映画「東京物語」と高齢化社会と介護産業(第602回)
映画「東京物語」と高齢化社会と介護産業(第602回)
再び名作路線。名匠小津安二郎の集大成ともいえる作品で、世界各国で選定されるベストテンでも上位に入る常連作品だ。1953年の作品だが、老齢化の問題点を先取りした。
たまたまご縁があって昨年私ども夫婦はこの映画の主人公が住む尾道で講演、その翌日市内をご案内いただいた。「同級生」など尾道が舞台の名作が多い。まことに楽しかった。
映画に戻る。ある尾道の老夫婦(笠智衆と東山千栄子)が東京旅行に。長男の医師も長女の美容師も忙しく両親はほったらかし。二人を慰めてくれたのは戦死した二男の妻(原節子)だけだった。
ごゆっくり、と熱海へ厄介払いさせられたら団体旅行と一緒で、老夫婦は眠れない。早々に帰京するといい顔をされない。旧友と飲んで泥酔。老夫婦は尾道に帰る。
帰郷して数日して老夫婦の妻の方が急死。ここで家族という共同体が幻想にすぎない悲しい現実が小津調の画面に描かれるー。
日本は最速で世界一の高齢化社会に突入しつつあるのはご存じだろう。まだ「業界」として完全に認知されているわけではないが「介護関連」を私は注目している。会社四季報最近版を見ても業績はいいし。
主要6社(ニチイ学館、メッセージ、ツクイ、パラマウントベッド、セントケア・ホールディングス、ジャパンケア・ホールディングス)の連結利益合計をいちよし経済研調べで書く。(単位%、前年度比)
2007年度 9・7%減益 84億円
2008年度 14・2%減益 72億円
2009年度 2・6倍増益 189億円
2010年度 36・0%増益 257億円
そして会社計画によると2011年度 11・5%増益で287億円に達する
2009年度以降の増益が注目される。2009年4月に介護報酬3%(うち在宅分1・7%、施設分1・3%)引き上げになった。
同時に介護職員の一人月額1万5000円の給与引き上げのための交付金制度が実施された。このため先行投資で規模拡大を図っていた企業が特に増益率が高い。2012年度も介護報酬は1・2%引き上げが決まっており、介護従事者の待遇改善が図られている。
デイサービス(通所介護事業)も有料老人ホームも、ともに設備の稼働率を高めることが収益確保につながる。介護サービス価格は介護保険制度が決める公定価格でその水準は低く抑えられている。したがって設備稼働率上昇が大切なわけである。
いちよし経済研の予想による2012年3月期のツクイの営業利益は60%以上の増益で続いてニチイ学館、セントケアの40%増益と高い伸び。
デイサービス中心のツクイを例にとると既存店ベースの稼働率は2009年度(2010年3月期)の48・3%が、2010年度(2011年3月期)に57・1%に上昇、2011年度も上伸の見込みだ。
私が株式市場全体の見通しに弱気なことはご存じと思うが、すべての株がダメと言っているのではない。地味だが今後成長が見込めるものは押し目で買ったらいい。ご研究をお勧めする。
映画のセリフから。笠智衆と友人の東野栄治郎(名演だった)の二人が酒を飲みながらボヤく。「オヤの思うほど子はやってくれませんなあ。」「わしも不満じゃ。しかし(それは)オヤの欲というもんじゃ。」「子供はいなきゃ淋しいが、だんだんオヤをジャマにするし。」笠は老けて見えるし、役は72歳だったが撮影時は48歳だったとか。私は家族に大事にしてもらって幸せだが、このボヤキは胸を打つ。
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