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2013年12月30日 (月)

医薬経済2014年1月号

医薬経済20141月号

少数派経済観測(121)

 

米国がサウジ以上の産油国に

―ドル高・円安は長期的に続くー

 最近、これは大ニュースだな、と直感した報道があった。1213日のウォール・ストリート・ジャーナルが「エクソン・モービルがある法律の改正に動き出した」というのである。

 その法律とは「米国からの原油の輸出については原則として禁止する」というもの。しかもエクソン・モービルとは石油業界を作り上げたロックフェラーのスタンダード・オイル・ニュージャージーを基とする米国最大の企業である。

 何で?と私は考えた。エクソン・モービルは米国内に油田を持っているが、外国に輸出できるほどの余力はほとんどない。それなのに、なぜ?

 エクソン・モービルは、自社以外の米国内の石油会社全体を束ねる役目も果たしている。この改正への働きかけは業界全体の要望と考えていい。

 米国国内の産出の石油は国内需要を満たしていない。米国の経常収支が年4000億ドルを超える大幅赤字で、その三分の二がエネルギーの輸入超過である。

 だからこそ米国は中近東への関与を重視し続けてきたのはご存じの通りだ。

 それなのに、世界の石油輸出市場でサウジと米国がぶつかり合う?そんなことがあるのか?

      米国東海岸巨大油田説

 私は20133月に訪米してニューヨークでヘッジファンドの運用担当者に、オバマ政権がブッシュ政権時に実施したあるモラトリアム(禁止)を解除する、と聞かされた。

 その禁止とは米国の大西洋側の海底の油田開発。当時の環境重視の世論で決まった、という。

 このモラトリアムを第二期に入ったオバマ政権は失業問題の解決とエネルギーの独立を狙って解消することを決めた。

 すでに20131月の一般教書で「ありとあらゆるエネルギーソースの開発」と述べている。

 そしてその運用担当者から、すでに地質、地形などの基礎データはもう鉱山局で調査が進んでおり、あとは具体的な油層の人工地震による調査だけ。そして「もうサウジ並みの超巨大油田であることはワカっている」と聞いた。

 それでもまだ環境派議員たちの反対がある。NYで私は8名の議員の連名のオバマ大統領へのレターのコピーをもらった。「人工地震では爆薬を使うのでイルカが死んでしまう。生態系を壊すべきでない」というもの。

 ただこれは一応おれたちは反対したといういわばアリバイづくりで、現在すでに人工地震波超音波で行うのが常識。「年の後半には進展があるだろう」と。

 10月中旬に入り、近くの海に海底油田があるとされる七つの州のうちまずヴァージニア州で世論調査があり、67%の州民が賛成した。

 デラウエアからフロリダまで残る六つの州も世論調査が進行中。

 オバマ政権は「2014年早々に海底油田開発の権利を5年間リース契約でゆだねる方針を発表することになろう」。と米国石油連盟は発表している。

 発表文を見ると「米国の石油産業は米国GDPの8%を占める巨大産業で980万人の雇用を生んでいる」とある。

 これを見るとナゾが解ける。11月中旬からエクソンの株価が急騰し、サウジは国連安保理の議席を蹴り、ドル価値は上昇し、NYダウ平均は新高値を更新した。

 どくに円ドル関係では、シカゴ通貨市場での先物の円売りドル買いの枚数は、23か月前は6万枚だったのが1119日に11万枚、26日に12万枚、126日に13万枚を超えた。

 もちろん円売りの先物はいずれ買い戻さなくてはならないし、株価も一高一低あるだろう。

 しかし、米ドルとNYダウがきわめて大きな好材料に恵まれたことは間違いない。シェールガス革命と合わせて、米国は第二の覇権時代に入っているのではないか。

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