映画「ジャンゴ 繋がれざる者」と米中会計戦争(第665回)
映画「ジャンゴ・繋がれざる者」と中国情報(第665回)
クエンティン・タランティーノ監督の新作。今回はマカロニウエスタンで、舞台は南北戦争前の1858年のアメリカ南部。主人公ジャンゴは鎖につながれて移送中、賞金稼ぎのガンマンでドイツ人の元歯科医のシュルツに奴隷の身分から解放される。
二人はお尋ね者狩りの旅をつづけ賞金をためる。ジャンゴはガンマンとなり、奴隷市場で売られた妻の奪還を願い、ついに妻のいる大農園に乗り込む。主役のジェイミー・フォックスがいかにもガンマンらしくカッコいい。シュルツのクリストフ・ヴァルツ、大農園の主人レオナルド・ディカプリオ、その農園の黒人執事サミュエル・ジャクソンみんな芸達者で、何回も出てくるヤマ場の盛り上がりも凄い。極上の出来栄えの娯楽作品で、タランティーノ監督最上のヒット作というのもうなづける。
登場人物総てが悪党でだまし合い、腹の探り合いのユーモアと残虐に満ちた演技合戦。まあこのテの映画がお好きな向きはぜひご一見を。
とくにコワーいのがサミュエル・ジャクソン演じる執事で、一見従順で間の抜けた黒人だが、実は農場主を支配している。一見、白人対黒人の支配ルールを守っているようで、実は大違い。ルール無視だ。
米中の経済関係が、ある米国企業の中国企業へのM&Aから風向きが変わりつつある。それは中国の監査法人の欺瞞に満ちた不正会計である。
「フォーブス」や「ビジネス・ウィーク」など米国一流経済誌がこのところ報道しているキャタピラー社の巨額の被害である。
世界最大の建設機械メーカーのキャタピラーは、昨年6月に鉱山機械の四維機電設備を7億ドルで買収した。これは炭坑機械分野でのシェアを獲得するためで、コマツの手の及ばない分野なため優れた経営戦略と評価されていた。
ところが今年1月末、キャタピラーが計上した減損額は5億8000万ドル。買収金額の83%は不良資産で、売上高も利益も不正に過大表示されていた。これは会計監査がいい加減だった、ということだ。
ここで表面化したのは、中国では個々の企業の経理もおかしいが、米国の大手監査法人傘下の現地監査法人まで怪しい、ということだ。
当然米国の証券取引監視委員会(SEC)が動く。倒産寸前の米国企業を買収して裏口上場した中国企業50社を上場廃止にし、40人の企業幹部の捜査を行っている。ところが中国の監査法人は問題企業の監査資料を、SECへの提出しようとしない。
中国側の言い分は「SECに協力したいが自分たちはまず中国の法律に従わなくてはならない」。ついにESCは米国大手監査法人の中国法人を証券取引法違反で告発したが、中国側は会計制度の改革を拒否している。合意不成立ならSECは米国で上場している全中国企業の上場廃止もありうる。制度改革要請を中国は国益への不法介入とみなしているためだ。
当分、米国SECの動向が注目されるだろう。
映画のセリフから。シュルツがジャンゴに言う。「君に自由を与えた以上、責任を感じる」。中国も大国になった以上、世界に対し責任を負うべきでは。
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