映画「ヒアアフター」と中東ドミノと株式市場〈第543回)
製作スティーブン・スピルバーグ、監督クリレト・イーストゥッドという物凄い組み合わせで、主演マット・ディモン。只今ヒット中だ。
「ヒアアフター」とは来世のこと。誰でも幼いころ、大人たちに「死んだらどうなるの?」「死んだらどこへ行くの?」と聞いた記憶があろう。
この死という、誰にとっても100%確実の未来にマトモに取り組み、しかも面白く充実した映画になっている。佳作と思う。年配の方にお薦めしたい。
ストーリーは込み入っている。三人のキャラクターが並行して進む。フランス人のマリー、英国の少年マーカス、米国のジョージ、それぞれが最後には生きる喜びを見つけるが、その前に死に直面して苦悩する。
いま展開している中東ドミノについて、私は2月末に書いた第541回で一過性の原油高という見方を述べた。再び書く。
リビアの世界の石油市場におけるシェアが低いことやサウジの増産によるカバー、カダフィーの早期の失脚を前提とした一過性の上昇と見る。また世界の原油の18%を運ぶペルシャ湾の船舶の動きにも変化がない。
私には「第三次石油危機」説は信用できない。
市場での価格は現在の情勢だけでなく、将来をどう読むかで決まる。弱気説の高まりは原油高だ。
たしかにドル安が過去2回の石油危機の引き金になった。その体験からすると、今回の「中東ドミノ」は基本的には米国を支持していた独裁者への反乱の成功で、イスラム化、米国への反感の高まりから、原油価格バーレル200ドル説が言われるのもうなづける。
バハレーンやサウジの王政まで危ない、と見るなら、それは米ドルの基軸通貨制度の崩壊であり、超ドル安、そしてインフレだ。この世の終わり、といっても良かろう。
そうなるか。私はまずエジプト軍部がこれまでのイスラエルとの平和条約を守ると声明。中東和平が守られることに注目している。
第二はサウジアラビアへの革命波及の可能性が少ないこと。
あの国は人口の85%をスンニ派の中のワッハーブ派が支配し、サウジ王家派はこの穏健な宗派指導者と共生している。
だから1979年のイラン革命後、シーア派ホメイニ師の革命輸出に対抗した。またかなり暴力的なイスラム原理主義者の挑戦も退けてきた。
今回もサウド王家は①バハレーン王家への支援②360億ドルもサウジ国内の公務員給料引き上げや住宅購入、企業支援などで国民にバラまく、などの対策を発表した。
一人当たりGDP2万4000ドルと中東では豊かだし、英フィナンシャル・タイムス(2月28日付)が言うように「サウド王家は簡単に倒れない」。
私も後何十年も保つ、とは思わない。しかし今回の中東ドミノがサウジ崩壊とまで行く可能性は極めて少ないと考えている。
NY市場で「原油高→消費不況」のシンボルと考えられているウォールマート株は昨年末の58ドルから最近50ドル近くまで売られた。
しかしこの株価は2009年4月と同水準。リーマン・ショック直後の39ドルよりずい分上だ。市場はまだ強気、と見ていい。
世界中の中央銀行が、マネーサプライを増やしているし、物価上昇と比べて短期金利は日本や豪州を除いて、アジア諸国は低い。つまり実質政策金利は、マイナスだ。これは株高を支える。
勿論、金価格は上昇。株価の調整も日本もNYも軽いだろう。
私が海洋資源開発関連として注目していた日本海洋開発は、ここ3ヶ月で2000円近辺から3700円に上昇。いくらなんでも早すぎるが、株価は動き出した。強い相場の証拠。
映画のセリフから。避暑地で津波に会い瞬間死んで蘇生したマリーが言う。「津波の水の中で何かが見えたのよ。」恋人が言う。「脳震盪のせいだろう?」長期にどう変わってゆくかは勿論不明だが、今はまだ過剰な不安は不要だろう。
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