映画「王様と私」とタイの大洪水と企業収益(第591回)
「サウンド・オブ・ミュージック」「南太平洋」などの作曲家リチャード・ロジャースの傑作ミュージカル。
1951年にブロードウェイで初演され、大ヒットで1965年に映画化。同年のアカデミー賞5部門を受賞している。その後も何回も映画化。
王様役のユル・ブリンナーは舞台で4625回も演じ、映画ではアカデミー主演男優賞を獲得。85年にがんで亡くなったがその直前まで舞台に立ち、当時NYにいた私は観に行った。上半身裸のはずだが、やはり病のせいだろう。何か羽織って出演していた。
いい曲が多いが、特に「シャル・ウィ・ダンス?」は有名。私は「ゲティング・トゥ・ノウ・ユー」が好きで、ホームパーティで呼ばれて余興に歌ったことがある。米国人も一緒に。
時代は1862年のシャム(タイ)。英国の子連れの未亡人アンナが国王に招かれ王子や王女たちの家庭教師になり、文化の違いに悩まされながら、次第に相互理解を深めてゆく。
この1か月連日被害が拡大しているタイの大洪水。欧州の金融システム不安の方が騒がれているが、直接日本経済に与える打撃はずっと大きいだろう。
SMBC日興証券金融市場調査部の牧野純一チーフエコノミストによると、影響は次の通り。
① 金融を除く上場企業2089社ベースでは、この大洪水は1.5%の経常減益。純利益では3.9%減益。これは固定資産の減損を含めるため。
② とくに自動車の減益幅が大きく、経常で5.2%、純利益では12.4%の減益になる。続いて純利益でみるとゴム製品がマイナス7.8%、そのほか製造業が同7.5%。
私の見るところ、牧野さんの言う通りで自動車への打撃が大きい。
日本の自動車工業にとりタイは東南アジア最大の生産拠点で年間65万台。アジアの稼ぎ頭だし欧米メーカーを寄せ付けない日本の要塞だ。だからトヨタ、ホンダ、日産、いすゞ、スズキ、三菱自などほとんどの会社がタイで生産している。
日本への輸出もありホンダの二輪車、日産の小型車マーチ。中近東やアセアンなどへの輸出拠点だし、収益への寄与ももっとも大きい。そこへ洪水だ。
東日本大震災の影響で部品供給が止まり、日本の自動車メーカーはビジネスチャンスを逸し、ようやく市場シェアを挽回に転じかけたところで、ツイていない。
自動車だけではない。キャノン、HOYA、ローム、オムロン、日本電産、NEC、パナソニック電工などなど。ハイテク企業が軒並み被害を受けている。
対日感情が良く、労働力の質が高い。また電力供給も安定しているので、日本の企業は多く進出しており、1387社の現地法人がある。現在半分の企業が被害を受けている。
夏ごろまでは公表されている製造業関係の統計がよかったため、景気の前途に強気を唱える向きがあった。しかし私は鉱工業生産の先行指標であるスクラップ鉄の価格が安いので言われるほど良いと思っていない。
そこに米国のいろんな問題があるので、このブログで弱気を述べた。予想通り9000円の大台を日経平均は回復したが、ここは売り場と考える。
映画のセリフから。王様が言う。「昔は物事がはっきりしていた。白は白。黒は黒。いまは白に近い黒。黒に近い白。」表面上株価が上がるといいように見えるが、次の「谷」はそれだけ深くなる。クワバラクワバラ。