映画「ドラゴン・タトゥーの女」と日本国債暴落説(第610回)
映画「ドラゴン・タトゥーの女」と日本国債暴落説(第610回)
全世界で6500万部という超ベストセラーになった小説の映画化。すでに三部作すべての映画化がスエーデン版であり、今回はハリウッド版。このテのリメークは大概オチるものだが、こちらの方がデキはいい。デビッド・フィンチャー監督。
ジャーナリストのミカエル(ダニエル・クレイグ)は奇妙な依頼を受ける。スエーデン財界に君臨していた大富豪から、40年前に姿を消し恐らく殺されたであろう姪の事件の真実を暴き、犯人を捜してほしいー。
この映画の魅力は23歳のセキュリティ会社の調査員で、天才的ハッカーのリスベット(ルーニー・マーラ)だろう。幼いころから暴力にさらされ権力や社会へ深い憎しみを持ち、外見や服装からして他人を寄せ付けない。しかしウデ前を買ったミカエルは協力を求め、二人三脚で謎に挑む。
映画で後見人にひどいことをされたリスベットは、意外なしたたかさを見せて復讐するのだが(そこらも見せ場になっている)、観客の予想をはるかに上回る残酷シーンになっている。
コワーい話は誰でも見たい。
恐らく財務省の「早く消費税の引き上げを決めないと大変なことになりますよ」というキャンペーンのせいだろうが先日の朝日新聞は「国債暴落への対応策を三菱UFJ銀行が検討中」とトップで報じた。新聞やTVでも国債問題が取り上げられることが多い。
その場合「現在1%を切っている10年もの国債利回りが3・5%に上昇」というシナリオが画かれる。
これはゴールドマン・サックス・アセット会長のジム・オニール氏が「2年のうちに3・5%」という予想を発表しているためだろう。同氏は「BRICS」という新興国経済への注目を集めるキャッチフレーズを創造。有力ヘッジファンドへの影響力がきわめて大きい人物だ。
これを受けて、TV番組を見ていると、国債の利回り上昇(価格下落)はこうなる、という呆れたエコノミストがいた。
① 財政負担が急増、②銀行が巨額の損失をこうむり、利払いもできなくなる。ウソだ。
まず2・5%の利回り上昇だと国債発行残高が1000兆円あるので国債に利払い費が20兆円増加するー。とんでもない。すでに発行されている国債は発行金利は変わらないし、変動利付国債はあるが発行額は少ない。
また銀行の評価損も、番組でいうほど多くない。2・5%の金利上昇は価格にして、18%の価格下落だが、最近の国内銀行国債保有は163兆円だが、では18%分の29兆3400億円の欠損が出るか。これもとんでもない。全部10年債を持っているわけではないからだ。保有国債の平均残存年数は3年。担当者は先物などでヘッジするから、現実にはせいぜい数兆円だろう。利払いができなくなるなんてウソ。
それに、年金などが3%台の高利回りなら飛びつき買いするに違いないから、実はジム・オニール氏の予想自体は現実的じゃない。公的年金170兆円、企業年金80兆円、合わせて250兆円の年金は2・5%の予定利回りで運用されているので、一斉に買いに出るだろう。
そのゴールドマンでも「日本株は買い、円安」と見ているらしい。日銀の2月14日の思い切った金融緩和と1%のインフレ・ターゲットを好感してのことだろう。余りコワーいお話に乗らないことだ。
映画のセリフから。犯人に目をつけたミカエルは捉えられ、地下室で縛られ、あざけられる。「どうして本能を信じないのかな。何となく危ないということはわかるんだろうに」。私は国債が危ないと騒いで飯を食っている経済評論家は軽蔑するが、なんといっても日本の政治家のレベルが低すぎることが、本能的に不安だ。ドジらなければいいが。財政健全化への途を早く国内外に示さなくては。
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