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2019年7月29日 (月)

映画「天気の子」と意外なリスクの検討 2019・7・28(第973回)

映画「天気の子」と意外なリスクの検討 2019・7・28(第973回)

 前回「君の名は。」で超大ヒットを飛ばした新海誠監督の新作で、周囲は若い人でムンムンしていた。お話は主人公の高校1年生森嶋穂高が田舎から都会に出てきて、船で知り合った人の事務所で働くところから始まる。

 

 その事務所で「願うだけで晴れをもたらす少女」という都市伝説を調べて、ついに天野陽菜(自分では18歳と主張)を発見する。この少女は一部の場所だけだが晴れをもたらす不思議な能力を持っていたので、「お天気ガール」としてwebで晴れが欲しい人を求めて報酬を受けるビジネスを開始、次第に有名になってゆく。

 

 穂高と、陽菜とその弟の三人で暮らしていたが、未成年者だけの生活に警察や児童相談所が目を付ける。また偶然拾った拳銃の所持という不利な状況の穂高も警察は追っている。そこに陽菜の体にある変化が起きて…。

 

 映画の中で、年老いた和尚が言う。「天気ってものは、天の気分で変わるものさ。」要するに人間が左右できるものじゃない、というのがまあ常識。そこにこの映画のおハナシの面白さがある。

 

 常識外れ、というか。世間が注目していない事件が発生してショックを与えることは、しばしば起きるものだ。

 

 実は最近、藤和彦・経済産業研究所上席研究員と昼食を取りながらお話を伺う機会があった。そこで何と「サウジ皇太子の失脚」という悪夢のシナリオを伺い「バレル70ドルへの上昇もあり得る」とも聞いた。

 

 原油高は円安材料のはずだが、何しろ「有事の円買い」がコンピュータに組み込まれているのだから、円高に加えて金利高というWパンチも、私の頭の中をよぎってしまった。

 

 もう少し藤さんのシナリオを述べてみよう。

 

 フーシ派によるサウジアラビアへの攻撃が最近激化していることに藤さんは注目している。フーシ派のドローンやミサイルの攻撃の頻度が上昇し、その結果、サウジとともにイエメン攻撃の一翼を担ってきたUAEが駐留部隊を縮小、離脱。そこを狙ったイエメン軍はサウジ南部のナジャラン近郊を攻撃し、サウジ軍に打撃を与えた。

 

20153月に開始されたサウジのイエメンへの軍事介入は以前から評判が悪かった。

 

 明確な展望や落としどころのない状況の所に、UAEの突然の離脱が発生した。サウジは介入の目的が何も実現できずに、撤退を余儀なくされる事態に追い込まれそうである。」(719日付JBPESS「世界経済の脅威となったフーシ派ドローン攻撃―原油価格高騰を招くサウジアラビアの地政学リスク―」)

 

 そして藤さんは「そうなれば、イエメンへの軍事介入を主導したムハンマド皇太子への王族内からの非難が高まり「皇太子失脚」という悪夢のシナリオ」の可能性に言及した。

 

 結論は、私と同じ。「利下げ期待でバブル化している世界の金融市場に想定外の事態が生ずれば、(私なら「ドカン」だが)藤さんは「大荒れ」に予想している。

 

 アレレ、いつも強気のイマイ先生、今回はメチャ弱気じゃないの、と言われそうだ。私は文字通りヤマほどあるリスクの種を探しているだけ。

 

 「ドカン」の種ではないかもしれないが、今回は「天気の子」に絡んでいる面白い見方をご紹介しておこう。

 

 プラザ投資顧問室の伊東秀広さんの725日付の私へのレターだが、「67月の日照時間が少ない年は、相場も崩落する傾向がある」と述べている。とくに目立った例を挙げると次の通りだ。

 

 1953年、67月の日照時間は84時間―127時間。この年スターリン暴落。

 1989年.6月は61時間。ご存知バブル天井の年。

 2016年.79時間―59時間。ブレグジット暴落。

 

今年は現時点では129時間―20時間。

例年にはない長雨で、ごく少ない日照時間だった1993年と共通項がある。この年にタイやアメリカから米を緊急輸入した年だった。

 

 伊東さんは「自然の発する継承が相場に生かす時が近づいています。」と述べた。これもリスクの一つかもしれない。

 

 私がかねてから「ドカン」が秋ごろにあると述べてきたことはご存じだろう。

 

 金融データソリューションズの箱田啓一さんは、昨年10月の高値も1225日の安値もぴたりと的中させた名人だが、ごく最近「NYダウについて、底値とその後の上昇相場を予測しました」とご連絡があったので、早速ご意見をうかがうことにした。

 

 箱田さんによると、「NYダウは920日ごろから下落に入り、1028日ごろに底値を形成。その後新年まで上昇。

 

 一方日経平均の方は「10月24日に底値を付ける(ということは、それ以前は安い)ということだろうが)」

 

 もちろん世界的な景気悪化に対応するための経済対策や金融緩和促進などで、日本株が連騰すれば調整は回避できる、という条件付きだが。

 

 「105日から1024日の買い場まで、どのくらい下落しますか?」とわたくしが質問したら箱田さんは「最悪で10%ですかね」と。当分このシナリオに私は従うことにしよう。

 

 「天気の子」の主題曲の一部だ。「運命(サダメ)とはつまり、サイコロの出た目 はたまた、神のいつもの気まぐれ?」「選び選ばれた脱けられぬ鎧 もしくは遥かな 揺らぐことない意志」。私は強固な意志でこの難しい相場に立ち向かってゆきます。どうぞご声援を!

2019年7月22日 (月)

映画「さらば愛しきアウトロー」と過剰流動性相場の出発(第972回)2019・7・22

映画「さらば愛しきアウトロー」と過剰流動性相場の出発(第972回)2019・7・22

 

ロバート・レッドフォードの引退声明で大いに注目されている近作。実在したフォレスト・タッカーという人物の晩年を描いた。舞台は1980年代のテキサス。

 

この人は刑務所脱獄を18回成功し、12回失敗して、その間に銀行強盗を繰り返してきたアウトローである。強盗を働くときの物腰は柔らかで紳士的。上着の内側にあるピストルはちらりと見せるだけで、決して使うことはない。

 

映画の中の初めの強盗現場から逃げる時には、車が動かず困っている女性をわざわざ助けて警察の目を逃れる。この女性がタッカーの最後の恋人になる。

  

この犯人を追い詰めてゆく刑事ジョンも、何人もの証人に聞くたびに、タッカーの人を傷つけず楽に生きる哲学に惹かれてゆく。奇妙な親近感。

 

 この映画の面白いところは、高齢の犯罪者の伝記ものに止まらず、主演のロバート・レッドフォードのキャリアと重なっている。二重のフィクションでもある。

 

映画通にたまらないシーンも結構多い。ラスト近く、タッカーが恋人と見る映画はサム・ペキンパー監督の「ガルシアの首」だし、脱獄の思い出シーンには「逃亡地帯」の若き日のレッドフォードが出てくる。

 

この大スターは1936年生まれで私より1歳下。映画の初めのクローズアップでは顔の深い皺が、これでもかという位出てきてガッカリさせられたが、そこは芸の力というか、次第に若々しさが出てきて魅力的だった。

 

ここから先週の続きを。

 

先週のブログに私はこう書いた。

 

私の情報では、安倍首相は11月か12月に解散、総選挙を行う。10月からの消費税増税による各種景気指標の悪化が続出する前のタイミング。それでも景気悪化の予兆はすでにいくつも報道されているだろうから、景気対策で何か新しい作戦を公表しなければならないだろう。意外や意外で「北」の金正恩委員長と拉致問題について首脳会談である可能性もないではないが。

 

ウラ付けになりそうな材料を。

 

内閣官房の浜田宏一参与(米エール大学名誉教授)は時事通信社のインタビューで次のように述べた。(見出しは「成長推進へ財政拡大を」)

 

  • 米中摩擦が最大のリスクだが、米中貿易戦争で日本や欧州は漁夫の利を得るので、有利な面もある。
  • 緩和強化の具体化策は金利がゼロ近辺による現在、インフレの心配はしない方がいい。その代わり、拡大政策は難しさを伴う。適切な策は「量」を増やすことだ。買い入れ資産の拡大がいい、しかし今は財政が役割を果たすべきだ。
  • 財政状況が世界一悪いという概念は財務省が作り上げたもの。IMFも「日本の純債務は相対的に少ない」というレポートを出している。

 

 この浜田参与が示唆している①金融のさらなる緩和②財政出動③日銀の買い入れ資産の増加は、去る3月に首相から方策を聞かれて雨宮副総裁が国会で答弁した内容だ。実現性は大きいと私は考える。

 

 たまたま現在の状況を見ると、第一に欧州のECBに始まって、米国のFRB、イングランド銀行、豪州中銀も一段の金融緩和に乗り出した。これで世界中にさらなる過剰流動性が供給されて行く。

 

第二に債券バブルの存在だ。現在のマイナス金利での債券は、合わせて13兆ドル(1400兆円)。ソニー・フィナンシャルの大槻さんによると、次の三つが背景だ。

  • カネ余り②デフォルト率の低下③金融当局の要件緩和。これに加えて私の観るところ見通し難のため、どんどん保守的になって債券に逃げ込んだ資産運用担当者が増加した事実も挙げておこう。

 

その証拠がギリシャとイタリアの10年もの国債。すでに米国の国債と同じ水準まで低下。すべての国債価格は平均して年初からすでに10%も上昇した。

 

 「炭鉱のカナリア」であるギリシャとイタリアの10年物国債の金利が、1%を割れたらもう限界だろう。債券から株へのシフトが遅かれ早かれやってくる。

 

 その転換期に「ドカン」がまあ100%来るだろうが、その先には、空前の株高が始まる。これが私のシナリオだ。

 

この映画の主題曲が実にいい。ジャクソン・C・フランクの「ブルース・ラン・ザ・ゲーム」。

 「ボートでイギリスに行こうか?

  スペインでもいいや

  とにかく別のどこかに行ってみよう。

  人生はギャンブルなんだ

  いつか俺も落ち着くだろう

  年老いたことに気づいたと

  もう足掻くことはやめるけどそれまでは旅を続けるさ」

 

私も当分、この旅を続けます。どうぞよろしく。

2019年7月16日 (火)

ミュージカル「王様と私」と世界中にヤマほどあるリスクの検討(第971回)2019・7・15

ミュージカル「王様と私」と世界中にヤマほどあるリスクの検討(第971回)2019・7・15

 

高名なミュージカル界の大スターのケリー・オハラと渡辺謙の主演。チケットをかなり無理して手に入れて観た。たまたまBSでデボラ・カーとユル・ブリナーの映画をオンエアしたのでこれも録画。舞台の前に予習して観た。

 

 リチャード・ロジャーストとオスカー・ハマースタイン二世の名作。私はユル・ブリナーが、がんにかかっていたのを公表しながら最後の上演をしたのをNYで観た。流石に半裸でなく肩からチョッキのようなものをかけて身体を見せなかった。それでもセクシーな魅力は変わらなかったのだが。

 

 1860年代のシャムに、英国軍人の未亡人のアンナと息子のルイが王家の子息たちの家庭教師としてやってくる。文化の違いに悩まされながらアンナは対立していた王様と心を通わせてゆく。相互理解が進み、有名な「シャル・ウイ・ダンス」のシーンにつながる。

 

 この曲のほか、私が大好きな曲は「Getting T0 Know You」

がある。私は海外で初めての方にお会いするとき、この歌をちょっと口ずさんで相手の方のご経歴や家族、それにお仕事の成果などを伺うと、実にスムーズにいったのを記憶する。

 

 また冒頭の「口笛を吹いて」も暴落があってNY支社の皆がシュンとしていた時にみんなが加わって歌って、ちょっとしたコーラスになったことも。このミュージカルがいかにNYでポピュラーだったかを思い出すエピソードだ。

 

暴落当時の記憶から、いまの世の中を見まわしていたら、文字どうり山ほどリスクがあることに気が付いた。遅すぎるかな。

 

 

まず日本の天災だ。富士山の噴火、首都直下型地震、また南海トラフ地震は「ドカン」の材料(少々不謹慎ですがね)に違いない。

 

 次が中国の「リスク」、以前から問題となっているシャドーバンキングを中心として金融不良資産問題。日本ほど切迫感はないものの、世界最大のダムである。三峡ダムの崩壊が、グーグルマップの写真からみて、可能性無きにしも非ず。7月に入って観光客の受け入れを中止した。さらに習近平の苦境はご存知の通り。

 

 北朝鮮の核凍結での米国側の甘い妥協が可能性ありとして、浮上しているかは「ドカン」ではないが、日本人としては大不安だ。

 

 もっとも「ドカン」に近いのは欧州だろう。

 

 第一が「ドイツ銀行」。従前から市場の噂としてはドイツの国全体のGDPの3倍もの損失がある、とか。(発表では22年末までの74億ユーロ)株価は破産相場の6ユーロ。合併計画相手のコメルツ銀行は労働組合の反対で破談。投資銀行部門を分離。1万8,000人のクビ切りを行って経営再建中だが、公約資金投入は欧州のルールでは原則禁止のはず。メルケル首相はどうするか。あと1年半の任期しかないのだが。

 

 もうひとつ。英国のユーロ圏からの分離が「無秩序の分離」になるリスク。イングランド銀行はGDPを8%押し下げる(リーマンは6・25%)予想を発表している。やはりリーマン級を上回る「ドカン」の材料に違いない。

 

 中近東の問題。イラン対米国の争いが、ホット・ウオ-になればやはり「ドカン」の材料だ。

 

 「米国は、もう世界の警察官ではない」と宣言したのはオバマ前大統領だが、米国の世界を支配させていた軍事力に挑戦し、これは大変だと感じさせる事件が二つ、あったことを日本のマスコミは報じていない。この二つの続編が発生すれば、それが「ドカン」になるだろう。

 

 第一は戦争の方法が変わったこと。2016年のロシアのウクライナ侵攻でサイバー攻撃、電磁波攻撃によって、ウクライナ軍のドローンが墜落したり、ミサイルが役立たなくなった。携帯電話は通じなくなり、ラジオからはニセのニュースが流れた。戦車を先頭に陸上軍が進撃する代わりに、気が付けばロシア兵が山のように取り囲んでいた。

 

 マクマスター陸軍中将(のちのトランプ大統領国家安全保障担当補佐官)は「このタイプの戦争では米軍はロシア軍に負ける」と上院で証言した。

 

もう一つの中国による空母の無力化へのトライも実は重要な不安材料だ。100機を超えるドローンをコンピューターでわざと無作為に攻撃して空母の攻撃能力を削ぐ。米国海軍が100機で実験成功した数か月後に中国海軍が119機で成功して見せた。米軍はこれを「中国によるドロボウ・チップ」による技術盗難を理由としている。

 

 「米国への中国の挑戦」を米国全体が危機として抱える契機になったから、案外、「禍を転じて福となす」かもしれないが。アップル、アマゾンなどが四半期ベースで意外な悪い決算を発表する「ショック」もあり得る。

 

 これらのグローバル企業は、米国の「新COCOM」で、中国での生産ネットワーク除外したシステムを作らなくてはならない。

 

 ごく一例。アップルは下請けのうち、200のうち26社は中国。これをベトナム、マレーシア、日本などに移動させなくてはならない。それには何年もかかるし、当初の資本効率は悪い。

 

 何しろグローバル企業は設計はシリコンバレー、生産は中国、販売はグローバル市場という「いい取り」したビジネスモデルで、まことに、精緻にできている。

 

 米中新冷戦はまず中国市場に依存している企業に始まり、ITのハイテク企業の業績の低下につながる。市場に(予想されていることとはいえ)ショックを与える可能性は十分ある。

 

 次いで米中に始まって、成長率の大幅低下が起こるのが予想される流れだ。

 

 各国の中央銀行はこの不況をどこの調査マンも予想しているはずなので、当然、大幅な金融緩和を早めに行って、不況到来の攻撃を軽減しようとしている。FRBパウエル議長、ECBラガルド総裁に始まって、イングランド銀行、豪州中銀などが、すでに緩和方針を打ち出している。

 

 問題は日銀だろう。

 

すでに相当弾丸を打ち、残る手段は限られている。マイナス金利の深堀りは金融機関特に地方銀行の息の根を止めかねない。ただ一昨年には年間ベースで80兆円あったマネタリーベースが今半分以下に減らしているから、これを再び80兆円ベースに戻すのは十分に可能だ。それでも円高がふせげるか、どうか。ETF購入量を増やすのが市場には買い支えになるんだろうが。

 

 

 私の元へは外人の投資家から、「日銀はいつになったら政府と政策協定を結んで建設国債大量発行の日銀引き受けを始めるのか」という質問が来る。

 

 私の返事はこうだ。

 

 (私の情報では)安倍首相は11月又は12月、消費増税への景気指標への悪影響が表面化する前に解散・総選挙をする。その折りに景気刺激策か(うまくゆけば)拉致問題の解決が勝利の条件になる。この景気刺激策の中に建設国債を大量発行が入るのではないか。

 

今回はここまでです、次回には、この続きを書く予定です。ご期待ください。 

2019年7月 8日 (月)

映画「七人の侍」とNYダウ新値更新の背景と「当り屋」「外れ屋」 (970回)2019・7・7

映画「七人の侍」とNYダウ新値更新の背景と「当り屋」「外れ屋」 (970回)2019・7・7

 

ご存知黒澤明監督の歴史的な名作。七人の侍が集まる過程の面白さ、野武士軍団と農民たちと七人の侍の攻防戦など、何回観てもスリリングな展開にぐいぐいと引っ張られてゆく。

 

この映画の冒頭シーン。野武士の頭目の「去年、この村から米をかっさらったばかり。麦が実ったらまた来よう」という声を、隠れていた農民が聞く。

 

 ここからお話が展開してゆくのだが、私は「麦の刈り入れ時」という野武士来襲の情報を得たことに注目したい。

 

この情報があったからこそ、七人の侍の助けを得て、野武士40騎を全滅させることができた。

 

 映画ではたまたま一人の農民が野武士の話を聞くという形で情報を得たのだが、私の注目する株式市場はいろいろな情報が山盛りなので、その中からどれを選別するかが大切になる。

 

 

 私なりの選別の仕方を申し上げよう。英語では情報はインフォメーションだが、これを日本語では「情報」とした。情け(なさけ)に報(むく)いるという訳語だが、実に良く出来ている。この人が言っているんだから的確だろう、とか、この人だからまあ誇張されているんだろうなあ、とか。

 

私のやり方はこうだ、年央になると、昨年末から今年初めの見通しで、誰が的中した「当り屋」か、誰が「外れ屋」か、ほぼはっきりする。

 

当り屋が次の打席でヒットを打つ確率の方が、外れ屋が急に適時打を打つ確率よりずっと高い。

 

1月6日号の日経ヴェリタスの相場アンケートを見るとNYダウの新高値更新を予想したアナリストは80人中14人、うち高値予想2万7000ドルが7人で、恐らく今後の上げを考えると、次の7人がNYダウの展開を的確に予想した「当り屋」だ。カッコ内はその人の所属企業と高値予想。

  • 壁谷洋和(大和証券3万ドル)②秋野光成(いちよしアセット2・88万ドル③庵原浩樹(フィリップ証券2・85万ドル)④佐々木融(JPモルガン銀⑤高島修(シティグループ証券2・85万ドル⑥広木隆(マネックス証券2・8万ドル⑦吉川雅幸(三井住友アセット2.78万ドル)

それでは日経平均の方はどうか。私にとって不可解なのは、日経ヴェリタスでナンバーワンのテクニカルアナリストが1万7000円割れを繰り返し主張してきたことだ。「外れ屋」の代表とわたくしは考えるのだが、日本のマスコミも機関投資家の方々も、プラン・ドゥ・チェックの3番目はやらないから評価が高いのだろう。私にはわからない世界だ。

 

 これじゃあ、この方は私が注目している6月に発生した投資の世界の大変化も、わかっていないんじゃあないかな。

 

エラそうに何を言っているんだといわれそうだ。しかしECBに始まってFRBパウエル議長の金融緩和方針の表明以降、新しい過剰流動性相場が世界的に開始された。この事実認識がまだ乏しいように思う。

 

ちょっと考えれば、ごくごく当たり前の発想だ。米中新冷戦による関税戦争は確実に当事国両国に始まって、世界的な成長率の引き下げにつながる。

 

この新冷戦の開始で、グローバルな展開をしてきた企業が、まず、中国から東南アジアなどへのサプライチェーンの転換を開始している。

この事実を見たら、各国の中央銀行首脳は、この転換期のうちに金融緩和をしておかなければ、自分の国は大変な不況になってしまうと考えるに違いない。

 

自国が金融緩和しておかなければ通貨高になるし、グローバルな市場が成長率低下に見舞われること確実だからだ。英国や豪州の利下げはこの発想からだろう。

 

だからこそまずNYダウ平均は新高値を、三度目の正直で突破した。730日、31日のFOMCで利下げをするだろうが、すでに年内23回分の利下げは織り込まれているので大きなインパクトはないだろう。

 

それよりも私は株高と米国債利回りの低下(債券価格は上昇)、それに金やビットコインなどの価格上昇が併存していることこそ、過剰流動性相場のスタートの証拠と観る。

 

問題は日銀だろう。すでに目立たないように年間80兆から30兆にマネーの供給を削減していたのが問題になろう。まだとても足りない。大幅な増額が要請されそうだ。

 

海外のヘッジファンドは、「日銀と政府が政策アコードを結んで建設国債を大量発行する可能性」を信じる向きが結構多い。またETFの1700億円を超える買いも6月は3日しかなかったが、これを増やすと見込んでいる。

 

さて、こうした状況を踏まえて、数少ないテクニカルアナリストの「当り屋」宮田直彦三菱UFJモルガン・スタンレー証券チーフテクニカルアナリストの予想をご紹介しておこう。これには私も賛成だ。

 

  • NYダウ 201810月高値(26951ドル)から12月安値(21712ドル)までの下げ倍の倍返しの32000ドルを目指す展開
  • 日経平均 201812月安値18948円)から「サード・オブ・サード」という長期強気相場が展開中。そのターゲットは23703円から25813円。ごく短期的は4月高値の22362円。

 

宮田さんの指摘する強気シグナルは次の通りだ。①日経平均の新値三本足が陽転②日経平均・TOPIXの日足が共に一目均衡表の「雲」を上抜けた③日経平均週足が「雲」の上限(21698円)を上回った。(なるほど!)

 

 映画の印象的なシーンは山ほどあるが、宮口精二が演じた久蔵は敵の火縄銃に撃たれて倒れる瞬間、銃を持つ野武士の頭目に届かないものの。自分の刀を投げつけて死ぬ。

 

 私も今年8月で84。そろそろ「死」を考えなくてはならない年齢になってしまった。久蔵のように最後まで闘いしかも刀を投げつけて闘志を示して死ぬ。こうありたいなあと、心から思います。  

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2019年7月 1日 (月)

大阪G20の成果と参議院選挙後の政局と株式市場展望(第969回)2019・6・30

大阪G20の成果と参議院選挙後の政局と株式市場展望(第969回)2019・6・30

 大阪でのG20が無事終了した。安倍首相は議長としてうまくやったと思う。トランプ大統領は記者会見で称賛していた。「これから韓国に行くが金正恩と会うかもしれない」いう発言は一見サプライズだったが、やはりこれは周到に準備された話だった。第3次米朝首脳会談が板門店で行われたのはご存知の通り。これは大きな成果に違いない。

 

 一方、世界中が心配していた習近平中国主席との会談では「関税引き上げは当面しない」となった。予想どうりで、やれやれと胸をなでおろした向きもあっただろう。

 

もちろん、これで米中の覇権争いが収まったと考える人はいない。ごく一時的な手打ちに過ぎないだろう。

 

 この間に国内政局では重要な転機があった。私も含めて市場筋が期待していた「衆参同日選、消費増税再々延期(又は凍結)」の可能性が消滅したことだ。

 

 月末の参院選情勢調査で、前回参院選に近い結果が期待できると報じられたことが首相の決断に大きな影響を与えたとか。

 

 W選をやらないことは、消費増税を予定通り10月から強行するのと同意義と考えられる。この環境で増税するのは、高橋洋一さんによると財務省の復権らしいのだが、私にはどうも腑に落ちない。何かウラがあるのだろうが。

 

 それほど、現在の日本経済は、後退局面にはなっていないものの、景気の拡大テンポは極めて微弱で停滞色が強い。

 

 嶋中雄二・三菱UFJモルガン・スタンレー景気循環所所長は次のように述べている。

  • 今回の消費増税は前回の2014年当時より増税幅が少ない。
  • 軽減税率や各種の需要平準化政策の採用。それに教育・保育の無償化による支出がある。

 

この2点から「影響が少ないだろう」と嶋中さんは述べている。しかし同時に「2019年度下期に前期比マイナス1.4%、しかしさまざまの措置があるのでマイナス09%の実質GDP成長率の抑制効果がある、とも。この数字は、かつての日本からともかく、現在の体力ではやはり打撃は大きいのではないか。

 

 しかも嶋中さんも指摘する通り、日銀のマネー供給は下げ止まっているものの、まだまだトレンドを大きく下回っている。

 

 さて、参院選後の政局とこの増税による成長率大幅減速をどう株式市場は織り込むのか。

 

 まず政局。6月の産経=FNNの参院比例代表で「どの政党に投票しようと思いますか」との問いに対する答えの比率を書くとー

 

 自由民主党。㋄39・9%が6月に314%で85%下降。

 立憲民主党。㋄9・3%、6月6・2%で01%下降。

 公明党。5月の4・5%。661%で16%上昇。

 

注目したいのは「わからない・言えない」が25・7%から30・8%へ51%上昇。つまり自民党のダウン分の四分の三は公明党と「わからない」が取ったことになる。

 

 実は私がひそかに注目しているのは水面下で交渉している拉致問題の進展だ。先週、官邸から密使が派遣された形跡があるし、冒頭の米朝首脳会談でのトランプ大統領の援護射撃も期待できる。721日の投票予定日までに何らかの報道があれば「わからない・言えない」組が一挙に動く可能性があるだろう。案外、議席数は落ちないのではないか。

 

 もう一つ。日銀がもう世界情勢や円高ドル安の展開で、これまでのステルス・テーパリングから金融緩和の再開を余儀なくされるであろうことだ。

 

 JPモルガンによると世界31の中央銀行のうち19が今後1年間のうちに利下げをすると予想している。

 

 重要なのは欧州のECBに続いて米FRB、英イングランド銀行、豪州中銀などが入っていること。このままでは円高で悲鳴が起きることは、必至の情勢である。

 

 マイナス金利の深堀りは、銀行特に地銀の息の根を止めかねない。どうしても国債購入のペースを現在の年30兆円ペースから一昨年のように80兆円。またETFの700億円以上の購入も6月は3回だけだったが、ピッチを上昇させる必要もある。

 

 さらに日銀が政府と政策協定を結んで、建設国債の大幅発行を消費増税の近辺に発表するのが上策だろう。明年度の予算編成に間に合うためだ。

 

 私の相場観は変わらない。マイナス、あるいは不安材料はあるものの、スケールの大きい過剰流動性相場が、世界的にスタートしたと考える。ここ2週間で流れがすっかり変わってしまったのだ。だから株価も債券利回りもいい水準だし、原油も金もビットコインもみんな高い。まだ気が付いている人が少ないだけだ。弱気は禁物。取り合えずの日経平均の目標は2万3500円から2万4000円。 

 

また以前から私が指摘してきた「米中新冷戦で日本株は漁夫の利を得る」というストーリーに合致した銘柄が生まれているのも強気の理由だ。現時点では5G基地局関連のNEC(6701),アイ・ピー・エス(マザーズ4390)がこの「漁夫の利」銘柄に当たる。今後どんどん増えるだろう。

 

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