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2018年1月15日 (月)

歌舞伎「勧進帳」と原油と金価格の高騰(第892回)

歌舞伎「勧進帳」と原油と金価格の高騰(第892回)2018・1・14

 歌舞伎座で「勧進帳」を観た。9代目幸四郎が2代目白鴎を。染五郎が幸四郎を、まだ12歳の孫が染五郎を襲名した。ズラリと名優が並んだ口上も見ごたえがあったが、やはり高麗屋のお家芸に近い弁慶をどう新・幸四郎が演じるか。12歳の新・染五郎が義経をやれるのか。両人ともまずまずだった。吉右衛門の富樫は凄い出来だった。当たり前か。人間国宝なんだから。

 

 ストーリーは、ご存じだろう。兄の頼朝と不和になり都を落ちた義経は、山伏の荷物運びの強力にに身をやつして奥州平泉を目指す。加賀国安宅関で富樫が関所を守り、山伏を通さぬ決意だ。

 

 そこへ義経一行。関所を通るべく弁慶は富樫に白紙の勧進帳を読み上げ、富樫の疑念にも弁舌鮮やかに答え、いったん関所の通過を許す。ところが山伏一行に従う強力の容姿が義経に似ていると番卒が告げ、一気に空気は緊迫。

 

 弁慶はあらぬ疑いと怒り、金剛杖で義経を打ち据える。その様子から弁慶の忠義心と苦衷を察し、富樫は一行の通行を許す。ここがヤマ場だ。

 

 関所を無事に通過した義経は弁慶の働きを讃え、感謝する。そこに富樫が現れ一行に酒をすすめ、盃を受けた弁慶の「延年の舞」、幕の外での「飛び六方」を踏んでの引っ込みまで、息もつかせない展開。確かに緩急取り混ぜた歌舞伎を代表する名作に違いない。

 

 意外な番卒の告げ口で一挙に緊迫ムードになったように、昨年前半には下げ歩調だった原油価格が10,11,12月と上昇、ヘッジファンドの仕掛けと、ある思惑材料のためだ。

 バレル当たり昨年6月に44ドル、これが10月に50ドル、11月末に58ドル、12月末に59ドル、新年に入って65ドル。

 

 その材料はイエメンの反政府武装組織フーシ派のサウジへのミサイルによる無差別攻撃。11月にはリヤドのヤママ王宮に5発のミサイルを打ち込んだがパトリオット・ミサイルで迎撃目的に達せられなかったが、前記の通り原油価格(WIT)は上昇した。

 

 今後はどうか。フーシ派の背後にいるイランで反政府暴動が深刻化しかけている。きっかけは昨年末のローハニ大統領の経済引き締めで、公務員の雇用カット、増税で、度重なる失政に猛烈の暴動が発生、最高指導者ハメネイ師まで批判し、民衆に13人の死者も発生している。

 

 イランの窮状は昨年6月からパナマ運河の拡張(これまでの倍の幅)で米国のシェールガスの輸出が急増。イランの原油輸出がこれにシェアを奪われ、政府の資金繰りがつかなくなっている。

 

 専門家は2012年のアフマディネジャド大統領の政権崩壊時より深刻な事態と考えている。

 また今後不況が悪化した場合、ハメネイ、ローハニのイラン首脳部がサウジ攻撃つまり原因を外敵に求める可能性も指摘されている。

 

 世界の投資家が最も恐れるのは、原油価格の急騰とインフレ、世界中銀の金利引き上げ、株価急落の悪循環にほかならない。当然、ヘッジとして考えられるのは「金」である。ここ2か月の動きをみると、オンス当たり1270ドルから1330ドルに上昇。円の売りも目立っており、ヘッジファンドによる円売り玉は、12万枚から14万枚(IMMの大口投機玉)に増加している。

 

 評判の悪いトランプ大統領が対イラン経済制裁の解除を継続したのは、ヘッジファンド大手のトップがこうした情勢を伝えたためだろう。4月前後に「北」との戦闘もありうるので、中東は、

この際、騒ぎが起きてほしくない、というところか。

 

 「勧進帳」のラストの長唄で「虎の尾を踏み、毒蛇の口を、逃れたるここちして、陸奥の国へぞ、下りける。」観客はその逃げ込んだ奥州で義経主従が殺されてしまうことを知っている。いま、NYも東京も片や歴史的高値、片や戻り高値と好調だが、このブログで指摘してきた通り「ゴルディロック」の状態がずっと1年間続くか、どうか。私は慎重な楽観主義者だが、この何週間か続いている上げ歩調が、ずっと続くことはあり得ないことはよく知っている。

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