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2013年3月 2日 (土)

先見経済2013年3月1日号「やはりシェールガス革命は時代をー」

先見経済 経済最前線 NO.85 2013年3月号

やはりシェールガス革命は時代を変える

 昨年年末に「シェールガス革命で復活するアメリカと日本」を出版した。自費出版で関係筋にお送りし、お手元に届いた日が1月7日。ちょうど同日にNHKがスペシャルで報道、関心が高まったせいもあり、第一刷はアッという間になくなってしまった。

このページで私が何回も主張した通り、この「100年に一度」のエネルギー革命の影響は途方もなく大きい。ようやく、世間様がそのことに気が付き始めたらしい。日経ヴェリタスは「シェールの世紀」という特集をしたし、大手銀行の調査部もマクロ分析を中心に分厚いレポートを出し始めている。私に言わせるとだいぶ遅いが。

 最近は「シェール革命」と「ガス」を省略することが多くなったが、米国経済に与える影響がまず注目される。

 貿易収支がまず劇的に改善する。米国の貿易赤字は2011年で5599億ドルで、原油の輸入金額は4393億ドル。8割が主に中東からの原油による赤字だ。

 ついでに言うと米国の中東依存度が下がるにつれて世界の情勢も変わりそうだ。

 また米中の関係も。中国はこれまで「米国の国債を買うのを止めたり売却する」と米国を脅していた。しかし今後、米国の優位が再確認されそうだ。

 貿易収支だけでなく、シェールガス関連ビジネスからの税収で財政収支も改善。さらにまだ7・9%の失業率もシンクタンクの予想では、5%台になると見込まれている。

 すでにガスを産出するテキサス州で6・6%、ノースダコタ州は3・1%の失業率と低い。全米にこれが拡大してゆく。

 これだと米国の「日本化」の不安どころか、ドル高と米国債発行水準の切り下げで、米国の長期繁栄が見込めるという予想が定着する。

 となると「今後10数年で中国は米国に並ぶ大国になり、21世紀は中国の世紀になる」という見方は変わる。世界帝国の再生というと前漢と後漢とかローマと神聖ローマ帝国のように米国も第二の繁栄期を迎えることになる。

 この見方はオーバーだろうか。エネルギーの転換が時代を変えてしまうのは歴史が証明する。

 19世紀に木炭から石炭に熱源が変わり蒸気機関をつくった英国は、産業革命で世界の工場になり七つの海を制覇した。石炭炊きの戦艦が当時の最高のハイテク製品で、全世界に鉄道が普及、巨大産業を形成した。

 20世紀に入ると米国で石油が発見され、ガソリンで自動車、重油で火力発電という現在の文明が形成された。自動車産業やハイウエイ建設が米国の経済成長を支えた。また戦後の冷戦時代は中東の原油が西ドイツと日本の高度成長を支えた。

 今回のシェールガス革命も、恐らく石油からガスへの熱源の転換で、たとえばガス自動車などの新製品、新産業を生むだろう。しかもIEAによると天然ガスの採掘、輸送のインフラ投資だけで世界で8兆6770億ドルの投資が2035年までに行われる。巨大投資が世界経済の活況につながる。

 米国内ではざっと2割にあたる1兆7700億ドルのインフラ投資が行われる。2030年には石油に代わり天然ガスが最も使用される燃料になるとIEAは予測している。

 今の日本はアベノミクスを好感した円安株高でムードは一転している。円安ということはドル高。そのドルがシェールガス革命で今後強くなってゆく。私がこのページで円安が大幅で長期にわたると予想したとき、反響はへえ?という感じだったが、今回も私の勝ちだ。

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