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2011年9月 2日 (金)

映画黒澤明「生きる」とインド株(第578回)

私は1968年(昭和43年)まだ1ドル360円の貧しい日本から米国に行った。

 当時勤務していた山一證券は昭和40年の日銀特融をまだ返済しきっていなかったが、米国証券会社へのトレーニーとして派遣されたのである。二人。私と、あとで社長、会長になった故人が選ばれた。

 6ヶ月(パスポートの関係で)のうち5ヶ月はニューヨークで、最後の1ヶ月はロンドン、パリなど欧州諸国で日本株をすすめて講演会をして回った。

 NY滞在中、カーネギーホール地下の名画座で黒沢映画の上映があり、「生きる」を観た。

本当にビックリした!映画の終わりに、主人公渡辺が公園のブランコに乗って「命短し、恋せよ乙女」の唄を歌うところで、映画館(ほぼ満員だった)のほとんどのアメリカ人が泣き出した!

 終わってから何人も日本人(私一人だった)とみて「クロサワはすばらしい」と声をかけてくれた。誇りで胸が一杯になったのが忘れられない。

 映画のストーリーはご存知だろう。市役所の市民課長渡辺は役人仕事で「生きた時間がない」。しかし胃がんの末期と知って、市民のためにあらゆる抵抗を撥ね退けて公園を作るために死力を尽くす。

 長い間、本当の生きがいがなかった渡辺が死ぬ前に何かしたいと考えて、本当の人生を生きる。

私が現在の投資家の中で最もすごいと考えているマーク・フェーバー氏が、最近のレターで久しぶりにインド株を取り上げている。私は渡辺を思い出した。

 インド株の指数SENSEXは2002年1月の2228から2008年1月の2万12060まで、年率46%もの上昇を見た。

 それも成長率から見ると当然だろう。インド経済は1969年から80年代の平均3・5%成長、それが2004年まで6%。それ以降2008年まで実に9%という年平均成長率。

 リーマンショックの2008年は6・8%に落ち込んだが、2009年8%、2010年には8・5%に回復した。

ところが株価も対ドル為替も2008年以降弱含みになってしまっている。

SENSEXは高値比でまだ33%下にあるし、対ドルレートが弱くなった結果、ドル建てでは60%も安い。

好景気の副産物ともいうべきインフレの抑制のための金融引き締めが主因。

 2008年以降、食料品価格はひところ20%近辺の上昇率。消費者物価全体では現在でも8~9%と高い。つれてインド準備銀行は金融引き締めを続けている。目標は6%。

 それでもIT、バイオ、ナノテクなどの分野では世界をリードし、エンジニアの数も多い。また労働コストが安くて人口の50%が労働力で今後この比率が60~70%の予想だ。

 インドの魅力は4点。①民主主義国で政治は安定②シン政権の自由化、民営化、国際化の三つの流れは不変③資源が豊富(世界一の資源は鉄鉱石、石炭、マンガン、ボーキサイト)④英語が国語であることのメリットが、IT産業の基礎に⑤安い人件費。熟練労働者で1月1万5000ルピー、1ルピー1・7円だから2万5500円だ。

 最近外資への大規模小売店への開放が決まった。現在年4000億ドルと推計される小売市場は急伸しよう。インド農村部ではシャンプーや練り歯磨きの普及率は30%。

 家電製品の世帯別普及率も低い。

 中国と比較してみよう(カッコ内中国、単位%)TV45(115)、冷蔵庫18(59)、エアコン3(51)、洗濯機8(70)。

 結論。十分に休んだインド株は、そろそろ、買い。ただし、インフレが収まる見通しがつくこと。

 映画のセリフから。渡辺が空を見上げて言う。「美しい、私は夕焼けなんてこの30年間、すっかりー。」「いや、私には、もうそんなヒマはない」。ずっと昔の日本にあった美しさが、今のインドに見つけられるのでは。

 

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