映画「春との旅」と長寿リスクと北朝鮮、ユーロ、株価
映画「春との旅」は仲代達矢主演、小林政広監督の秀作。恐らく今年の日本映画のベストワンを争うだろう。
北海道のかつてニシン漁で栄え、今はその面影もない寒村に住む老漁師忠男とその孫娘春。春は小学校の給食係をしていたが廃校で失職、東京に働きに出よう
と考える。足が不自由で老いた祖父をどうしたらいいか。永年疎遠になっていた忠男の姉兄弟たち三人を尋ねる旅に出る。しかし再会しても解決がつかない。そ
のうち春は長く離別していた父親に会いたくなる。ラストにちかく、忠男と春がソバやで会話するシーンでは私は涙した。
急速に日本の老齢化が進む。75歳以上の後期高齢者はこれから20年で倍増し2000万人。長寿化も進みそのころには男性90、女性100が普通だろ
う。としたら65歳を基点としてそれぞれ25年、35年という途方もなく永い、永い老後になる。その期間、財産の食いつぶし。これは保険会社にとって大き
なリスクになる。年金も同じだ。この問題はじつは日本の財政破綻と直結しているので、大いに私は注目している。
なぜかを説明する前にまず海外の例を。ニッセイ基礎研REPORT5月号で青山麻理さんが、保険先進国の英国での最近の動きをまとめている。
英国では、進行する長寿化のため年金や保険業の支払う負担の増大が懸念されている
。対策として再保険、長寿債発行、長寿スワップ、年金買収等々、紙数の関係で一つ一つ解説できないが、その中では長寿スワップが注目されている。これはプレミアムを受け取れる買い手が、年金や保険会社に代わって生存者に対し給付を払うシステム。
とくに90歳以上の人たちへは、政府の長寿債発行によるリスクヘッジが論議されている。
実例を挙げてなぜかを説明しよう。日本の終身年金を例にとる。65歳の男性が年80万円づつ保険料をもらうには、保険会社は一時払いで1350万円の保
険料を取る。17年以上長生きされると保険会社は赤字になってしまう。これが長寿リスクである。保険会社が運用でよほど巧みに利益を挙げないと大変だ。英
国のように政府が何らかの策を考えないとかならず問題が起きる。これが国債の重要な買い手が売り手に転じるカギだ。参院選でこれが政策に入るか、どうか、
私は注目している。
長期の問題は措いて目先の不安について一言。まず北朝鮮だが、突発的開戦のリスクはないではないが、万博開催期間は中国がメンツからも押さえ込む。準備
にタマと時間がかかる長距離ミサイルは上空から見ればすぐ分かる。心配する必要なし。ウワサでは金成日亡命説も。
ユーロ売りはヘッジファンドの目標値1ドル1ユーロを、もう方々で言い出したので、先は見えた。騒ぎは大きいが米FRBとECBのスワップ協定が再締結されたことは安定化に役立つ。
日本株と円高。株価は年初来で世界株を相対的にアウトパフォームし、株価収益率、株価資産比率など株価水準指標を見ると割安ゾーン。円高は通貨市場での
円売り買戻しが一巡したので再び円安への流れ。リーマンショックのときは株価底入れに5ヶ月かかったが、あれを震度6とすると今回はせいぜい3.私は弱気
じゃない。
映画のセリフから。春が父親に聞く。「過ちって償えないものなの?」リーマンの経験が今回のユーロ騒ぎのキズを軽くする。なんといってもどこの国も企業収益が急増中だ。世界大不況説を私は信じない。