映画「ハンコック」と中国の自動車と資源(525回)
映画「ハンコック」は1昨年夏の大ヒットでウィル・スミス主演。スーパーマン物に近いが主人公の性格がひとひねりしてあって、面白い。要するに何でもやりすぎてしまうヒーローなのである。
超人的な能力を持つハンコックは弾丸を跳ね返す体で自由に飛びまわり、車を簡単に投げ飛ばす怪力の持ち主。しかし悪党一人捕まえるのにロスの町中破壊する釣り合いの取れない行動に。市民やマスコミの人気は最低。帰れ帰れとブーイングされ、ひねくれてしまったハンコックは酒におぼれてまた町を破壊。
そこに広告代理店の男が命を助けてもらった礼に「好かれるヒーローに」とイメチェンを手伝い始める。抱腹絶倒。
私はこの映画が好きだ。アメコミ映画でなく映画専用の脚本で、「やりすぎ」の悲喜劇を面白く画いているからだ。
「やりすぎ」は昨今の中国だろう。いまや自動車は農村部にも普及し始め、中国農民の食生活は劇的に変わった。町まで買出しに行くのに徒歩や馬車で半日かけていたものが、すぐ往復できる。冷蔵庫も買って保存できる。
その結果、ショウガやニンニク、食用油、砂糖、豚肉など、中国人の食事に必要なものの価格は暴騰。3倍から6倍にこの1年間でなってしまった。
2010年の中国の自動車販売台数は1800万台を超えた。米国の2000年の記録が1740万台だったから、1国の年間販売としては史上最高。
前年増加率は2010年32%。過去10年の平均は24%で「5年で3倍」というハイペースだ。国全体の過去10年の名目成長率は14.7%だったから、自動車販売は1.6倍に達する。
今後GDPが10%、自動車販売が15%とすると、2015年に3620万台。2020年には何と6000万台!
こんな高成長が可能だろうか。
東京工科大学の尾崎弘之教授は「これほどの急成長はムリ。10年かけてせいぜい2倍から3倍」と見込んでいる。
理由は次の3点。①自動車メーカーが巨大な設備投資で対応するのはムリ②中国だけで早期に保有台数4250万台(2007年)が米国の2億4727万台に近い2億台になるには、深刻な原油不足を覚悟しなくてはならない。
そこで中国政府は自動車購入の優遇措置をカットし始めた。車の買い替え補助金、農村部の乗用貨物両用車の購入補助金は減少させ免許交付を制限し、ガソリン税やディーゼル油税を5倍から8倍に引き上げている。自動車の「やりすぎ」を制限しようとしている。
それでも、自動車を利用したいという中国国民の希望は止まるまい。
2012年は中国の胡錦鋳主席が習近平副主席に交代する。ここ20年間、首脳部交代の全人代の年は11.3%成長とGDP成長の10.3%を上回り、とくに前回の2007年には14.7%だった。2012年までは、少なくとも中国経済の好況は続くだろう。いくら貧富の差が大きいとか、構造的にムリな高度成長とか、批判されても勝てば官軍で成長ペースは落ちそうにない。何か自滅、自壊作用が発生するかもしれないが。
発生するとしたら、日本と同じGDPの規模だが税収は日本の2.8倍、国民から取り上げているというあたりか。
映画のセリフから。町の人が言う。「ハンコックが投げたトレーラーが飛んできてオレのビルをメチャメチャにしやがった。おかげで自転車に乗っているんだ」。まあ、こんなことにならなければいいが。
〈注〉523回で私は英国の復活した例を挙げ、北海原油の効果は30年あった、としました。「そんな程度?」とご批判を頂きましたので数字でお答えします。北海原油は130億バーレル。日本は尖閣列島近辺だけで1000億バーレル。文字通りケタが違います。それに加えて海底熱水鉱床の金、銀などがあります。だから私は「資源大国日本」の夢を持っているのです。