今回は抜く。

 

4月の統一地方選に向けての「選挙は買い」のジンクス。

実体経済の好転。好決算などなど。買い材料は多い。

 

インバウンド、新しいところでの半導体製造装置株に底入れが見られる。アドバンテスト(6857)、東京エレクトロン(8035)あたり、ご注目ください。(ご投資は自己責任でお願いします)

 

2022年12月12日 (月)

続「戦争と平和」世界リセッションに対する日本の強み。プーチン大統領の核兵器使用の可能性。そして2023年の大まかな見通し。 2022・12・11  (第1149回)

続「戦争と平和」世界リセッションに対する日本の強み。プーチン大統領の核兵器使用の可能性。そして2023年の大まかな見通し。 2022・12・11  (第1149回)

 

今回はよく聞かれる質問をまとめる。

 

第1はドル高円安の今後。いつ迄?上限と下限は?

 

私は、明年第2・4半期に米国FRBが公定金利の引き下げに転じれば、円安は円高に変わる。上限は152円、これは日米協調介入でこれ以上ゆかせないという意思表示でもあった。

 

一方、円高は米国側が援護射撃してくれるので、日本製造業大企業の計画レート(明年には114、5円か)に止まる。

 

つまり、110円台央と130円台央のボックス相場に入る。

第2は、明年3月期末の日経平均は?

 

私は、3万円トビ台は2回ついてその後3度目の正直で今度は抜く。その後は、日本の政界、特に地方選挙の結果次第、とお答えしている。

 

市場の3分の2を占める外国人投資家は、政治の安定性をとくと重視する。政局不安になれば後半は、正直言ってわからない。

 

第3は、ウクライナ情勢の今後。

 

2つ、ロシア有利と不利の情報が入っている。

 

まず、ロシア有利。

インフラ中心にウクライナを攻撃しているが、これで厳寒を乗り切れるかどうか。なにしろ冬将軍にはナポレオンやヒトラーも敗退した。クトゥーゾフ将軍ではないが、冬はロシアにとって最大の武器だ。

 

逆に、ロシア戦車を分解したら、家電に使う粗悪な半導体を使って作った。兵糧攻めが効いているとの見解もある。(プラザ投資顧問伊東秀広さんによる)

 

私は歴史的前例もあるし、とりあえず今後2、3ヶ月はロシア有利。とりあえず厳寒は双方の攻撃能力を下落させる。その後は、兵糧などが、半導体だけでなく原油、天然ガスの○○のガタ落ちで、最終的には「休戦」。

 

ついでに。核兵器を使うかという質問だが、私は9割9分、使わないと答えている。理由はカンタン。中国習近平主席が、使うべきでない、と述べ、プーチン自身も、自国の防衛のためにのみ使うべきだ、としている。

 

第4の質問は、明年の米国大統領選と、今回の民主党善戦。それからトランプ氏の今後、である。

 

中間選挙の投票前の世論を振り返ってみよう。リアル・クリア・ポリティクス(RCP)によると、1ヶ月前の予想は次の通り。

 

上院で民主党48、共和党52。下院では民主党180、共和党220、接戦300。州知事は民主党 20、共和党30。

蓋を開けてみれば、上院は民主党51で民主の勝利。

下院は共和勝利したが、現実には敗退が多く、州知事民主党23、共和党25となった。

 

やはりトランプ氏。大統領出馬を匂わせる発言がひびいたと見た方がいい。下院上院の差はなく、トランプ氏が支持した候補は軒並み敗退した。

 

やはり「賢いトランプ」と許されているフロリダ州知事デ・サンテイス氏(共和)が有利なのではないか。

 

第5は、中国の台湾進攻はあるか。

 

私は、ここ3年は絶対ないと答えている。

「新チャイナ・セブン」を含めた習体制3月期は亀が首をすくめるような防衛体制に入る作戦をとっている。新冷戦の本格化に備えたためである。問題なのは若年層の失業で、「第2の天安門」は起こりうる。

 

第6は、世界的リセッションへの不安。

 

世界第1位の米国、第2位の中国。そしてユーロ圏も不明なのだから、可能性はないとは言えない。

しかし、日本は大丈夫、と自信を持って言える。

 

  1. 貿易依存度が低い
  2. 内需のリベンジ需要の強さ
  3. インバウンド
  4. 円安

 

などなどがあり、2023年前半の日本経済の世界に対する相対的優位性は大きい。(何なら次回に詳しく書きます)

 

表「2021年の貿易依存度」

国名 順位 貿易度/GDP(単位:%)
香港 1 363.6
日本 181 29.3
米国 195 19.9
中国 165 33.9
ドイツ 61 71.1
ロシア 135 45.1
スイス 35 92.0
韓国 69 68.1
世界計   44.8

 

最後に、注目銘柄を。(推奨ではありません。念のため。投資はあく迄も自己責任で。)

 

  1. ベトナム経済ファンド(各社みんな出しています)
  2. 外国人がここ2年で大幅に持ち株に手を挙げた銘柄を4つ

    ギフティ(4449)外国人持株比率32.1% 2年前比23.8%増

    メドビア(6095)29.1% 2年前比18.5%増

    SUMCO(3436)50.4% 2年前比15.7%増

    日本ペイント(4612)72.6% 2年前比13.9%増

では皆様、お元気で!寒くなりましたね、カゼなんかひかないように!

 

 

2022年12月 5日 (月)

映画「戦争と平和」と習近平新体制のもたらす明年前半の世界的リセッション。日本の相対的有利。 2022・12・4 (第1148回)

映画「戦争と平和」と習近平新体制のもたらす明年前半の世界的リセッション。日本の相対的有利。 2022・12・4 (第1148回)

 

キング・ヴィダー監督のこの大作は、ナターシャ役にオードリー・ヘップバーンを使ったことで、永久に残る作品になった。(これ以上の適役があるだろうか?)

 

20221205_01

 

IMFの世界経済見通しが発表されて2ヶ月。中国の見通しは過大で、2023年も3%台。場合によって2%台もありうる。

加えて米国は、第1・4半期に恐らくゼロかマイナス成長だろう。

 

20221205_02

 

利下げに4月に踏み切ったとしても、巨大な米国経済がプラス成長に明瞭に移行するには半年かかる。

 

世界経済第1位、第2位の大国が不況なのだから、リセッションにゆくかどうかはわからないが、景気がよくないことだけは断言していい。

 

米国の方はわかった。しかし中国の方が、悪い理由がわからない、ですって?これから説明するが、習近平の新体制そのものにある。

 

20221205_03

 

今回の新体制は今後さらに厳しくなると思われる米国主導の中国に対する締め付けに耐えるべく、「統制強化」になる。

 

すでに一部の農村では、「供鎖合作社」という改革解放前には中国全土にあった組織が再導入される。この地域の農民は、自分たちが作った作物をここに売らなければならない。

 

この体制は「国家による統一買付、統一販売」である。今後はさらに拡大する、と野村総研のリチャード・クーさんは云う。

クーさんは「中国の改革開放は農村から始まったが、今回も統制経済はまず農村から始まっている」としている。(ついでに云うが、新チャイナ・セブンには経済がわかる人はいない。みんな、習の子分である)

 

世界第1位の米国が明年少なくとも前半はリセッション。

第2位の中国も統制経済で成長率が落ちる。民間の自由度が制限され、投資意欲が減退するからだ。住宅価格の下落は下の表のとおり。

 

20221205_04

 

すでに原油価格が、ひところのバーレル130ドルが73ドル台にまで下がった。NYの商品ファンドの担当者は、下落分の2割は中国が原因としている。

 

商品アナリストの小管努さんは「12月4日に再減産が決定される可能性」について言及している。

OPECプラスの会合があり、価格低下を食い止めなければ、という声が高いためだ。

 

さて、日本。

 

以前から述べているとおり、インフレと騒いでいるがせいぜい3%の下の方、8%とか10%としている欧米とレベルが違う。

円安が企業収益にプラス。加えて海外での成長の必要が少なくなったことから、国内での設備投資が増加する。(初めは大企業、次いで中小企業)

 

20221205_05

 

金融緩和姿勢は当面続くし、インバウンド需要は(中国を除くが)増加する。コロナ時代に身をすくめていたリベンジ需要が再開する。

 

そうでなくても、IMFの表にあるとおり、日本は米国、ユーロ圏よりずっと高い。

 

株式市場での日本の興隆を暗示する動きは多い。外国人投資家が現物を多く買い始めた。

私が以前から述べている米国年金の動きが出始めているかもしれない。

 

またTOPIXが、因縁場をぬき、戻り高値に接近している。

 

さて、一番不足しているのは皆さまの、株への自信です。

さあ、元気を出して!!

 

« 2022年11月 | トップページ | 2023年1月 »