長期で日本株は魅力的 海洋開発関連銘柄を仕込む
(東洋経済 株式ウィークリー 2011年9月5日号に掲載)
FRB(米国連邦準備制度理事会)が次回FOMC(9月20~21日)で追加金融緩和策検討を打ち出したこともあり、米国株は落ち着きを取り戻しつつある。前回に続き、今井澂事務所代表の今井澂氏に今後の有望銘柄などについて聞く。
―世界の株式市場がこの秋に調整するなら、いま短期的に調整中の金が、再度買われるでしょうか。
金相場が再度上昇する可能性はあります。直近はNY先物市場で一時1トロイオンス1917ドルをつけました。実は1980年1月に金が暴騰したときの高値は、インフレ率を調整して今に引き直すと、約2397ドル程度です。米国経済の先行きにもよりますが、当面はこの程度まで上昇しても不思議はありません。
―株は当面見送り、でしょうか。
そうとは言い切れません。ただ来年は世界の主要国で選挙が集中します。中国でも最高指導者が交代します。たとえばその後中国の不動産バブルが弾ける可能性などもみておくべきです。もし株式市場が激震に見舞われたとき、その後買われる銘柄は何か。ソニーなど、旧来の代表銘柄ではないと思います。未来を切り開くような銘柄でしょう。
―そうした銘柄に、長期投資を始める準備をしなさい、と?
そのとおりです。たとえば、海洋開発関連です。私が注目しているのは、「燃える水」とも呼ばれるメタンハイドレート(水分子とメタン分子が低温高圧の環境下で個体になったもの)開発です。海底からメタンを抽出して天然ガスとして利用するわけです。すでに経済産業省の掘削調査では、東部南海トラフ海域(和歌山県沖から静岡県沖)には日本の天然ガス消費量の13年分の埋蔵量が確認されています。日本近海だけでも100年分の埋蔵量があるとも言われています。英国は75年の北海油田生産と79年のサッチャー政権誕生で一時よみがえりました。日本も資源大国になる可能性を秘めているのです。
この一大プロジェクトが前進しています。開発主体である「メタンハイトレード資源開発研究コンソーシアム」(石油天然ガス・金属鉱物資源機構などが主導)は、来年2月産出試験を行う予定で、政府は18年度までに産出技術確立を目指します。この7月には訳60年ぶりに鉱業法も改正、海底資源の管理方法も強化されました。このプロジェクトに加わっている石油資源開発、日本海洋掘削のほか、三井海洋開発、国際石油開発帝石などの銘柄を、長期で仕込むといいのではないでしょうか。折しも、長期波動では日本株は08年5月に60ヵ月(5年)移動平均線が120ヵ月(10年)移動平均線を上回りました。長期で見れば、日本株は大きなチャンスを迎えているのです。
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