シェール革命で恩恵を受ける日本企業は(先見経済13年5月号)
先見経済2013年5月号
シェール革命で恩恵を受ける日本企業は
このコラムで私は何べんもシェールガスによる革命の巨大なこと、産出しているアメリが利益を得るのはもちろんだが、日本も相当にプラスになることを主張してきた。
円安が引き金になって株高。買い気が出てきた株式市場では早くも「シェール関連」銘柄が動き出した。イマイ先生、教えてくださいとリクエストがずいぶん来ている。
私は推奨ではないが(というのは随分上がって目先は限界で一休みと思うので)、6,7月に予想される押し目買いで3年持続という条件で、注目される株を挙げよう。
まずLNG運搬船。世界で現在359隻運行されているが、2014年にパナマ運河拡張工事が完成するし、14万立方米級のLNG運搬船が60~70隻、120~140億ドルの需要が生まれる。円安だし、造船業界は韓国に奪われた新造船市場を取り戻す大チャンスだ。三井造船、川崎重工、三菱重工など。注目は冷蔵するタンク用の6センチのアルミ厚板の古河スカイ。大増産中だ。売上比重は軽いが収益性は高い。
ガスを液化して運搬し気化するわけだが、このプラントは世界の80%を住友精密、30%を神戸製鋼が握っている。これらは本当に業績が急向上するのは2015年3月期。だから少なくとも2年は持つこと。
私が困っているのは新日鉄住金だ。これまでのデフレと円高の悪循環は原料を安く購入できるメリットがあった。これが円安でコスト負担は増す。しかしシェールガスは2~3000米掘削してガスとシェールオイル、LNGを地表に上げて来るか、この地圧に耐える鋼管は旧住金和歌山しかつくれない。差引少しプラスの方が多いかも。
三菱重工、日立、東芝なども私は判断に迷っている。私が聞いたところでは安倍政権は100万キロワット級のシェールガス火力発電所を何と80基作り、日本列島全体にシェールガスのパイプラインをつくる。発電所の方は間違いなくタービンや重電機メーカーを大きく潤す。ただ図体が大きいから、業績への影響度は少ない。まあそれでもこの種の材料は部品や素材の矢や意外性のある中小型株が大化けするのが常なので、勉強したい。
LNG基地が八戸、福井県若狭、秋田県由利本庄など続々手を挙げているが、恐らくトクをするのは荏原。コンプレッサーが強い。
このコラムで以前述べた千代田化工、日揮、巴工業、新東工業、太陽日酸、丸一鋼管、みんな期待先行で株価は上昇済みだ。押し目を待ちたい。大手商社の三井物産、三菱商事、住友商事、伊藤忠商事はそれほど上がっていないが、これはシェールガスが格安でせっかくの権益が利益を出せていないためだろう。
私は米国での安価なエネルギーに注目している。米国のシェールガスの価格は百万BTU当たり最近4ドル(6倍すると原油価格の水準になる)、日本は19ドル、アジア他国は16ドル程度。だからたとえばクラレ。機能性樹脂ポバールで世界の35%を占めるトップだがテキサス州に工場を新設し20%増産する。
また信越化学は米国子会社シンテックは塩化ビニールで首位だが原料値下がりで収益力は強化される。株価は少々急騰しすぎたので、やはり押し目待ち。逆に東レは炭素繊維の米国での50%増設待ち。シェールガスの圧力容器は巨大市場なので、3年後に期待は十分だ。
夢としては燃料電池自動車。シェールガスからは高純度の水素が取れるので、トヨタが2015年に発売するのに私は期待している。
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