映画「イミテーション・ゲーム」とドル高を生む意外な材料762回
「映画イミテーション・ゲーム」とドル高を生む意外な材料(第762回)
このところ急速に人気を高めている英国の二枚目ベネディクト・カンパーバッチの最新主演作。アカデミー賞八部門にノミネートされている秀作。まだ未公開だが試写会にご招待されたので。えへん、いいでしょう。
時代は第二次大戦中。ナチスドイツの暗号エニグマ(ギリシャ語でナゾの意)を解読した天才数学者チューリングの物語だ。解読成功で連合軍は勝利を早め、1400万人の命を救った。天才にありがちな偏屈な男だが。彼こそ現代のコンピューターの原型をつくったパイオニアだった。
暗号解読に成功したのは事務所に勤めるタイピストの何気ない一言、思いがけない事件が意外に大きな結果をもたらすことは、ままあるものだ。
2月4日、米オバマ大統領は意外な発表を行った。
「HIA2」とでもいうべきもので、「本国投資法2」である。2005年ブッシュ政権のときに行われた雇用創出法で景気対策のひとつとして盛り込まれた。
海外に子会社を持つ多国籍企業が本国の親会社に利益を送金する場合、1年に限って税率を5・25%に引き下げた。当時海外での留保利益は1兆ドルと推定されていたが、3000億ドルが米国に還流した。2005年は2001年から八年間続いたドル安の流れの中で、唯一のドル高の年になった。
現在の海外留保利益は2兆7000億ドル。前回と同じく三分の一なら9000億ドルの還流が予想される。これは総額で1年ではないが。
というのは今回のオバマ提案は①連邦法人税の実効税率現行35%を28%へ②海外で留保された利益の本国送金には14%課税と2005年の引き下げ幅を下回る③1年限りの時限立法でなく恒久措置、というものだからだ。
シティグループ証券のチーフFXストラテジスト高島修さんは、「新制度が実行段階に入るまで、一時的に米企業による米ドル買いは例年より減ることになる」と現実には一時的にドル安円高、と見ている。
高島さんは従前から、今春までは日米双方が「円安は歓迎されない」。理由はTPP交渉が佳境を迎え、日本国内では統一地方選挙が行われるから。野党が円安批判を行っているのはご存じだろう。
私も先週117~8円の水準に戻したことはその証拠と思う。
また私は木曜日の大幅な株高が、1円以上の大幅円高にもかかわらず達成されたことを注目している。
以前から私は4月の選挙前は、経験から3月高と主張してきた。株式市場は、いよいよ中期の目標2万円に向けて動き出したように見える。
映画のセリフから。三回も出てくるが「時として、想像もつかない人物が誰しも予想していなかった偉大な仕事をやり遂げる」。ほんの4,5年前の民主党政権時代、デフレと円高の悪循環の時代にもっともらしい顔して1ドル50円説を主張していたエコノミストがいた。当時現在のようにこれだけ労働力不足になり、企業収益が新記録になるなんて、一体誰が予想したか、円安の効果は大きい。いくら強調してもしすぎることはない。
トリビアをひとつ。エニグマに絡んだ小説で、あの丸谷才一さんが絶賛した本がある。私も久しぶりに読んだがメチャ面白い。ぜひご一読を。
「エニグマ奇襲指令」マイケル、バー=ゾウハー著ハヤカワ文庫。「スパイ小説としても泥棒綺譚としても実にうまく出来ている」(丸谷才一、オール読物2007年11月号)。
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