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2020年3月30日 (月)

映画「史上最大の作戦」と不況対策によるトランプ人気回復、それに日経平均暴落時でも株高になった我が国の銘柄12 2020・3・29(第1005回)

映画「史上最大の作戦」と不況対策によるトランプ人気回復、それに日経平均暴落時でも株高になった我が国の銘柄12 2020・3・29(第1005回)

 ご存知の戦争映画の代表作。当時の製作費43億円は普通の作品なら7,8本作れる巨費。エキストラの兵隊15万人、使用された地雷4万個、現実に使われた地雷40万個の十分の一。ノルマンディー上院作戦を描くには、これほどまでの物量投入が必要だったのだろう。

 

 原題は「いちばん長い日」。これは独の名将ロンメル元帥の名セリフだ。

 

 「上陸作戦の勝敗は24時間で決まる。わが軍にとっても連合軍にとっても、いちばん長い日になるだろう。」この名セリフを我が国の昭和20年8月15日の玉音放送に絡んでまとめたのが半藤一利さんの「日本のいちばん長い日」。2回も映画化されたので、ご存じの方も多いに違いない。

 

 歴史の示す通り、この作戦は成功した。しかし➀連合軍が上陸したノルマンディーをドイツ側は予想していなかった②切り札になる機甲師団はヒトラーがクスリを飲んで熟睡していたので誰も起こせず、投入出来なかった、などの失策であったことも、この映画は指摘している。そこいらが単なる戦争映画と一味、違うところだ。

 

 今回のコロナ・ショック対策を観ていて、この物量作戦を私は思い出した。

 

 3月26日米国上下両院が可決、成立したコロナウィルスに対処するための法案は2兆ドルとGDPの10%弱。

 

 2008年の金融危機後の対策が7000億ドル、2009年のオバマ政権時は8000億ドル。二つ合わせた対策費より多い。

 

 単に予算の大きさだけではない。3月23日、FRBは実質的に無制限に米国国債を買うことを表明。同日パウエル議長は「我々の弾丸はまだ十分にある」と述べた。

 

 それでも不十分、という声さえあるのは、今回のコロナ不況の深刻さを物語る。セントルイス連銀のプラード総裁によると「4~6月に失われる2兆5000億ドルの所得を穴埋めする強力な財政対策が必要」とした。これでもまだ、追加対策が必要とみていることになる。

 

 株式市場の方は、とりあえず、この対策を好感。下値からの戻りが20%を超え「弱気相場から過去最短で抜け出した。(WSJ3月27日)」。

 

 この日に発表された失業保険申請件数は328万件と過去最大の5倍近く。それでも株式市場は対策を好感した。

 

 これでトランプ大統領が11月の大統領選に点を稼いだのは、言うまでもない。

 

 最新のギャラップ調査によると、トランプ支持は49%、コロナウィルス対応に関しての支持は60%、調査時点では株価反発はまだ大したことがなく、メルトダウン状態にあった。それでもこの結果だ。米国エスタブリッシュメントによるバイデン候補支持は、一歩後退の感は否めない。

 

 アレレと思ったのは、リアル・クリア・ポリティクスによる調査。バイデン支持を行う中道派へ意見を持つ有権者。バイデン支持を行う中道派へ反発する有権者は実に45%、民主党支持でも36%と高い。これにトランプ支持固定層を含めると、米有権者の過半が再選支持となる。少なくともコロナ危機をトランプ氏は巧みに利用したことになる。もちろん、エスタブリッシュメントへの反感だけでは、投票へは結び付かないが。

 

 では、我が国はどうだろうか。3月28日、安倍首相は記者会見で「かつてない規模の経済対策を策定」すると述べた。

 

 従って現時点ではお手並み拝見、ということになるのだが、「目玉」となる個人、中小企業への給付金でも、リーマン当時のやり方を参考にすると、まあだめだ。

 

現金給付は、早くて5月末。地方自治体から申請書を国民に送付し、それに応じた人の本人確認を地方自治体が行い、銀行口座に振り込む。なんて煩雑な方法だろう。また、先行きについて、国民が自信をもてるような内容がない。

 

 やはり私が先週主張した通り、超長期国債(60年もの、建設又は投資国債)の日銀引き受けが必要だ。

 

 安倍首相はG7の電話会議で「思い切った経済対策」を主張した。財務官僚のケチおやじどもに付き合って、この国を大不況に導くことだけは、お止め頂きたい。

 

 株式市場の動向で、私を力づけた事実がある。あの大幅下落の3月中旬でも上昇した銘柄が12もあったことだ。以下銘柄を列記する。

 

 NTTドコモ(9437)、菱洋エレクトロ(8268)、アルフレッサホールデイング(2784)、クリエイトSDホールディングス(3148)、クスリのアオキホールデイングス(3549)、アイカ工業(4206)、あすか製薬(4514)、中外製薬(4519)、日本ペイントホールディングス84612)、ライオン(4912)、小林製薬(4967)、丸和運送機関(9090)。

 

 映画のセリフから。ノルマンディーに向かう艦内で上官が部下に言う「よく覚えておけ。百年先まで語り継がれる作戦に我々は参加しているんだ。怖いことに変わりはないが。」3月11,12,16、18の大幅下落時でも、勇気を奮って投資した人もいたんです。

 

 (ついでに。私は3月14日の講演会で「13日の1万7000円近辺でほぼ底が入った。3月下旬には乱高下するが、一部でいわれている1万4000円とかの安値は考える必要ない」と述べた。これが的中したことは、歴史が証明する。また私は戻りの目標として日経平均2万2000円と述べた。作戦としては、大幅に下落した中国関連などの突っ込み込み買い、とくに日経平均のブルETF。最後に技術革新が目立つある銘柄を注目した。)

2020年3月23日 (月)

映画「ナバロンの要塞」と主要国が総力を挙げて取り組むコロナ大不況 2020・3・21 (第1004回)

映画「ナバロンの要塞」と主要国が総力を挙げて取り組むコロナ大不況 2020・3・21 (第1004回)

 

 冒険映画のランキングを付けたらナンバーワンの傑作。スリルと娯楽性が同居したアリステア・マクリーンの原作を、リー・J・トンプスン監督がグレゴリー・ペック始めオールスターで映画化した。

 

 第二次大戦中の秘話。エーゲ海の島にドイツ軍の要塞があり、巨大な2門の大砲が設置されている。この破壊のため派遣される決死隊6人の物語だ。

 

 この作戦の立案者の将軍が言う。

「戦争には奇跡がつきものだ。狂気の中では人間は異常な能力を示すことがある。平和な時にそれを発揮できないのは残念だ」。

 

 現在の世界はコロナ肺炎への全面戦争と言っていいだろう。信用不安と不況突入ヘ、かなり対策は打たれている。しかし問題はこの病気の伝播範囲と期間なので、一般には不安感、恐怖感の方が強くなってしまう。

 

 ニューヨーク・タイムズ(3月13日)は、米疾病対策センター(CDC)による感染拡大の予測を発表。「最悪のケース」として、米国で1億6000万~2億1400万人が感染、うち20~170万人が死亡。しかも入院を必要とする感染者は240万~2100万人と予測。病床は92万5000床しかなく、地域社会で散発的に感染が発生する場合、1年以上こうした状況が続く、と予測した。

 

 世界ではどうだろうか。ハーバード大学公衆衛生大学院の研究チームが3月4日発表した報告書によると世界人口の2割から6割、14億から43億人が感染する可能性があると言っている。

 

 株式市場では、マスク、抗菌製品、検査キットなどの供給不足で関連企業群を物色する動きが活発だ。しかしマスク不足は明白だが、WHOが効果については解疑的な指摘したこともあり、メーカーは(一部を除いて)増産にはしり込みしているのが実情といわれる。前回の新型インフルエンザ流行時に増産したが、その後大量返品で苦しんだ体験からだろう。

 

 マスクよりも開発の時間や経費のかかる治療薬の方がもっと大変に違いない。ほかの病気の治療薬が転用されるケースが多くなる。また根本的な治療薬であるワクチンはなお販売に至る前の手続きなど、手間も時間もかかる。やはり完全に落ち着くには、1年以上、と見るのが常識だろう。

 

 なぜこんな分かり切ったくどくどと書いているか。それは新型ウィルスの感染が当初よりも、長期化し、大型化することが、次第に「見えて」きたことによる。全力を挙げての対策が必要だ。

 

 私の主張をまとめてみると、次の通りだ。

  1. ウイルスの完全封じ込めは1,2年かかる公算が、大きい。
  2. 日本でも世界でもコロナ不況により企業と家計の収入が激減しており、恐らく瞬間風速でGDPの成長率は大幅なダウンが必至。業界によっては数10%も売り上げが落ちている。大不況だ。
  3. 日本の場合、補正予算を使った通常の景気対策と現金給付で何とかしようとしている。しかしこれに加えて実質無利子、無担保融資を数十兆円規模で準備し、早急に企業や家計に支援するべきである。
  4. 日銀はイールド・カーブコントロール政策の採用で、資金供給が年80兆円ベースから、半分になっている。これを早急に原状復帰させないと、企業は内部留保を取り崩して、金融環境がタイトになり「悪い金利上昇」が発生する懸念がある。
  5. 財源が常に問題になる。財務省の悪宣伝のためである。IMFが2018年10月に発表した報告書「財政モニター」によると、公的バランスに関する指標では、日本はわずかながらマイナス。つまり「先進国中最大の借金額」というのはウソ。 
  6. 真の解決策は、建設(投資)国債の超長期国債を発行する。日銀と政府とのアコードが必要だが、日銀が全額引き受ける。

 

以上が固まれば、我が国はコロナ肺炎に断固とした財政政策を示したとみられる。特に近年の大型台風への対策が不十分だったことは、著しく外国人機関投資家の対日投資の足を引っ張った。

 

世界がデフレに突入しかけ出ている折も折。日本が、少子化、老齢化などの先進国として、財源を確保することはよき先例となるだろう。米国も超長期債発行を検討していると聞く。チャンスではないか。

 

戦前の高橋財政の例から不安を言う向きもあろう。しかし、戦前の軍部のような圧力団体は、我が国では現在どこにも存在しない。従って、私の主張は3年かせいぜい5年の期間限定の措置にすれば良い。国土強靭化計画に合わせれば、名目として十分だ。

 

 映画のセリフから。主役のマロリー大尉は目的が見事に達成された時に言う。「実はこんなうまく行くとは思っていなかった」。断行するには勇気が必要。勇断を望みたい。

2020年3月16日 (月)

映画「八十日間世界一周」とコロナショックによって引き起こされたバイデン大統領の可能性 2020・3・15(第1003回)

映画「八十日間世界一周」とコロナショックによって引き起こされたバイデン大統領の可能性 2020・3・15(第1003回)

 

 ジュール・ヴェルヌの代表作。私は小説を読んでいたので、1958年におこなわれた映画化は大いに楽しんで観た。お話が単純なので、カメオ出演で当時の大スターが続々と登場した。今でも名のあるスターはフランク・シナトラ、マレーネ・ディートリッヒくらいかな。

 

 舞台は1872年のロンドン。主人公フォッグ氏(デヴィッド・ニヴン)は80日で世界一周できるかどうかを賭けて下男のメキシコ人を連れて旅に出る。

 

 結末はどんでん返し。80日目に到着できず、落胆していた主人公に下男が新聞を買ったら、実は、間に合っていた。東に向けて世界旅行を出発していたので太陽に先立って進んでいた。経度をひとつ超えるごとに4分づつ時間が短縮していった。地球の周囲には経度が360あるから、4分を360倍すると24時間、つまり一日儲けたわけである。

 

 東と西でいうと時差が東の方が早い。これは実はコロナ肺炎も同じ。発生元の中国、お隣韓国、日本はすでに連日、とは言わないが新規の感染者数は回復者を含めると減少ペース。しかし西のイタリアなど欧州と米国はただいま急増中。また今回安倍首相の推進中のコロナ肺炎対策は、トランプ大統領が始めようとしている政策の先行。どうも東進西遅だ。

 

 ところで、自慢に聞こえたら本意ではないが、ここ何回か、私の予想が的中していることに注目して頂きたい。

 

  「何でもあり」の予想通り、トランプ政権は所得税減税(文字通りなら何10兆円分!)まで持出した。

 

今回のテーマはバイデン大統領出現の可能性である。前回私はこう書いた。

 

 「(私の推測だが)2月中旬にトランプ大統領は全米での防疫体制への必要性を進言されていたにもかかわらず、「米国は安全だ」というヘンな自信をもとに進言を退けて、防疫体制を敷かなかった。この失策を重視した米国の真の指導者層が決意し、中道派のバイデン氏を次のトップにするべく動き、それが゛スーパー・チューズデーにつながる。」(3月1日記)

 

 この予想通りに現状では展開している。

 

 リアル・クリア・ポリティックスの資料によればバイデン氏の支持率は2月18日16・5%、3月3日に27・3%、3月9日に51・3%と最高水準。

 

 プティエッジ氏、クロプチャー氏、オルーク氏、ブルームバーグ氏など予備選からの撤退者は(恐らく前記した真の米国の指導者層の指示と思うが)バイデン支持で一本化した。3月8日には穏健左派だったマラ・ハリス氏もバイデン支持。

 

 最新号のニューズウイーク3月17日号によると、3月3日のスーパー・チューズデー前までは確かにサンダース候補に追い風が吹いていた。

 

 しかし、サウスカロライナ選出の民主党大物ジェームズ・クライバーン下院議員

が、直前になってバイデン支持を表明。黒人有権者から絶大な支持を持つ同議員の指示で、勢いはバイデン氏に向かう。

 

 またCBSの番組でのインタビューでサンダース氏は失言を繰り返し、有権者たちから見限られた。バイデン氏が民主党の候補になる可能性は、いまや80%とされている。

 

 3月10日の6州の予備選では、さらにバイデン氏が有利になっている。ミシガン、ミシシッピ、ミズーリなど4州で勝利し、獲得した代議員数は152人増の787人。これに対しサンダース氏は89人増の647人で、短期間で差は拡大している。

 

 35日のスーパーチューズデー直後はバイデン氏53人に対し、サンダース氏506人で大きな差ではなかったが、やはり前記した米国の真の支配者層の意図があるのだろう。

 

 では、トランプ大統領の方はどうだろうか。

 

 主要な世論調査結果を集約しているファイブ・サーティエィトによると、36日時点でトランプ大統領の支持率は42・8%で、不支持率は53・0%。同調査による歴代大統領の騰落から割り出した再選に必要な支持率49%を大きく下回る。

 

 トランプ大統領の望みはサンダース候補がバイデン支持を行う可能性が現状では少ないことだ。つまり、民主党は一本化できない。

 

 サンダース氏は米国政治学でいう「PURIST候補」、つまり、イデオロギーに忠実は原理主義者。したがって、トランプ一本の共和党に対し分裂した民主党候補は勝てない。これが、トランプ有利の論拠だった。

 

 ただ、今回は違うようだ。テキサス州やカリフォルニア州の調査では、「大統領を打ち負かせる候補」を「自分と同じ見方の候補」より上位に置く有権者が57%に上った。現実主義の有権者をサンダース氏も無視できないかもしれない。

 

 しかも、今回のコロナ肺炎問題が大統領選の攪乱要因になった。前記したように、新型ウイルスの感染力を過少評価し「民主党の陰謀」としていたトランプ大統領の発言が、今となっては市民の不安と怒りと助長。そのターゲットは、もちろん大統領に向く。特に12日のコロナ対策で、欧州(除く英国)との旅客締め出しなど、幼稚な対策で不安を招いた。

 

 34日には、米国でも豪華客船が、サンフランシスコで寄港を拒否され立ち往生する事態が発生した。2月に日本のクルーズ船対応を冷笑していた米国世論だが、トランプ政権の対コロナ防疫体制が後半後手に回っている、との見方が拡大しつつあるようだ。

 先週このブログで「何でもあり」だと強調したが、やはり巨額減税で株高を狙っている。(実現性は低いが)

 

 日本の方はアメリカのようにはゆかない。それはFRBと日銀の差、米国政府と日本政府の景気刺激策への余力の差(逆に言うと米・日の財務省の景気下支え意欲への差)があるので、なかなか上昇には向かわないだろう。

 

 忘れるところだった。6月の最高裁判決もトランプ氏にとっては重荷なことは変わりない。本当にシロなら、この情勢では自発的に財務申告して苦境を脱出する。出来なければ、やはり判決次第で、トランプ→ペンスの政変があるに違いない。バイデン大統領の可能性は、一段と高まる。

 

 さて、結論に入る。フィナンシャル・タイムズ310日付で、著名投資家のレイ・ダリオ氏が「コロナ問題は天災であり、もてる手段総動員を」と述べている。世界中で資金繰り支給や税制、援助などあらゆる手段を駆使して、世界大不況突入を防ぐだろう。

 

 2年も3年も、という超悲観説が横行しているが、モデルモ社のコロナウイルスワクチンが4月から臨床実験。次に数千人の参加者に2番目の治療を開始。6ないし8か月後に米国、中国で行う(ウォール・ストリート・ジャーナル225日付)

 

 となれば年内いっぱいで見通しが決まる。全世界注視の4月の臨床実験の情報は必死になってマスコミが追及するだろうからモデルモ社(MRNA)の株価を見ていれば、感染の拡大防止のメドが立ち、そこからリバウンド相場が始まる。

 

 もちろん不況対策が実施されているだろうから、むしろバブルを心配しなくてはならない事態になるかもしれないくらいだ。

 

 NYでダウ平均が大幅に下落しているのに10年物米国国債の金利が上昇している。機関投資家は、リスクオフを次第に回避し始めている可能性がある。

 

 映画の終わり。フォッグ氏がメキシコ人の下男と、インドで救出した姫(シャーリー・マクレーン)の三人で、ロンドンの伝統あるクラブにかけの勝利を告げに行く。もちろん女人禁制、下男なんて飛んでもない。そこで会員の一人が言う。「これで世界は終わりだ!」。コロナウィルス新型肺炎で世の中が終わりになるわけではない。やはり何回もわたくしが主張している通り、「災害に売りなし」だ。

 

(この騒動のさなかにドイツ銀行がcoco債のデフォルトを決めた。メルケル首相が任期の関係で、この問題に決着をつけることを決意したのかもしれない。ただ、13日のドイツをふくむ欧州株が堅調だったのは、準備が十分だったことを暗示する。噂で売り、事実で買う、のかもしれない。)

2020年3月 9日 (月)

映画「コンティジョン」と乱高下するNYダウの意味と日本株 2020・3・8 (第1002回)

映画「コンティジョン」と乱高下するNYダウの意味と日本株2020・3・8 (第1002回)

 

 「コンティジョン」とは接触感染のこと。連日TVはまあ、あきもせずコロナ肺炎がらみのニュースを報じている。しかし、TV番組の報道は不公平、片手落ちだ。

 最近は、連日、感染者数は減少し、回復者数は増大、ついに日によっては実質的な感染者数は減少に転じた。これを報じない。

 

 まず国外。感染者数は3月5日現在9万2100人、前日比2204人、増加回復者数は2955人増加。つまり751人、感染者数は減少している。

 

 次は国内。まずTVでダイヤモンド・プリンセス号の感染者をプラスしてやれ1000人になったなどと、アホみたいなことを言っている。海外では「その他」として705人は日本から除外しているのに。

 

 まあ余談は別として3月7日現在、感染者数は420人。前日比71人増。回復者数は69人だから2人増加。その前日は1人減少だった。増加ペースは明らかに落ちている。

 

 ここらで不満は置いておこう。しかしついでだから、お隣の韓国の報道を紹介しよう。

 

 朝鮮日報は「3月2日600人 3月3日516人 3月4日438人 3月5日322人、3月6日274人」(5日のみ聯合ニュース)。6767人の感染者はいるが、一日当たりの感染者数は明瞭に減少、しかもキチンと報道している。(ただし欧州と米国、アフリカは今後の問題と考えるので、現実にはこれから騒ぎは拡大する可能性は大きいが。)

 

 映画の紹介に入る。香港に立ち寄った女性経営者が食事の後、中国人のコックと握手。その中国人がつい5分前にコウモリを料理して手を洗わずに握手。そこから、この伝染病の世界的流行(パンデミック)が始まる。パニックによる買い占め、ワクチン割り当ての争奪戦、それにフェイクニュースを流して一儲けをたくらむ不届き者も現れた。

 

 今回はセリフは省くが「恐怖はウィルスより早く伝播する」という宣伝キャッチコピーがテーマを良く示している。

 

では今回のコロナ騒動をどう評価したらいいのか。

 

 あのビル・ケイツ氏が「100年に一度」と表現しパンデミックは「すでに発生している」とまで述べた。

 

 一方、経済面ではどうか。債券王ジェフリー・ガンドラック氏が「2週間のうちにさらにFRBは政策金利の目標を0・5%引き下げるべき」とした。それほど実体経済への悪影響が大きいと予測しているのだろう。

 

現に、10年物米国国債の金利は史上最低の0・7%台まで達した。市場はパンデミックを織り込みかけているように見える。

 

 弱気の方の見通しが正しいのかもしれない。ただいま欧州を巡回中のパルナンス・インベストメントの宮島忠直ストラテジストはこう報告している。(スイス大手年金幹部が、コロナウィルス検体ツールで最大のロシュ社から入手している情報。これだけ高度な情報を入手している人が第4位とは何事!と思う)。

 

 イタリアの防疫体制は脆弱。米国はすでに感染者数がエボラを上回っている。一日にダウ平均は1000ドル規模で乱高下する市場は空前の事態。値幅制限やカラ売り規制もありうる。

 対日では入国制限や、カリフォルニア州の工場地帯での都市封鎖があれば打撃は大きい。

 

 (ここからは私の推測だが、)2月中旬に大統領に全米での貿易体制の必要性が進言されていたにかかわらず、トランプは「米国は安全だ」とのヘンな自信をもとに進言を退けた。この失策を重視した米国の真の指導者層が、そこで決意し、中道派のバイデンを次のトップにするべく動き、それがスーパーチューズディの結果につながったのではないか。

 

 勿論、バーニー・サンダースの社会主義への反発もあっただろうが。

 

 さて、この事態にあたって、現状をどう把握すべきか。

 

 SMBC日興証券の株式調査部チーフエコノミスト牧野潤一さんが実にいいタイミングで、ケーススタディを行っている。

 

 牧野さんは二つのケースを想定している。

  1. 感染拡大の期間が2月から4月の三か月間で、GDPは0・9%ダウンし、企業収益は14・9%減益。
  2. 感染期間が2月から7月の6か月間でオリンピック中止(私は延期とみるが、目先の結果は同じ)。GDPは1・4%減少し、企業収益は24・4%減益。

 

牧野さんは日経平均の最近の高値の1月20日から16・8%下落し、前記のケース①を織り込んだ、と見ておられる。問題は②が発生するか、どうか、だろう。

 

 私が「災害に売りなし」として、ケース①を見ていることはご存じと思う。簡単に方針転換しないつもりだったが、実は米国の著名シンクタンクのブルッキングス研究所が3月2日に発表した「COVID-19がマクロ経済に与える影響―七つのシナリオ」を見て、やや自信喪失したのが正直なところだ。

 

この報告の七つのシナリオのうち、最も楽観的なもの(最善)でも世界のGDPは2・4兆ドル、最悪で9兆ドル失われる。

 

 死者の方の予測も、最善で1500万人(!),最悪で6800万人死亡。米国は23万6000人、最悪で106万人。日本は最善12万7000人、最悪で57万人。私の予想とはケタが三つ違うので、びっくりした。

 

 恐らくこの報告は1918年から19年に発生した「スペイン風邪」の再発を予想しているのだろう。当時世界が人口は20億人弱だったが、その大半が感染し、3000万人以上が死亡した。

 

 2008年、世界銀行は「スペイン風邪並みのパンデミックが発生した場合」を予想した。

 経済損失は3兆ドルを超え、世界のGDPは4・8%低下する、という結論。リーマンショックの折は世界のGDPの成長率低下は0・6%だったから、このブルッキングス 研の予想通りだったら、やはり大変なことになる。

 

 まあ金融危機が絡んだリーマン・ショックは別格として、一応下落率、下落幅をまとめてみた。(日経平均。三井住友アセット市川雅浩氏)

  1. リーマン・ ショック。2008年6月6日から2009年3月10日、下落率51・3%、下落幅7434円。
  2. チャイナ・ショック 2015年6月24日から2016年2月12日 27・3% 5114円
  3. ギリシャ危機(欧州債務危機) 2010年4月5日から2010年8月31日 22・2% 2515円

 

今回のコロナショックはどうだろう。

 前記したが1月20日の2万4083円から3月6日まで、16・0%、3334円。三つの前例よりは、小さい。それだけに世界中がパンデミック化する危険性は、私には日本株式市場がまだ完全には織り込んでいないと考える。

 

 中国、韓国、日本は実質感染者数が減少しても、やはり米国の感染者が今後急増するだろう。そこでWHOから「パンデミック宣言」が出るのは時間の問題(経済産業研究所上席研究員藤和彦氏)が出るに違いない。市場はやはりヘッジファンド主導による政策催促で下げ相場を演じて見せるだろう。

 

 もちろんFRBはガンドラック氏が主張する通り利下げするだろう。ECBもラガルド体制下で金融緩和。トランプ政権は減税を発表し、株価テコ入れを図れるに違いない。

  

 問題は日銀と安倍政権だろう。マイナス金利の深堀で済むかどうか。私は政府とアコードを結んで、長期建設国債(投資国債)の日銀引き受けがベストと私は考える。出来なければ減税だろう。これを採用しなれば、大不況。東京五輪は1年延期(経済的には2020~2021年前半は中止も延期も変わりない)も打撃になる。

 

 結論を出そう。まずNYダウは、コンピュータ運用もあり、高値波乱。やはりリスクオフの姿勢から見て、上にはゆくまい。

 

 日本の方はNYにつれ安して、すでにほぼ底値、せいぜいダメ押しで瞬間的に2万円を割るくらいか。NYの方は83億ドルもコロナ対策に出資するので、米国内での感染者数増加との綱引きとなるだろう。下値が出ればまたトランプ政権は市場が好感しそうな材料を出して、当面の下値を限定的なものにするだろう。先週も申し上げたが、要するに、何でもあり、の世界である。

 

 投資作戦としては、コロナ騒動に関係の少ない5G,テレワーク関連がいいと考える。本格的な買い作戦にはほど遠い。   

2020年3月 2日 (月)

映画「駅馬車」とセリング・クライマックスの接近と、コロナウィルス ワクチン 2020・3・1(第1001回)

映画「駅馬車」とセリング・クライマックスの接近と、コロナウィルス ワクチン 2020・3・1(第1001回)

 

 ここ数週間、私は家の中に閉じ込められ、新作を見ることは不可能。幸い自宅にはヤマほど好きな古典作品があるので、ブログのテーマをあれこれ考えながら、DVDを選ぶのは楽しい。

 

 久しぶりにこの西部劇を観たが、新鮮な驚きと快感は変わらない。

荒野を疾走する駅馬車。追うインディアン。乗り合わせた乗客たちの織り成す人間模様。最後には1対3の決闘シーンへ。ドラマとしてもエンターティンメントとしても上乗の出来栄え。

 

 私は確か11歳の時見たが、救援の騎馬隊が、弾丸を打ち尽くして絶体絶命の駅馬車を助けに来るとき、嵐のように映画館の中で拍手が巻き起こった。70年以上たった今でも、あれは忘れられない。

 

 コロナウィルス・ショックで朝から晩まで身動きが取れず、投資家は株を売って債券を買うリスクオフ。世界の株式時価総額は1兆8000億ドルも減少した。

 

 当然、テクニカル指標は悪化する。宮田直彦さんが期待していた12か月と24か月の移動平均のゴールデンクロスは消滅。トレンド分析でも三井住友アセットの市川雅浩さんによると、2012年からの上昇トレンドは「下抜けした」。中期的には、さもありなん。次のトレンドまで時間がかかるだろう。

 

 しかし、ごく目先は、底入れから反発に入りかけている。

 

 大和の木野内栄治さんは、NYダウの連続下落記録は8日間で、歴史的に見て6回しかないという。すでに2月28日で7連日下落。月曜で下げれば終わり、だそうだ。なるほど。

 

 木野内さんはこのほか、騰落レシオが50%台で経験的にも底値圏だし、先物売りにもセリング・クライマックスの兆しあり、と指摘している。

 

 私もそう思う。ヘッジファンドの運用担当者たちの下値目標だった日経平均2万1000円近辺に達したこともあり、今週月曜が安ければ、火曜日の前場でも買いは報いられると見る。

 

 もちろん、あくまでも急落の後のリバウンドであり、下げの半分も戻せばまあ万歳だろう。それは次の三大難問が控えているからだ。

 

 第一は言うまでもナム新型コロナウイルス肺炎のパンデミック化不安。世界不況につながる。

 

 第二は米国大統領選。バーニー・サンダースの社会主義政策への不安。それに私がこのコラムに指摘しているトランプ大統領の納税申告の公表問題。

 

 第三は日本。オリンピックが開催できるのか、どうか。ダメなら年後半にかけ、先ごろの消費税増税のツケ回しもあり、大不況突入必至となる。

 

 どれも答えの難しい、文字通り、先行き不透明のムードを掻き立てる不安材料ばかり。

 

 ただし、実は三つとも、意外な解決策がありそうだ。少なくとも、二つは。

 

 説明しよう。

 

 このところ米ナスダック市場で急騰を続けているモデルナ(チッカーMRNA)である。コロナウイルス向けワクチンの開発を(通常1年以上)成功。全米国立衛生研に納入した。

 

 一方、日本では富山大・富士フィルムのフアビビラビル、中国ではレムデシビル。ただこれらは患者の免疫を補完するもので、ワクチンの効果にはかなわない。やはりモデルナがコロナ関連銘柄ではNO・1だろう。(この項はスフィンクス藻谷俊介さんのコメント)。先行きはまず、大丈夫。

 

 第二の方はわからない。最近になってトランプ大統領は第1000回でも書いたルース・ギンスバーグ最高裁判事を含めた二人のリベラル派最高裁判事への批判を始めた。自信がないのかなあ。

 

 もうひとつ。バーニー・サンダース上院議員人気も心配だ。18歳から26歳までの若い投票者たちが政治に目覚め始めたのか。2018年の中間選挙では14年の20%から36%に急伸。全体の42%→53%への40年ぶりの高水準を支えた。この層が大統領選にどう影響するか。

 

 第三の東京五輪。IOCの内々の依頼で盛夏から開催時期の後ずらし(9月または10月)を検討していた。これを私はさっそくこのブログにも書いたし、一部には電話までした。

 

 しかし、残念だが、結局はダメだった。五輪の大スポンサーの米国TV局がOKしなかった。勿論ロンドン説はIOCがダメとみているからいいが、あとは1年ずらし、しかない。恐らく、これだろう。

 

 それでも消費税の打撃もあり、2021年に東京五輪があっても本年後半と明年前半はどうなるのか。ここぞとばかり、大不況を言う向きが出ることは目に見えている。

 

 しかし、そうならないと、私は、確信する。

 

 理由は次の通り。

 

 まず、コロナウィルス肺炎が1年も2年も続くはずがない。前記のモデルナ社のワクチンを想起してほしい。

 

 世界不況も、まず起こらない。どの国の為政者も同じだが、谷底に向かって走る自動車をそのまま放置するバカはいない。金融緩和、財政出動、何でもあり、の世界である。特に中国はなりふり構わずやるだろう。

 

 また、いったん止めた旅行なども、安心となれば手元に資金がある向きは再開するし、街中に出なかった人々は、鬱屈を晴らすだろう。SARSの時には、世界のGDP成長率はこのウさ晴らし需要で0・6%上乗せしたことをお忘れなく。

 

 前々も申し上げたが、やはり「災害に売りなし」なのである。

 

 映画のセリフから。アパッチ襲撃の危険のある地帯へ駅馬車を進めるべきかどうかの議論の中でトマス・ミッチェル演じる酔いどれ医師が言う。

 

 「わしは哲学者であり、運命論者でもある。危険と死はどこにもある。矢に当たらなくてもどうせ酒で死ぬさ」。私もそう思う。信長じゃないが、死ぬるは一定。生きることを充実させるのが第一だ。

 

 セリング・クライマックスの後、一定期間の調整期を経て再び上昇トレンドが始まるだろう。その時期、主題、妨害因子などを考えると、ワクワクしてしまう。私はそうした予想が好きでこの商売を選び、84歳まで生きている。前回はジム・オニールのメールに助けられたが、今回はどうだろうか。楽しみ、楽しみ。

 

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