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2015年10月 9日 (金)

「ラ・マンチャの男」と心配な材料と私の心意気(第795回)

「ラ・マンチャの男」と心配な材料と私の心意気(第795回)
いま帝劇で上演されている「ラ・マンチャの男」は松本幸四郎さんが染五郎時代から1200回以上も上演している傑作ミュージカル。

 16世紀末のスペインのセビリアの牢獄。教会侮辱の疑いでセルバンテスと従者が新入りの囚人になりかけ、周囲から「ドン・キホーテ」の貴重な原稿を火にかけようとする。牢名主に助けを求め、裁判で、それも即興劇の形で囚人全員が演じよう、ということに。

 老人アロンソは騎士道の本の読み過ぎで、何世紀も前の騎士になったと思い込む。従僕サンチヨ・パンサをつれたドン・キホーテは奇行を繰り返す。風車は悪の巨人であり、立ち寄った旅籠は「城」。主人は「城主」で床屋の使う金だらいは「兜」、酒場の女は「姫」。

 この奇行を心配した身内は「鏡」を使って現実に引き戻す。その後のアロンソは年老い、死にかけるが、最期に自分が騎士になった夢を取り戻し「ドン・キホーテ」として死ぬ。

 幕切れに宗教裁判所から呼び出されて牢から出てゆくセルバンテスに牢名主が聞く。「ドン・キホーテはあなたか?」「私もラ・マンチャの男です」。

 

 みじめな現実なのか。理想なのか。「見果てぬ夢」が主題曲だが、何回観ても感動させられる。幸四郎は美声で声量も申し分ない。前回は2012年8月19日の幸四郎古稀の誕生日に1200回目の公演。1960年代から5回も観ている。

 

 私は近く36冊目の本を書くが、長期の日経平均上昇にますます確信を深めている。それは歴史的な上げ相場だった1980年代との共通点が多いことが理由である。ずいぶんとあるがー

 第一は原油価格。1980年代初めにバレル40ドルだったが86年に10ドルを割り込んだ。今回の140ドルから40ドル以下。いまは50ドル近いが。

 

 第二は金融緩和。1986年の公定歩合は5%から87年に2・5%にした。今回は量的金融緩和で「異次元緩和」とか「黒田バズーカ」と呼ばれている。ご存じの通り。

 

 第三は長期安定政権、1986年に当時の中曽根政権は「死んだふり解散」で衆参同時選挙を行い圧勝。今回の安倍政権の長期政権はこれまたご存じの通りだ。

 

 第三は公営企業のIPO。1987年2月のNTT公開が119万円の公開価格が2か月後に318万円となり株式市場への人気を高めた。今回は日本郵政、ゆうちょ、かんぽのIPOがある。

 

 第四は巨大な買い手。80年代を通じて株の持ち合い、生保の政策投資で発行済み株式数の三分の二の安定化があり、そこに特定金銭信託、ファンドトラストの買いがあった。今回はGPIF、三つの共済組合、ゆうちょ、かんぽ。それに日銀のETF買いがある。

 

 そして第五は、あくまでも可能性でしかないが、89年のソ連消滅に似た現象、つまり中国経済の急速な減速。一見マイナス材料に見えるが、中国共産党の一党独裁体制の揺らぎはわが国にはトク。中国ショックの「夏の嵐」と1987年10月のブラックマンデーとよく似ている。あのときは私はロンドンに飛んでいて、着陸後に暴落を聞いた。郊外の美しい城で、100人を超える欧州の機関投資家に「日本は大丈夫」と述べ、その後の急騰に喜んだ記憶がある。

 

 実はこのことは次の36冊目の本で主張するつもりだったが、第一生命経済研の永浜利広さんに先を越されてしまった(東洋経済刊「日本経済黄金期前夜」)。もっと精細に数多くの共通点を指摘している。

 もっとも、現実には心配事が多い。ドイツ銀行は四分の一の行員クビ切りと無配転落。一方米国ではジャンク債の危機が爆発寸前だ。恐らくジャンク債の方で二番底をつけ、FRBは利上げは出来ず、これを横目に見た黒田日銀は恐らく10月30日の展望レポート時の追加緩和は出来まい。だから目先は上昇中の相場ではあるが私は目先の買いはやらないので「休むも相場」のごろ寝を決めこんでいる。

 

 「ラ・マンチャの男」のセリフから。セルバンテスはいう。

 「人生自体が狂気じみているとしたら、一体、本当の狂気とはなんだ。

 本当の狂気とは、夢におぼれて現実を見ないのも狂気かも知れない。

 現実の身を負って夢を持たないのも狂気じゃないのか。

 だが、一番憎むべき狂気とは、あるがままの人生に折り合いをつけて、あるべき姿のために戦わないことだ。」

 幸四郎の言葉だと「夢とは、夢を叶えようとする、その人の心意気だ」。

 うーん、いいことを言うなあ。

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