今井澂プロフィール

講演・出演など

お問合せ

週刊ボイスメッセージサービス『今井澂の相場ウラ読み』

広告


最近のコラム

時事総合研究所委託編集 コメントライナー

« 2019年8月 | トップページ | 2019年10月 »

2019年9月30日 (月)

映画「記憶にございません!」と近く発生する株価急落の材料2019・9・29(第983回)

映画「記憶にございません!」と近く発生する株価急落の材料2019・9・29(第983回)

 

 三谷幸喜監督の最新作で、大ヒット中。主人公は悪徳政治家の主将黒田

 (中井貴一)。あまりの非道で支持率20%だが、なお地位にしがみついている。ついに投石され、その一つが頭に命中、全く記憶を失ってしまう。このことはごく少数のものしか知らず、政治のド素人が首相としての毎日を送る。

 

 一方、愛想を尽かせた夫人は夫の元から逃げ出し、欧州に行く準備を進め、まだ首相のハンサムな秘書(ディーン・フジオカ)ともデキている。首相の方は野党第三党の女性党首(吉田羊)とクサい仲。お色気シーンはないが、この色がらみが映画の終局につながってくる。

 

 石ころひとつで、昔はともかく近い過去をすべての記憶を喪失した主人公と同じに、株式市場ではNYも東京も、このまま戻り高値に進めばいいが、寸前でUターンすればやはりドカンになる。ほんの少しの材料で。

 

 もちろん、私はそのドカンの後はカンカンの強気。詳しくは後述いたします。

では、そうしたテールリスクはあるが、もちろん!すぐに私の頭の中をよぎったリスクを列挙してみよう。

  • NY市場での最近の異変。まず逆イールド、次にレポ金利の急騰とこれに伴うコマーシャルペーパ市場の発行量急減などなど。すべてリーマン前にもあった現象。誰もが考えるのは、FRBが金利引き下げという弾ガンを打ち尽くした後の状況だ。やはり財政出動、財源は超長期債になることも目に見えている。
  • EUでもECB新総裁のクリステイーヌ・ラガルド女史が「越権行為であっても危機脱出に必要ならば(これまでもそうだが)あらゆる政策を発動する」と述べた。中心のドイツ経済は46月期GDPがマイナス成長しかも79月期もマイナスと予測されている。まさに危機が切迫しているという認識だ。恐らくドイツ経済の危機にプラスして、ドイツ銀行の処理も入るかも。
  • 中国では逆に、危機への認識が誤っていることが問題だろう。「持久戦」(毛沢東著)を大々的に配布したのがその証拠だ。トランプ旋風が一時的と考えるのが誤りなのは誰の目にも明らかなのに。ペンス演説にある通り、中国の国家情報法に乗って、たとえばファーウエィは情報を中国政府に提供しなければならない。この法律を改正する気がなければ、米中覇権戦争は止まない。
  • 新興国にも問題が多い。ドル建ての借り入れが多いのが共通しており、ドル価値の上昇は負担が重い。特に輸出が急減している韓国(1月から9月中旬までの前年同期比マイナス22%)は、すでに外貨準備に不安がある。

また香港は101日の中国の建国70周年を過ぎると、デモ制裁が激しく行われ、第二の天安門事件の可能性がある。もちろん人命が失われると、香港への金融制裁が行われる。中国の金融取引の67割は香港経由だから、中国の経済破綻につながる。

  • 中東でも、先日のドローン攻撃が再現されるリスク、またサウジ皇太子の失脚などドカンの材料は十分にある。原油価格の上昇が発生すれば打撃が大きい。

 

さて、これだけドカンの材料の候補を挙げたが、みながみな、中期的。来週とか来月という時点の予想とは結び付かない。

 

 下げ相場については、私が一目も二目も置いているテクニカルアナリスト伊東秀広さんは「急変が近い」と警告を始めた。NYダウも目先平均も波動で見て105日の週から下がるという内容。

 

 しばしばこのブログに登場していただいている箱田啓一さんは、最新のレポートで「1034日がピークで、1024日が底値(買い場)になる」と明確に予測しておられる。

 

 

その後は?もう一度揺り戻しというかダメ押しはあり得るが、私は積極財政政策採用を条件に、3万円への挑戦が始まると観ています。私は基本的にはカンカンの強気です。

 

 映画の終盤、政敵が記憶喪失の事実を嗅ぎつけ、閣僚の写真を見せて、姓名と役職を言えと迫る。意外なことに主人公はピタリと回答。秘書が後で聞くと、実は記憶が戻っていた。

 

 私もこれと同じ。カンカンの強気は変わらないが、10月の下げを前提としているので、この下げが完了したら、主人公じゃないけど、元の強気の私に戻ります。どうぞご心配なく。

 

 ただひとつの心配はリチャード・クーさんが言う。「on-again off-again」つまりちょっと1年位、財投で予算増加をしてすぐやめてしまうのが一番ダメ。

 

麻生副首相のフトコロ刀として知られる或る元高官に、この不安を聞いたら「あの方は元々積極財政論者です」との返事だった。まあ老婆心はやめておこうかな。

2019年9月24日 (火)

映画「素晴らしき哉、人生!」と金融市場でのリーマンを思わせる異変(第981回)2019・9・23

映画「素晴らしき哉、人生!」と金融市場でのリーマンを思わせる異変(第981回)2019・9・23

 私は先週、岐阜の大手会計事務所での講演会に招かれ、その前夜に夫婦で長良川の鵜飼いを見物させていただいた。11人の招待客の中に岐阜県の有力金融機関のトップが「私はイマイ先生のブログの愛読者で、次の映画にこれを使ってください」と、この作品のDVDをプレゼントしていただいた。

 

 幸い、というか、このブログ「まだまだ続くお愉しみ」にこの「素晴らしき哉、人生!」は取り上げたことがない。有難くDVDを観て、この原稿を書いている。

 

 フランク・キャプラ監督、ジェームス・スチュアート主演のこの名作は、毎年クリスマスにTVで放映される。いわばご家庭全員が一緒に見る作品である。

 

 時はクリスマス・イブ。主人公は保険金を工面するため、自殺を図る。これを止めたのが天使見習いで、主人公の周囲の祈りが天国まで届き、本物の天使になるために工夫を凝らす。

 

 まず主人公の人生を振り返るが、たしかに不運続き。しかも叔父が8000ドルを紛失、小さな町で金融組合を経営している主人公は刑務所行きになりそうな現実。ただ町の人々に、取り付け騒ぎの時自腹を切って資金を供給、救った経験があった。

 

「生まれなければよかった」という主人公に「それではお前の望み通り」と、ひどく荒れた悲惨な街の人々を見せる。主人公はもう一度生きなおすことを選ぶ。

 

 妻の呼びかけで街の人々や友人が寄付して8000ドルの穴を埋めてくれる。その寄付金が入った箱の中に一枚のメッセージ「友があるものは敗残者ではない」とあった。本物の天使に昇格した主人公の命の恩人が書いたもの。

 

 大不況で金融機関への信用が低下し、公的資金で救済したことはまだ記憶に新しい。これはベイルアウトと呼ばれるが、EU圏内ではベイルインとして、預金者や株主などが資金を補填するルールになっている。

 

 あと1年に迫った独メルケル首相が、処理を任されているドイツ銀行。コメルツとの合併も成立できず、仮にベィルインするとなれば、噂ではドイツのGDPの何倍かのデリバティブの損失をどう処理するのか。恐らく任期の最終段階でメルケル首相は何らかの決定するのだろう。株価の方は破産を織り込みかけているのだが、イザとなれば、リーマンどころの騒ぎではあるまい。

 

 恐ろしい話で申し訳ないが、実は916日以降、私が観るところ大異変が発生している。

 

 米国の銀行間の貸し借りを行う短期金融市場、つまりレポ市場の金利が急騰したのである。゙

 

 数字で示すと、19日の2%から三日連騰してなんと10%に、その後FRBが四日連続で資金供給したが、6%の高水準に止まっている。FRBのレポ市場への介入は実はリーマン危機の2008年以来のことだ。

 

 このレポ市場の金利上昇は、米国の銀行同士での相互の信用度が落ちていることを示す。

 

 また米国政府の国債発行が急増し、市場の資金不足が発生していることも示している。恐らくFRBは資金供給を継続せざるを得ないだろう。

 

 というのは、レポ金利の上昇はコマーシャルペーパー金利の上昇につながり、発行量が急減。市場では、今度は低格付け企業への融資「レバレッジド・ローン」からの資金引き上げが続いている。

  

 問題はレバレッジド・ローンに、借り手に甘い「コベナンツ・ライト」が、かつては一割だったのに現在は八割を占めていることだ。借り手の業績が悪化したときに即時返済を求める条項が甘い。

 

 これらはまだ、異変が起きた程度で軽く片付けられているが、私には大地震の前の地鳴りが聞こえる。FRBとECBは恐らく必死になって「予防は利下げ」や追加的量的緩和を続けるだろう。

 

 自国の通貨を切り下げにつながるこれらの金融政策は、もちろん信用不安の防止という大義名分はある。しかし同時に私のかねてから主張している過剰流動性の影響が発生。とくに日本は日銀の打つ手が限られている現在、「日本株売りと円買い」の投機が幅を利かせる危険がある。いや、可能性が大きい。やはり現在の株価上昇には限度があり、せいぜいあと日経市場で1500ポイントが精一杯だろう。

 

 映画のセリフから。「一人の人間の人生は、大勢の人生に影響を与えているんだよ」。これは天使が主人公に言ったセリフ。これで自分の人生の素晴らしさに気付き「もう一度人生生きなおしたい」と叫ぶ。その前に天使は主人公のいない人生を見せ、主人公の存在の重要性を示す。いま米国はトランプ再選のために金融政策を転換した。ECBも恐らく世界大不況とドイツ銀行のショックの予防のため金融緩和を実施しようとしている。さて、日銀はどうするか。

 

 私には強力な財政出動が必要だし、その財源としては、建設国債の超長期物の発行しかないと考える。早く、事態の深刻さを政府特に財務省が認識してほしい。そう心から願っている。

2019年9月17日 (火)

映画「オール・ザット・ジャズ」と市場が織り込み始めた意外な近未来(第981回)2019・9・16

映画「オール・ザット・ジャズ」と市場が織り込み始めた意外な近未来(第981回)2019・9・16

 

 BSで久しぶりに見たらなんと3回も!繰り返して観た理由は、圧倒的なダンスシーン、それにロイ・シャイダーの主役がなんとも凄かったからだ。もうひとつ、監督のボブ・フォッシーが自分の死期が近いのを悟った上の作品なので、自らの死をドラマ化した。84歳の私としては、これが身近に感じられたからだ。

 

 舞台はブロードウエイ。ミュージカルを準備中の舞台監督ジョー・ギデオン(ロイ・シャイダー)は酒と女とヘビースモーキング、それに振り付けで超繁忙の毎日。過労のため狭心症の発作を起こし、生死の境をさまよう。無意識の中で、ジョーは自分の人生を回顧する。目前に美しい天使(同時に死の象徴)が現れる。この役のジェシカ・ラングがまことに美しい。私は最高のミュージカル映画と評価している。1980年の古い作品だが、カンヌ映画祭金獅子賞、アカデミー賞7部門獲得の傑作だ。

 

 面白かったのは、ジョーが編集を担当しているトークショーの映画である。キューブラー・ロスの死への受容。5段階を述べるところだ。死の宣告に対し、まず怒り、次に拒否、そして譲歩、さらに絶望、最後に受容となる。ご本人はこのコース通りになかなかゆかないのだが。

 

 相場もこの通りに、或る順序を重ねるものだが、これはルールとは言わぬまでも経験則と言っていい。株式の場合「ウワサで買って、現実化したら売る」とか、その逆もある。いまの状況に合致しているので、古い映画だし大ヒットした作品ではないが今回取り上げた。実は「記憶にございません!」と「人間失格・太宰治と三人の女たち」の2本を観て書くつもりだったが、時間が全くないので、来週以降に。

 

 まず市場の動きから。NYダウは新値に近いが主要銀行株は815日に安値を付けてから急速に上昇。ダウの上昇ペースの倍以上。

 第二は10年物国債の利回りは13日には1・89%と、93日の142%から急上昇し、2年物国債との逆イールドも解消し、利回り格差は0・47%に拡大。利ザヤ改善への期待で、前述の米銀株の急上昇につながった。

 

 日本の方も同じ。10年もの債利回りは8月のマイナス024%からマイナス016%にマイナス幅は縮小。つれて銀行株も上昇している。例えば三井住友フィナンシャルホールディングス(8316)は826日の3380円から3800円近くまで、三菱UFJフィナンシャルグループ(8306)はやはり26日の490円から、580円台まで上昇。キズが付いたはずのスルガ銀行(8358)は813日の353円から453円になっている。問題を起こしているゆうちょ銀行(7182)さえ826日の947円から1080円まで。永々と述べたが、日米ともに、ざっと1割上昇したことを示したかっただけである。

 

 私が注目し、ご意見をきわめて多く採用している三菱UFJモルガン・スタンレー証券のチーフテクニカルアナリストの宮田直彦さんが「826日転機説」を述べている。

 

 宮田さんは同日の日経が一面トップで「円上昇、一時104円台」という大きな見出しを付けたことに注目している。私も同感だ。

 

 この日の対ドル円レートは10446円をつけ、201611月以来の円高ドル安となった。チャート上はフシ目を抜いて一気呵成の円高ドル安になってもおかしくなかったが、現実には913日には10810円までの円安。

 

 宮田さんは最近もう一つ注目される視点を提供している。「中国株はもろもろの悪材料を織り込んだ可能性」である。8月を通じて米中対立は駆け引きはあるものの、依然として深刻度は深まっている。それでも86日を底値として中国株は上昇している。

 

 「強気トレンドを中国株がたどり、米国株は一段と上昇、日本のマーケットも株高 円安の展開になる可能性が高い」と宮田さんは結論付けた。この人はSOX指数、つまり半導体株に昨年末から強気をほとんど一人で主張して当たった「当たり屋」だ。弱気が多数派のテクニカルアナリストの中で、極めて少数というか唯一の強気の持ち主だ。ここは当たり屋さんにつくことにしたい。

 

私はかつて米国の著名ストラテジストと対談し、金利と株価の関係について、こう述べた。「理屈上は金利の上昇は株価の売り材料だが、低金利からの上昇は買いだ。」大賛成を受けた。今や時代は変わっているのではないか。

 

 

 もう一つ。私が注目している大材料がある。1112日の両日米ムニューシン財務長官が50年もの、100年もの米国債について「真剣に発行を検討する」という発言だ。これで日本の方も、建設国債がぐんと発行しやすい環境になった。私がこのコラムで注目していた財務相の交代がなくても、大いに財政出動の希望を持たせる状況になっている。

 

 映画のタイトルの「オール・ザット・ジャズ」はボブ・フォッシーが脚本・振り付けを担当したミュージカル「シカゴ」の同名の曲からとったもの。ここで言う「ジャズ」は音楽ではなく俗語で「似たようなもの、ざれごと、活気」という意味で、全体としては「あれもこれも、何でもあり」という意味です。おわかり?

 

2019年9月 9日 (月)

映画「SHADOW/影武者」と内閣改造の(十分あり得る)失敗(第980回)2019・9・8

映画「SHADOW/影武者」と内閣改造の(十分あり得る)失敗(第980回)2019・9・8

 チャン・イーモウ監督の待望の新作で、しかもあの「HERO」「LOVERES」のようなアクション武侠もの。前2作のような華やかで美しい画面作りを期待していたが、今回は水墨画風の白黒を中心としたこれまたセンスの良い作品に仕上がった。流石名監督と言われるだけのことはあった。

 

 時は戦国時代の中国、小国沛は大国炎に国境の境州を支配され、代わりに同盟を結んで平和が続いていた。これを不満とする重臣の都督派と、ともかくこの状態で我慢しようとする国王派が対立していた。

 

 都督の身体は、境州を奪われた時の敵の将軍との決闘を受けた刀傷がもとで、実は半身不随。そこで自分の影武者が本人そっくりなのを利用して、宮中に出勤していた。都督は影武者に「敵の将軍の楊蒼を殺せば、お前は自由の身だ」と言い、翌日コトを構えて沛国王に都督を無官にするよう仕向ける。これで国王の意に背いて敵将と決闘に向かう。相手の鉾に対し、何と傘を武器にして闘う。そして対決へ。国王軍の一部が味方になり、影武者は勝利する。そのあとの結末は、意外や意外のドンデン返しで、一種の宮廷ドラマで終わる。

 

 911日、安倍首相は大幅な内閣改造と党人事を行う。この映画を観て、登場人物それぞれの思惑でドラマが構成されているところが、今回の一連の人事と共通していると感じた。私なりの取材と(例によって)パルナソス・インベストメントの宮島忠直情報が中心だ。

 

 ズバリと結論から言おう。最大の注目人事は二階俊博幹事長の衆院議長への転任で、これが決まれば、ある一点を除いて首相が希望する人事パズルがうまくはまる。ご本人は否定的と聞くが、うまく説得できるか、どうか。

 

 安倍首相の意向はまず一部は成功しているようだ。安倍さんの浪人時代から盟友で日米商協議で米ライトハイザー代表とウマが合う茂木敏充経済再生相の外相就任が確実視されている。

 

 第二のポイントは、麻生太郎副首相兼財務相が財務相の兼任を解かれて、新財務省に甘利明議員が就任できるか、どうかだろう。麻生氏は財務省官僚に洗脳されていて、大幅な財政出動に否定的なので、新しい大臣が断行しないと実施できない。

 

 私は二階幹事長の後任には、選挙に強い菅義偉官房長官で、さらに内閣官房には若い小泉進次郎氏が副長官を抜擢。菅長官の後任には加藤勝信自民党総務会長か河野太郎外相、岸田文雄自民党政調会長のどれか。しかし小泉氏が否定的な発言をしているので、この構想は微妙だが。

 

 景気や株式市場のことを考えると、麻生氏の財務相の兼任を解くことが、カギになる。実はこの情報を待っているのが、外国投資家、とくにヘッジファンドであることは容易にお分かりだろう。

 

 政治の安定が対日投資の重要なポイントだったものが、二階、森の二人が、ヘッジファンド運用者にとっては、安倍政権の安定性と日本経済の不況脱出への障害に見える。したがって11日の報道でこの二人が「全く現状維持」と報じられたら、間違いなく先物売りを厚くし、円買いを進めるだろう。日本からの投資引き揚げさえも予想される。

 

 女性を描くのが巧みと定評があるチャン・イーモウ監督らしく、都督の妻の描き方が面白い。決闘の練習で影武者にどうしても勝てないとき「身体を寄せ合えば心が通じ、柔らかさがわかる」と自ら傘の使い方を教える。柔らかい身の動きで影武者の技は急速に上達してゆく。そして、勝つ。大切なことは、柔軟に情報を受け取る姿勢だろう。

 

 要は麻生財務相でも、積極的な財政政策で、米中対立が引き起こした世界大不況の日本への波及を防止してくれればよい。それだけの柔軟性を麻生太郎氏が持ってくればの話だが。

 

 なお、私はこのブログを日曜昼に執筆している。情勢の変化があったり、見通しが間違っていることも十分にあり得る。文責は全く私にあります。念のため。

2019年9月 2日 (月)

映画「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」と内閣改造後の積極財政への転換(第979回) 2019・9・1 今井澂

 レオナルド・ディカプリオとブラピ、クエンティン・タランティーノ監督の組み合わせ。しかも「10本限り」と宣言しているタランテイーの9本目。わき役にアル・パチーノやカート・ラッセル、ブルース・ダーンときたら映画ファンにはたまらない。

 結論から言うと、残念ながら駄作に近い失敗作であった。終わりの方に近くなればなるほど手抜きになってゆく。

 お話は良く出来ている。1969年。人気が衰えかけ、今は敵役で飯を食べている元大スターと、その付け人でスタントマン。そのお隣は若手女優で夫は新鋭監督のロマン・ポランスキーのシャロン・テート。

 この元スターは「大脱走」のスティーブ・マックイーンに役をさらわれ、せっかくマカロニ・ウエスタンの話を持ち掛けられたのに断り、クリント・イーストウッドになれるチャンスを自分から断ってしまう。

 私はこれを観ていて、こう感じた。2020年にほぼ確実に訪れる日本経済の「昭和40年型大不況」に対して、不況対策を全く行っていない現状と、この没落しかけている主人公とは全く同じではないか、と。

 ちょっと考えれば来年、特に後半の大不況到来は(何もしなければ)必然的である。理由は次の通りだ。

  1. 米中覇権争いによる関税争いと、世界市場の狭隘化。これに伴う世界不況。
  2. 中国経済の減速による第一次産品の需要の大幅減退。中国習近平政権の「持久戦」戦略で、このやせ我慢時代は当分、続く。
  3. GAFAなどの巨大グローバル企業のビジネスモデルの転換。新ココムで中国の子会社を非中国化、つまり移転を余儀なくされる。もちろん漁夫の利を得る国もあるが、中国経済の減速も不可避。
  4. 合意なき離脱による英国経済の不況。イングランド銀行の推定では、実質成長率を8%押し下げる。リーマン当時は6・25%だから大不況だ。これにドイツ経済の成長率急低下とドイツ銀行処理問題。
  5. アルゼンチン、中東などのテールリスク。

これに加えて、わが国には三つの悪化条件がある。第一は2020年にはオリンピックの特需が後半になくなること。第二は6月までのポイント還元がなくなること、第三は所得税控除が1000万円から850万円に変わること(普通のサラリーマンは年5万円減収)。

 これに加えて対ドル100円割れの円高がほぼ確実に予想され、輸出企業には減益懸念が生まれることがある。

 ECB,FRB,イングランド銀行、豪中銀などの金利引き下げ競争は自国に通貨安を生む。しかし日銀はすでに相当タマを打ちつくしている。たとえばマイナス金利の深堀りは、地銀の首つりの足を引っ張るのでほぼ不可能だろう。

 従って、9月の安倍内閣の改造での財務大臣の交代が必要条件だが、大型経済対策が早く実施されなければ、大不況は必至だ。

 では、財源はどうするか。わざわざ消費増税を強行して、財務官僚への「借り」を返済したのだから、次期財務大臣はフリーハンドを得たはず。ここは建設国債(又は投資国債)の大量発行、それも60年もの債又は100年もの債の日銀引き受け。前提としては政府と日銀とのアコードが必要だが、年内に済ませれば明年度予算から、この債券発行を10年間時限立法として実施できる。年間11兆円の財源が生まれる。10年で110兆円だ。

 やれヘリマネとか、戦前の高橋財政の復活だとかの批判は確実だが、戦前の軍部のような圧力団体はないのだから、世界不況が回復に向かえば、いつでもこの政策は終了できる。超長期債で「永久債アレルギー」を回避する。ついでに言えば米国財務省も超長期債の発行を準備している。「納税者の負担を減らすことができる」とも。

 私が「松田プラン」として以前から主張しているポリシーだが、これをやらなければ大不況なのだから、政府特に安倍首相の決断を待ちたい。

 不況到来前に解散、総選挙という案もあると聞くが、そこでこの新政策を公約又は争点にしてもよい。不勉強な野党は攻撃するだろうだから、選挙後に方針発表するテもないではない。

 大切なのは大不況を回避することだから、ひとつのメドは明年2月28日だ。2019年10月~12月の成長率発表がある。悪いに決まっている。そこで新政策を出して世論を味方にするというのも一つの作戦だろう。

 私がこの政策を力説するのは、ヘッジファンドが日本株を見捨てる日が近いからだ。

 すでに「日銀が何で、この情勢で動かないのか」「円高で1ドル95円になれば、日経平均は大幅減益で“円買い日本株売り”になるが」というオドカシまがいの質問が筆者に寄せられている。また先物中心の株式指数売りも始まった。事態は切迫していると考える。ロンドンからの売り注文には、油価の関係から産油国ファンドのものも入っているのは常識だが、運用担当者からは、日本株の売り材料探し臭い内容が多い。いや、最近特に多くなった。

 映画の中で印象に残るワンシーンは、シャロン・テートが自分の出演している作品が上映されている劇場で「私が出ているの」とねじ込んで無料で入場する。すぐにマンソン一味が自分を襲撃するなんて、もちろんツユほど思っていないまことに美しい顔を画面に映し出す。世の中いつ、何がおこるかわからないものです。ましてや危機がわかっているのに何もしないのは。不作為の罪です。わが政府がそんなバカとは思いたくありません。

 

« 2019年8月 | トップページ | 2019年10月 »