映画「プロミスト・ランド」とシェール革命とNY株(第37回)
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映画「プロミスト・ランド」とシェール革命とNY株(第737回)
今週は時間をあかせて5本。試写会で話題の「LUCY」、アクションの「バトルフロント」、インド映画で女性客で超満員の「マダム・イン・ニューヨーク」、海老蔵の「喰女クイメ」そして「プロミスト・ランド」。
日比谷シャンテに朝一番の上映の40分前に行ったが売り切れで、午後2時15分。そこで「喰女」。四谷怪談で海老蔵の色悪(シキアク)ぶりがなかなかすごい。これにしようかと思ったがやはり「プロミス」は5月に採掘現場を視察したピッツバーグ近郊にロケしたらしく見覚えのある風景が撮られている。やはり、これにしよう。
97年の「グッド・ウイル・ハンティング/旅立ち」で大成功したガス・ヴァン・サント監督と主演マット・デイモンの作品。一昨年12月に米国で公開されたがあまり当たらなくて、昨年3月にNYでは観そこなった。さすが一流監督作品でよくまとまっている。一見をお勧めする。
主人公は大手エネルギー会社のエリート社員でシェールガスの埋蔵地に行き、農場主から掘削権を借り上げるのが仕事。パートナーと二人で小さな田舎町に行く。農場主たちからは歓迎される。しかし町全体の集会では元ボーイングの技術者で工学博士の老人から、環境に与える影響に十分な検証がないと指摘され、数週間後の住民投票で採掘の賛否が決まることに。
ニュースを聞きつけて環境活動家が乗り込んできて、シェールガス採掘が危ないと宣伝する。ネタバレになるがこの活動家の反対がいかにも一見したところ本当らしく見えるが、私が見るとウソだらけ。しかし形勢は主人公に圧倒的に不利。そこで町にとり巨額の収入がいかに有利かの宣伝のイベントを計画するが、大嵐で中止。そこに環境運動家に関する疑惑の資料が届く。驚愕の内容。
シェールガス革命は私の見るところもう止まらない。バーレル90ドル台の原油を使うよりバーレル当たり換算24ドルのシェールガスのほうがいかに有利か。しかもCO2は少ない。
効果は大きい。財政収支が大幅に改善していることは先週も述べたし、貿易収支も同じ。これがドル高と米国長期金利の低位安定につながっている。米国にとっていいことばかりだ。
問題はFRBイエレン議長の言う通り労働市場に十分な回復が見られていないことだ。
たしかに失業率はリーマン・ショック後の9・6%が、6%近辺まで改善した。
しかし「労働力率」が問題だ。生産年齢人口に占める就業者と働く意欲のある求職者の比率だが、少しもよくなっていないで、ひところ70%台が63%に。
失業率低下と労働力率の低下。不思議に思えるが米国シンクタンクのビュー・リサーチ・センターの調査を見て疑問が氷解した。専業主婦層が1999年以来上昇し続けているからである。
18歳以下の子供を持つ米国既婚女性のうち専業主婦の比率は次の通り。
1970年 47%
1999年 23%
2008年 26%
2012年 29%
70年の47%は40%が夫が働き7%がシングルマザー。2012年は夫の就業が20%で9%がシングルマザーだ。(ちなみに日本は2013年専業主婦41%)。
これではイエレン議長が「労働市場に多大なスラック(緩み、つまり余剰労働力)がある」と強調するのも当然だ。常用労働者の実質週給は2008年の335ドル→2013年333ドルと弱含み。
もっとも8月13日に発表された求人と労働移動調査(セントルイス連銀調査)では6月末時点で467万1000人の求人があり、2001年2月以来の最高水準。またより良い職を求めて自発的に会社を辞める労働者も253万人と2008目㎜5月以来の最高水準に達した。
さて、こうした状況を踏まえてNY株式市場をどう見るか、8月20日にNYダウの日足は一目均衡表の「雲」の上限を抜けた。前記のセントルイス連銀の発表を受けたものだろう。
私は秋の米国議会再開と11月4日の中間選挙が、オバマ政権への大打撃になるとみているから、大勢としては弱気。それでも調整前の最後の高値更新または7月27日の高値1万7151ドルのダブルトップになる可能性は否定しない。株高の背後にある米国経済の予想以上の好転が見えて来たからだ。それを政治がブチ壊す、というシナリオだ。
円レートの方は、ようやく101~102円の永い膠着相場を円安に振れてきた。円安でなくドル高と表現した方がいい。ドル対ユーロでもドル高だし。1月2日の105円44銭をいずれ抜くだろう。
日本の株?金融庁のEDINETを見ていたらJPモルガンが三井住友建設(1821)を発行済み株式の5・86%を、またアイフル(8515)を5・41%購入している。いけそうな銘柄だ。
映画のセリフから。NYで主人公は昇進のための面接を幹部二人から受ける。主人公に幹部が初対面なので云う「ブオトコ(醜男)と聞いていたんだがね」。もちろんジョーク。ところが遅れてきたもう一人の幹部も開口一番、全く同じジョーク。映画の言いたかったのは、大企業の経営者は誰も」同じような人物という皮肉だろう。私はいつも少数派でソンばかりしているが。
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