映画「100,000年後の安全」と電力不足の日本の今後〈第554回)
只今大ヒット中のフィンランド映画。原発で使用したウラン燃料の貯蔵場所を世界で初めて建設を開始したが、そのドキュメンタリーだ。
原発から排出される廃棄物、寿命の尽きた原子炉などは放射能を持っている。無害になる時間をこの映画では10万年としており、ヘルシンキの西の島はオンカロ(隠れた場所)という貯蔵所を建設中だ。地下500メートル。
6万年ごとに地球は大氷河期に入り、そこで記録は途絶えてしまう。
それでも何とかして10万年後の人類に「ここにある放射能が危険だ」ということを理解させたい。オンカロ関係者は苦悩する。
ムンクのあの有名は「叫び」を入り口につけておいたらーというような珍案も。
今の世界では30カ国、435基の原発が稼働中で、日本は米、仏に次ぐ54基。世界の廃棄物は25万トンといわれているが、まだ完全貯蔵所はない。
人類の祖先ネアンデルタール人の時代から現在までで1万年。10万年という遠い未来は想像を絶する。
フィンランドでは原発に賛成であれ反対であれ「すでに発生している廃棄物の問題を処理しない限り、将来の世代に危険を与える」とし、徹底した情報公開を推進している。原子力発電に積極的で三分の一を依存し、現在5基目の原発を建設中。
では、日本はどうだろうか。
もう311から2ヶ月。しかもまだ原発敷地から高濃度の放射能が出ているが、その事実は公表されていない。あのチェルノブイリでさえ放射能発散期間の10日だったのに。
それはプルトニウムを使用している3号機の圧力容器内での(燃料棒が)水あめのような状態で引っかかっている(4月20日東京電力会見)」ためだ。秘密主義が原発への不信感を高める。
福島原発の操業停止を含めて、今回の中部電力浜岡、それに反原発派の知事による原発稼動の不承認が出てきた。この不信感のあらわれだ。
たとえば西川福井県知事。同県には13基の原子炉があり、常時8-9基が稼動して関西2府4件の電力の55%をまかなっている。
同県知事は、このまま原発の安全基準がしっかり示されない場合、福井県としては稼動を認めない。そこで「今夏関西電力の供給は半減する可能性がある。」
東電の計画停電を見て、関西に工場や事務所をうつす動きが見られたところに、この発言。経営者には国外移転を考え始めた向きもあろう。
1キロワット時当たりのコストから考えると電力会社の経営はこの事態で悪化しよう。
いまもてはやされている太陽光は42円、風力は14円で水力は13円(渇水期には供給ゼロ)。
これに対し火力7円、原子力は6円に過ぎない。
だからこそ原発が推進されてきたわけだが、その原発による電力供給が思うようにゆかないとすると、今広く行われている「V字型回復説」は、残念ながら恐らく、当たらないだろう。
それに中長期の日本の成長力にも制約が残る。
地震、放射能汚染リスク、円高、少子高齢化ーー。それに電力不足と増税リスクが加わった。こう来るといくら強気の私でも、ここ当分、明るい見通しは立てにくい。海洋開発の方も、地震学の方の理論構成が大変化を起こしつつあり、地震リスクはぐんと高まっているからだ。
映画の中で、オンガロの経営者が言う。「ここの建設は一言で言うと、不確実性の下での意志決定です。」いまの不確実性は、風で言うと、すべてアゲインスト(逆風)だ。
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