映画「テルマエ・ロマエ」の原作使用料と株価水準(第675回)
映画「テルマエ・ロマエ」の原作使用料と株価材料(675回)
興業収入60億円の大ヒットとなった映画「テルマエ・ロマエ」の原作はヤマザキマリさんの漫画。その原作使用料が100万円だったと原作者がTV番組で明かし、安すぎるのでは、と話題になった。
弁護士でヤマザキマリさんの代理人を務める四宮隆史氏はサンケイビジネスでこう述べている。
① 原作者は使用料については出版社が映画製作者と交渉して決める。
② 上限は日本文芸家協会の規定では1000万円で下限はまちまち。
③ 業界慣習として出版社は作家を十分に尊重していると思うが、行き届かない例も存在。
結局「誰が悪いというわけではなく、海外在住の作家が日本の出版社と仕事して生じた意思疎通の齟齬の問題」だそうだ。でも100万円は安いなあ。ボーナスを払ってもいいと思うけど。
そこで傑作オペラの作曲料を三枝成彰さんが調べた〈大作曲家たちの履歴書〉のを引用してみる。モーツアルト。
「フィガロの結婚」が450フローリン。約139万円。「ドン・ジョバンニ」プラハの初演は同じ。へえ、相場はそんなんだったんだ。
あのモーツアルトの死の直前にある貴族が注文を付けた「レクィエム」の前金は50ドゥーカテン、69万5000円!
1780年代のザルツブルグの物価は①バター773円②牛肉309円③ヌードル927円④1週間当たりのベビーシッターを頼んで労賃と暖房、食費6954円。
そして一人あたりのレッスン料の月謝は8万3000円。だから弟子が4人いれば食べていかれた、と手紙にある。
次にベートーヴェン。あの「第九」の初演の収益は126万円。自分では180万円と評価していたそうな。貴族からもらっていた年金は年408万円。これは47歳当時。39歳のピーク時には三人の貴族から年6000万円ももらっていたが、2年しかもたなかった、らしいい。
オペラ史上最高全額を支払われたのはヴェルディの「アィーダ」。1871年スエズ運河開通を記念してカイロ上演のため15万フラン。
ユーロに換算したら2000万円近い。
何でこんなことをゴチャゴチャと書いたかというと、株価がぐんぐんと上がっているので「アベバブル」だなんていう向きが出ているから。
私は89年12月の3万8900円の直後の暴落開始直後に「週刊東洋経済」に寄稿し、株安が途方もなく大幅下落で長期にわたる可能性大、と指摘した。
理由は「イールドスプレッド」。株価を日経225とし、PERの逆数の「益回り」を長期金利から引いて比較し、これが当時9%以上でメチャ高だと述べた。
すでに日銀は公定歩合を三回も引き上げており、当時の三重野総裁のメチャメチャなバブル退治の勢いを「平成の鬼平」とはやす向きさえあった。
これは大変、と思い、私は浮かれている証券界に冷や水をかけて書いたのである。もちろん袋叩きにあったが、私が正しかったのは歴史が証明する。
現時点ではどうか。
東証全銘柄ベースで5月10日現在、益回りは5・23%。一方5年物国債の利回りは0・28%。イールドスプレットはマイナス5%以上あり、いぜんリーズナブルな価格と言える。
ただし、4月中旬から外国人の買いは州によっては売り越しとなり、5月第1週も小幅だが売り越した。
モーレツな上げは個人の主に信用取引、5月に入り信託銀行と都銀・地銀は買い越したが、生損保の売りが大きく金融機関全体ではまだ売り越しが続いている。
世界で一番ヘタな日本の生損保が買い始めれば上げ相場は終わりだが、まだ大丈夫。日経の市場欄で「生損保買いで高値更新」という見出しが出始めたら、1か月以内に天井。それまでは大丈夫だ。
« 米国株式市場に「変調」の兆し(選択2013年5月号) | トップページ | 映画「モネ・ゲーム」と今後の金価格(第676回) »
« 米国株式市場に「変調」の兆し(選択2013年5月号) | トップページ | 映画「モネ・ゲーム」と今後の金価格(第676回) »
コメント