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2013年1月14日 (月)

医薬経済2013年1月号

医薬経済 2013・1・1 少数派経済観測

エネルギーを軸に米国と中国の立場逆転

 米国は世界のリーダーだが弱点は大きな借金であり、かなりな部分を中国に負っている。

 そこで中国の指導者はことあるごとに「中国が米国債を買わなかったり売却すると、あなたの国の経済は破たんする」と脅迫してきたしかし2013年以降、この両国の関係は逆転し経済的、軍事的、そして政治的にも米国が優位に立っていることが、どんどん明瞭になってくる。安倍内閣はこの新しい事態にうまく対応しなくてはならないが、そこいらは十分わかっているだろう。

 では、米国にとって有利な事態とは何か。

 エネルギー、である。

 シェールガス革命のことはもうご存知であろう。2005年ごろにエネルギーベンチャーが、地下3000米の岩から安価にシェールガスと原油などを取り出す技術を開発した。2008年ごろから大量に採掘され始め、巨大石油会社が本格参入した。これまでに発見され採掘されているガスと合わせると、米国の使用している天然ガスの250年分が確認されている。

 シェールガスの価格は石油のバレルあたりに換算すると18ドルから24ドル。現在原油は86ドルだからいかに安価かわかるだろう。

 このシェールガスの増産は米国のインフラ需要と雇用人員増加をもたらせつつある。精製・貯蔵などの装置、採掘やパイプライン輸送のための鋼管、それにガス利用の発電所の諸設備など。日本メーカーへの発注も始まっている。

 実はシェールガスだけではない。米国内で最近巨大油田が続続発見されだした。たとえば大西洋岸のデラウェア州からジョージア州の沖合に長さ1000キロ、幅100キロの広大な油田で、埋蔵量21兆トンと推定されている。メキシコ湾とキューバ沖にも大型油田が発見されている。

 この結果「オレ達の国はサウジ以上の石油大国になる」という楽観論が急速に米国市民の間で広まりつつある。私は3月に米国に行ってこれで3年連続になるガス採掘井の現場の定点観測で、現状を見てくるつもりだ。

 もちろん2013年は「財政の崖」問題や連邦債務の上限問題などで問題山積。弱気のエコノミストは今年のマイナス成長まで言っている始末だ。弱気予想が多数派だろう。

 しかし2008年以降の米国住宅不況が終わり、中古住宅の販売住宅価格ともに好調。米国家計の純資産もサブプライム騒動直前の水準を回復した。基本的には回復は加速化すると見ておくべきだ。

 それに前記した石油・ガスなどのエネルギー事情の急好転がある。現在米国は一日600万バレルの石油を消費し、三分の一を自国で賄っている。これがあと23年でカナダやメキシコを含めると中東から輸入する必要がなくなる。貿易収支は好転。一方中国の原油産出は年10%以上減少だ。

 米国は中東からのタンカー護衛が不必要になり、これだけで年4兆円以上の費用を支払わないでいい。

 石油化学、鉄鋼などエネルギーコストの高い産業は米国に回帰し、増産に転じた。

  中国人の多数は「21世紀中に自分たちは米国を抜いて世界一の大国になる」と信じ、その気で周辺諸国の領海や領土を侵略し、覇権を唱えて来た。空母の購入は西太平洋や南・東シナ海での軍事的優位を確立したがっている。

 尖閣での騒ぎもその一環だが、米国の前途への自信回復は石油による資金で支えられ、」中国の野望を押しつぶすだろう。先日の米上院の尖閣を含めて防衛法案は、その米国の意志の表明だ。ここいらをよく考えたい。

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